TSカリスマライフ! ―カリスマスキルを貰ったので、新しい私は好きに生きることにする。―

夕月かなで

夏のお祭り、ヨーヨー釣り

 商店街から五分ほど歩くと、大きな河川敷が目立つ一級河川に出ます。
 もうすぐ夏も終わりですが今日はこの河川敷にて夏祭りが行われるので、皆で浴衣を着て遊びに行くことになりました。

「メグちゃん、帯結んであげるね」
「ありがとうお姉ちゃん!」

 メグちゃんの白を基調としつつも青い花が描かれている浴衣を整えて、白く短めな髪はお母さんによって可愛くセットされています。
 私は腰くらいまで伸ばしているのですが、今日は人の多い所に行くということでポニーテールに纏めてもらいました。

 メグちゃんとお父さん、お母さんに百枚くらい写真を撮られましたが、三人で撮る必要はあったの?

「よし、それじゃあ出発だ!」
「おー!」

 今日の予定は商店街で皆と合流、河川敷の屋台を回ってから商店街の皆さんが集まる穴場で花火観賞です。
 商店街の皆さん、特にめぐるさんが誘ってくれたのと、人混みで皆が迷子になったりすると危ないのでお邪魔することになっています。

「ねぇねとメグちゃん、こんにちはー!」
「花ちゃんこんにちは」
「こんにちは!」

 花ちゃんはいつも通りに黒い髪をツインテールにして、オレンジと赤を織り交ぜた浴衣が元気な性格にマッチしています。
 家の前で花ちゃん一家と合流して、商店街へ。

「おっ来た。皆こっちやで~!」
「こんにちは、千佳ちゃん。それにメグちゃんと花ちゃんも」
「……千佳遅い」
「ごめんなさい千佳先輩。姉さん楽しみだったみたいで、朝からずっとそわそわしてたんです」
「こんにちはー、皆可愛いねー」

 商店街の入り口で既に集合していた湖月ちゃん、愛ちゃん、祭りに行く気合が目に見える莉里ちゃんとそれを宥める桃ちゃん、そしていつも通りおっとりしているリンファ先輩と合流します。

 湖月ちゃんは茶色な髪を編み上げて、髪色に合わせたシックな浴衣が大人な雰囲気を作り上げています。
 テンションが高く、身振り手振りも大きい湖月ちゃんですが、今日は一段と大人しく見えて不思議です。

 愛ちゃんはいつも外側に跳ねている黒髪を押さえつけ、ストレートにしてこちらも大人な雰囲気に。
 水色に白い魚が泳いでいるデザインの浴衣がピッタリです。

 莉里ちゃんはいつも通りに青い髪をおかっぱにしていますが私には分かります。
 あれは数センチ短くしていると。
 そして気合が入っている、紫に様々な花が乗った浴衣の袖を捲り、紐で括って落ちないようにしています。
 仲居さんか何かかな?

 桃ちゃんは青い髪を頭の上に編み上げて丸めた、所謂お団子ヘアというものです。
 そして莉里ちゃんとお揃いらしい紫の浴衣は、真面目な桃ちゃんに色気を足して可愛いというよりは美人な雰囲気になっています。

 最後にリンファ先輩は普段紫の髪を編み込んで後頭部でお団子にしているのですが、今日は下ろしていていつも以上にぽわぽわとした見た目になっています。
 ピンクの浴衣が可愛らしさを演出して、年上なのに幼さが見えます。

「うむ、皆可愛いね!」
「なんやジロジロ見て、感想それだけかいな?」
「めっちゃ可愛いよ!」
「あはは、全然変わってないよ千佳ちゃん」

 私が褒めると皆顔を赤くして照れてくれます。
 あぁ、お持ち帰りしたい……。



 そうして涎を飲み込みながら、私たちはお祭りの会場である河川敷にやってきました。
 合計六つの家族が固まって動くと、かなりの大所帯ですが子供だけで動くのも危ないので仕方ありません。
 人混みに紛れるように進み、様々な屋台を眺めます。

「メグちゃん、何かやりたいことはある?」
「うーん、お姉ちゃんは?」
「それじゃあヨーヨー釣りとかやろっか」
「賛成!」
「花もやるー!」
「私もやりたいよー。千佳ちゃん、教えてねー」

 皆でやることになりましたが人数が多いので、半分に分けてやることに。
 まずは私とメグちゃん、花ちゃんとリンファ先輩です。

「よっと、一個目ゲット!」
「お姉ちゃんすごい! 私も頑張る!」
「あっ、花の釣竿切れちゃったよぉ……」

 一つも取れずに終わってしまった花ちゃんがべそをかきそうなので、私の釣竿を渡してあげます。

「私はもう取れたから、花ちゃんが使っていいよ」
「わぁ! ねぇねありがとー!」

 その笑顔があればお釣りがくるくらいさ!
 打って変わって笑顔になった花ちゃんは無事に一つのヨーヨーを獲得して、私はリンファ先輩にコツを教えていきます。

「ちょっと短めに持って、はいそうですね。あんまり紙を濡らさないように取れるやつを狙った方がいいですよ」
「なるほどー、千佳ちゃんは物知りだねー」
「それほどでも!」

 と言いつつもドヤ顔になっちゃう私。

「おー、取れたよー」

 無事にリンファ先輩も一つ獲得して終了、最後にメグちゃんですが……。

「お姉ちゃん、何個取ればいいのかな?」
「えっと、とりあえず一個以外は返してあげて……。店主さん泣きそうだから」

 既に五個も取っている鬼才なメグちゃんから四つを返還して、店主のおじさんはホッとした顔になりました。
 さて、前半組が終わったから交代だ。

「あの、先輩。私も教えてもらっていいですか?」
「……私も」
「せやったらうちも」
「あ、だったら愛も」

 というわけで、皆にヨーヨー釣りを教えました。
 いや、教えることなんてあるのかとも思うけど。
 無事に全員一つずつヨーヨーをゲットして、皆手にぶら下げて次の屋台へと向かいます。

 ……だからそこの大人達、横の屋台で必死に型抜きしてるんじゃないよ。

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