TSカリスマライフ! ―カリスマスキルを貰ったので、新しい私は好きに生きることにする。―

夕月かなで

二人で図書館に行くとこうなる3

【ケース6 無口で大胆な先輩、三枝莉里の場合】

「……千佳」
「はい、莉里ちゃん」
「……この本戻して」
「おっけー」
「……千佳」
「はいはい、莉里ちゃん」
「……あの黒い本取って」
「えっと、これ?」
「……それ」
「はいはい、どうぞ」
「……ありがと」

 現在、莉里ちゃんの本探しを手伝っています。
 身長の低い莉里ちゃんの代わりに高い位置の本を取るだけの、簡単なお仕事です。
 あ、もう一つ仕事はありました。

「……千佳、ここ」
「じゃあ座るね、よいしょっと」
「……お父さんみたい」
「まだピッチピチの小学三年生だよ!」
「……んしょっ」

 もう一つのお仕事は、莉里ちゃんの椅子になることです。
 図書館にソファに座った私の膝の上に、莉里ちゃんは座って本を読みます。
 以前花ちゃんにもしたけど、身長が小さい莉里ちゃんともよくする体勢です。
 しかし私も身体ができあがっていないお年頃なので、長時間は苦痛だね。
 ビリビリしちゃうよ。

「……」
「……」

 ――十分後。

「……」
「むぅ……」

 ――更に二十分後。

「……」
「うっ、くぅ、あ、あの莉里ちゃん、そろそろ」

 私がギブアップの宣言をしようと莉里ちゃんの肩を叩くと。

「……?」

 見上げるように私の方を見て、首を傾げる莉里ちゃん。
 くぅ可愛いぃっ!
 そんな顔見ちゃったらお姉ちゃん、我慢したくなっちゃう!

「い、いや、なんでもないよ」
「……そっか」

 そう言って読書に戻る莉里ちゃん。
 私の戦いは、まだ始まったばかりでした。



【ケース7 母性なお姉ちゃん、物部リンファの場合】

「わー、ここが図書館なんだねー」
「リンファ先輩は初めてですか?」
「うんー。普段はあまり本を読まないからー」
「そうなんですか、意外ですね」
「そうかなー?」

 というわけで、リンファ先輩の街案内も兼ねて図書館へとやってきました。
 特に借りる予定はないというリンファ先輩ですが、学校の学習なんかで借りることもあると思うので、図書カードを作っておくことにします。

「ここの司書さんは優しいお姉さんなので、話しかけやすいですよ!」
「そうなんだー、私もこれからはお本読んでみようかなー?」
「なんだったらオススメの本も紹介しますよ」
「わー。千佳ちゃん大好きー」
「だ、抱きつかないでくだ……ふにゃぁ」

 あぁ、駄目だ。
 リンファ先輩に包まれると、心が安らかにぃ……。



 こんにちは。
 私、この図書館で司書をしている本庄ほんじょうみさきと申します。
 突然ですが、私へのご褒美のような景色が目の前で形成されているのです。
 くぅっ、写真に取りたいけど、図書館ではカメラ撮影は禁止。
 司書として図書館のルールが憎らしいぃ!

 ……こほん。
 詳しく説明いたしますと、よく色んなお友達や妹さんと図書館に来られる諸弓千佳さんという小学生の女の子が、今日も図書館へとやって来ているのです。
 そして初めてみる顔の女の子に、抱きしめられてまるで天国にいるかのような蕩けた笑顔に……。

 むっ!
 閃きました、メモしておきましょう。
 趣味の小説書きのアイデアの一つとしていただきです!
 学年の違うお姉さんに抱きしめられて、その幸せを噛み締める後輩の女の子。
 いける、いけます!
 今日もいい小説が書けそうですよ!



「リンファしぇんぱいぃ」
「はいはい千佳ちゃん、なんですかー?」
「わらしのお姉ちゃんにぃ……はっ!?」
「お姉ちゃんですかー?」
「い、いえ、なんでもありません!」

 危なかった、陥落するところだった。
 ふぅ、どうにかお姉ちゃんの尊厳は守られたかな。

「うふふー、千佳ちゃんかわいー」

 ……り、リンファ先輩には負けませんからね!

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