Creation World Online
第13話
「ごめんなさい…」
「ああ、大丈夫だ。それでどうして泣いたんだ?」
しばらくするとアンリは泣き止んで俺に謝罪をしてくる。なので俺は泣いた理由を尋ねると、アンリはまた泣きそうな顔で言う。
「私のせいでシュウ君の手が汚れるのが辛くて…本当なら私がやらなきゃいけないのに…!」
「あー、そういうことか」
俺の手が汚れてしまうのが申し訳なくて泣いたのか…まあ、今更って感じだけどな。
俺はアンリが怖がったりしないようにニコリと優しく笑って言う。
「大丈夫だぞ、アンリがわざわざ手を汚すことはない。汚れたことはもうすでに手が汚れている俺がやるべきことだ」
「でも…!」
俺が優しく言ってもアンリが納得した様子はない。
どうしたものか…俺は人の心を操るのは苦手だぞ。
俺がどうやって丸めこもうかと悩んでいるとキョウジからフレンドコールがかかってくる。
「なんだ、どうした?」
『あー、今キョウラクとシラクモの嬢ちゃんの戦いが始まりそうなんだがどうする?見に来るか?』
おお、シラクモとリンネの戦いは割とすぐに終わってしまったんだな。
隣のアンリを見るとコクンと頷いていたので行くことにする。
「ああ、見に行くから席の確保よろしく。何か欲しいものがあれば買ってくるが」
『マジで?じゃ、タコス頼むわ』
「はいよ」
そう言ってフレンドコールは切れる。
俺は隣で未だにグスグスとやっているアンリに言う。
「タコス買いに行くけど何かいる?」
「…オレンジジューチュ」
あ、噛んだ。
噛んだ張本人であるアンリは恥ずかしそうに帽子を目深にかぶる。
そんなアンリを見て俺は少し意地悪をしたい気持ちになってしまう。
「オレンジジューチュか〜、俺も幼稚園の頃まではそう言ってたな。オレンジジューチュって」
「うるさいですね!噛んだんですよ!」
むきーと怒るアンリの頭を抑えて俺は爆笑する。
いつの間にか2人の間にあった重たい空気はなくなっていた。
☆
「おう、シュウと嬢ちゃん席は取っといたぜ」
「ああ、キョウジありがとな。それとこれな」
「お、サンキュー」
席のお礼にタコスをキョウジに手渡すとチリソースをつけてキョウジはかぶりついた。
そんなキョウジの様子をアンリは悔しそうに眺める。
「なあ、嬢ちゃんどうしたんだ?」
「あー、こいつチリソース食えないから悔しがってんだろ」
「食べられますよ!子供扱いしないでください!」
おお、意外だな。それなら試してみるか。
アンリの前に俺用に買っておいたタコスを差し出すとアンリは怪訝(けげん)な表情を浮かべる。
「なんですかいきなり」
「食べられるなら食べてみろよ」
「嫌です」
「あれあれぇ〜?食べられないのかなぁ〜?」
「…いいでしょう、食べてやりますよ!」
ニヤニヤと挑発してやるとアンリはイラッとしたのかそう言ってタコスを頬張る。あれ?食べられたのか。
俺がアンリがチリソースを食べられたということにびっくりしているとアンリがこちらにタコスを差し出して言う。
「ほ、ほらどうでひゅか?たべてやりましたよ…!」
「涙目で口押さえて言うなよ。本当は無理したんだろ」
「し、してません」
「美味しくなかったんだろ?」
「美味しかったですし!」
「へー、そうか。それなら残りも食べていいぞ」
「ごめんなさい嘘です!やめてください!」
土下座でもしそうな勢いでアンリが謝罪する。なかなか面白いな。
俺がアンリをおちょくろうとしたところで試合が始まる。
☆
ステージの上には爽やかな笑顔を浮かべた1人の青年とイライラした様子の1人の少女が立っていた。
少女はイラつきを隠す事もなく不機嫌そうに言う。
「アンタが相手なんでしょ?早く始めるわよ」
「せっかちなお嬢さんですね。そんなに慌てるのは良くないですよ?」
「うるさい!お嬢さんって言うな!」
「おお、怖いですね」
怒る少女に対してまったく怖そうな顔もせずに白々しく対応する青年に少女のイライラは溜まっていくのだった。
すると両者の準備が整った事を確認した審判が試合開始の合図を出した瞬間に少女__シラクモはスキル【龍皇化】を使用する。
可愛らしかったシラクモの姿はみるみる巨大な龍の姿へと変貌(へんぼう)する。
そんなシラクモに対する青年__キョウラクは爽やかな笑顔を崩さずに幾つかの光魔法を短い詠唱で展開する。
すると彼の身体を包むように光のオーラが現れ、さらに周囲に幾数本の光の槍が形成される。
キョウラクが手を振り下ろすと光の槍は全弾シラクモに向かって飛んでいき命中すると爆発が起こる。
観客から喜びの声や悲鳴のような声が聞こえる。
しかし次の瞬間爆煙を貫いて紅い熱線がキョウラクに向かって飛んでくる。
キョウラクはそれを横に飛んでかわすと、追撃とばかりに飛んできた雷の球を剣で切り裂く。
爆煙が晴れるとそこには無傷で口から熱を放出し、幾つもの雷の球を空中に広げたシラクモの姿があった。
シラクモが吠えるとキョウラクに【恐怖(フィア)】の状態異常がかかり、キョウラクの身体が数秒止まる。
普通のプレイヤーなら数秒止めたところでキョウラクに大したダメージを与えることはできなかっただろうが、シラクモにとっては十分な時間であった。
無抵抗のキョウラクの胸を紅い熱線が貫き、胸に空いた穴に雷の球が全てぶつかり爆ぜる。
そして煙が晴れた時そこにはライフを規定値以下に減らし倒れこむキョウラクの姿があった。
『試合終了!!勝者シラクモ!!』
うおおお!と会場中の人間が立ち上がり二人の健闘を称える。
シラクモはスキルを解除し、キョウラクにポーションを投げつけると手を差し出す。
キョウラクがその手を借りて身体を起こすと2人は固く握手をする。
観客はそんな2人を称えるように拍手をする。そんな2人が観客に向かって手を振ると観客はさらにヒートアップする。
そして、観客の熱が引くのを待って審判が宣言する。
『さて、皆さん。熱くなってるところ申し訳有りませんが決勝戦は明日開催となっておりますのでどうぞよろしくお願いします』
そんな審判の言葉に観客たちは不満があるようでぶーぶーと言っていたが少しずつ解散していく。
明日か…うーん、どうしたものか。時間が余ってんぞ。
俺が悩んでいると通知が飛んでくる。通知を開くと武器屋からだった。
頼んでいたものが出来上がったとのことだった。
受け取りのために立ち上がるとアンリとキョウジがそれに気づいたようで俺に尋ねてくる。
「どうしたんですか?」
「ほら、この間頼んでたやつが出来上がったらしいから取りに行くけどついてくるか?」
「お、なんか面白そうだな。行こうぜ」
そして俺たち3人は仲良く武器屋へ向かうのだった。          
「ああ、大丈夫だ。それでどうして泣いたんだ?」
しばらくするとアンリは泣き止んで俺に謝罪をしてくる。なので俺は泣いた理由を尋ねると、アンリはまた泣きそうな顔で言う。
「私のせいでシュウ君の手が汚れるのが辛くて…本当なら私がやらなきゃいけないのに…!」
「あー、そういうことか」
俺の手が汚れてしまうのが申し訳なくて泣いたのか…まあ、今更って感じだけどな。
俺はアンリが怖がったりしないようにニコリと優しく笑って言う。
「大丈夫だぞ、アンリがわざわざ手を汚すことはない。汚れたことはもうすでに手が汚れている俺がやるべきことだ」
「でも…!」
俺が優しく言ってもアンリが納得した様子はない。
どうしたものか…俺は人の心を操るのは苦手だぞ。
俺がどうやって丸めこもうかと悩んでいるとキョウジからフレンドコールがかかってくる。
「なんだ、どうした?」
『あー、今キョウラクとシラクモの嬢ちゃんの戦いが始まりそうなんだがどうする?見に来るか?』
おお、シラクモとリンネの戦いは割とすぐに終わってしまったんだな。
隣のアンリを見るとコクンと頷いていたので行くことにする。
「ああ、見に行くから席の確保よろしく。何か欲しいものがあれば買ってくるが」
『マジで?じゃ、タコス頼むわ』
「はいよ」
そう言ってフレンドコールは切れる。
俺は隣で未だにグスグスとやっているアンリに言う。
「タコス買いに行くけど何かいる?」
「…オレンジジューチュ」
あ、噛んだ。
噛んだ張本人であるアンリは恥ずかしそうに帽子を目深にかぶる。
そんなアンリを見て俺は少し意地悪をしたい気持ちになってしまう。
「オレンジジューチュか〜、俺も幼稚園の頃まではそう言ってたな。オレンジジューチュって」
「うるさいですね!噛んだんですよ!」
むきーと怒るアンリの頭を抑えて俺は爆笑する。
いつの間にか2人の間にあった重たい空気はなくなっていた。
☆
「おう、シュウと嬢ちゃん席は取っといたぜ」
「ああ、キョウジありがとな。それとこれな」
「お、サンキュー」
席のお礼にタコスをキョウジに手渡すとチリソースをつけてキョウジはかぶりついた。
そんなキョウジの様子をアンリは悔しそうに眺める。
「なあ、嬢ちゃんどうしたんだ?」
「あー、こいつチリソース食えないから悔しがってんだろ」
「食べられますよ!子供扱いしないでください!」
おお、意外だな。それなら試してみるか。
アンリの前に俺用に買っておいたタコスを差し出すとアンリは怪訝(けげん)な表情を浮かべる。
「なんですかいきなり」
「食べられるなら食べてみろよ」
「嫌です」
「あれあれぇ〜?食べられないのかなぁ〜?」
「…いいでしょう、食べてやりますよ!」
ニヤニヤと挑発してやるとアンリはイラッとしたのかそう言ってタコスを頬張る。あれ?食べられたのか。
俺がアンリがチリソースを食べられたということにびっくりしているとアンリがこちらにタコスを差し出して言う。
「ほ、ほらどうでひゅか?たべてやりましたよ…!」
「涙目で口押さえて言うなよ。本当は無理したんだろ」
「し、してません」
「美味しくなかったんだろ?」
「美味しかったですし!」
「へー、そうか。それなら残りも食べていいぞ」
「ごめんなさい嘘です!やめてください!」
土下座でもしそうな勢いでアンリが謝罪する。なかなか面白いな。
俺がアンリをおちょくろうとしたところで試合が始まる。
☆
ステージの上には爽やかな笑顔を浮かべた1人の青年とイライラした様子の1人の少女が立っていた。
少女はイラつきを隠す事もなく不機嫌そうに言う。
「アンタが相手なんでしょ?早く始めるわよ」
「せっかちなお嬢さんですね。そんなに慌てるのは良くないですよ?」
「うるさい!お嬢さんって言うな!」
「おお、怖いですね」
怒る少女に対してまったく怖そうな顔もせずに白々しく対応する青年に少女のイライラは溜まっていくのだった。
すると両者の準備が整った事を確認した審判が試合開始の合図を出した瞬間に少女__シラクモはスキル【龍皇化】を使用する。
可愛らしかったシラクモの姿はみるみる巨大な龍の姿へと変貌(へんぼう)する。
そんなシラクモに対する青年__キョウラクは爽やかな笑顔を崩さずに幾つかの光魔法を短い詠唱で展開する。
すると彼の身体を包むように光のオーラが現れ、さらに周囲に幾数本の光の槍が形成される。
キョウラクが手を振り下ろすと光の槍は全弾シラクモに向かって飛んでいき命中すると爆発が起こる。
観客から喜びの声や悲鳴のような声が聞こえる。
しかし次の瞬間爆煙を貫いて紅い熱線がキョウラクに向かって飛んでくる。
キョウラクはそれを横に飛んでかわすと、追撃とばかりに飛んできた雷の球を剣で切り裂く。
爆煙が晴れるとそこには無傷で口から熱を放出し、幾つもの雷の球を空中に広げたシラクモの姿があった。
シラクモが吠えるとキョウラクに【恐怖(フィア)】の状態異常がかかり、キョウラクの身体が数秒止まる。
普通のプレイヤーなら数秒止めたところでキョウラクに大したダメージを与えることはできなかっただろうが、シラクモにとっては十分な時間であった。
無抵抗のキョウラクの胸を紅い熱線が貫き、胸に空いた穴に雷の球が全てぶつかり爆ぜる。
そして煙が晴れた時そこにはライフを規定値以下に減らし倒れこむキョウラクの姿があった。
『試合終了!!勝者シラクモ!!』
うおおお!と会場中の人間が立ち上がり二人の健闘を称える。
シラクモはスキルを解除し、キョウラクにポーションを投げつけると手を差し出す。
キョウラクがその手を借りて身体を起こすと2人は固く握手をする。
観客はそんな2人を称えるように拍手をする。そんな2人が観客に向かって手を振ると観客はさらにヒートアップする。
そして、観客の熱が引くのを待って審判が宣言する。
『さて、皆さん。熱くなってるところ申し訳有りませんが決勝戦は明日開催となっておりますのでどうぞよろしくお願いします』
そんな審判の言葉に観客たちは不満があるようでぶーぶーと言っていたが少しずつ解散していく。
明日か…うーん、どうしたものか。時間が余ってんぞ。
俺が悩んでいると通知が飛んでくる。通知を開くと武器屋からだった。
頼んでいたものが出来上がったとのことだった。
受け取りのために立ち上がるとアンリとキョウジがそれに気づいたようで俺に尋ねてくる。
「どうしたんですか?」
「ほら、この間頼んでたやつが出来上がったらしいから取りに行くけどついてくるか?」
「お、なんか面白そうだな。行こうぜ」
そして俺たち3人は仲良く武器屋へ向かうのだった。          
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