TSカリスマライフ! ―カリスマスキルを貰ったので、新しい私は好きに生きることにする。―
年越しと感謝の祈り
今年もまた年越しがやってきました。
暖かい炬燵にうつ伏せになったまま、首から下を潜り込ませ肘を立てて、お父さんが買ってきた週刊の漫画雑誌を読みます。
既に今世の精神に引っ張られている私ですが、熱い冒険譚やアクション系が好きなのは前世の残り粕かもしれません。
「うぅ、お姉ちゃん?」
「ん? メグちゃん起きたんだね」
隣りで同じように、炬燵に首元まで潜り込んで寝ていたメグちゃんが起きたようです。
本当ならもうすぐ起こそうかと思っていましたが、自然と起きてくれたみたい。
逆サイドに寝ている花ちゃんは起こさないといけませんが。
「おはよーお姉ちゃん」
「そろそろ十二時だし、初詣行く?」
「そうねぇ、準備して行きましょうか」
今現在家にいるのは私たち家族と花ちゃん一家。
お父さんと花ちゃんパパはお酒とおつまみを楽しみながら娘自慢を語らい、お母さんと花ちゃんママは私たちの横、つまりメグちゃんの隣りにお母さん、花ちゃんの隣りに花ちゃんママと陣取ってテレビを見ながら談笑していました。
出発の知らせを聞いて、花ちゃんを起こします。
「花ちゃん、起きて」
「うぅん……」
「起きないとこちょこちょしちゃうよ?」
「……」
私がこちょこちょすると聞いて、花ちゃんの耳はぴくぴくと動きました。
あ、これは起きてるな。
こちょこちょとは、脇やお腹を擽って笑いの地獄へと導くことなのですが、私とじゃれ合うのが好きな妹たちにとっては罰ではなくご褒美なようです。
「ずるい! 私もこちょこちょしてもらいたい!」
「ま、また後でね」
詰め寄ってくるメグちゃんが抱きついてきますが、まず花ちゃんです。
こちょこちょがご褒美なら、これならどうだ。
「早く起きないと、置いて行っちゃうよ?」
「起きました!」
早っ!?
「でも花もこちょこちょをきぼーします!」
「あ、うん。また後でね」
「えへへ、やったねメグちゃん!」
「うん! やったね花ちゃん!」
後でぜーぜー言うくらいにまでこちょこちょしてやるぞ!
止めてって言っても止めてあげないからね!
涙目で止めてって言われた日には、もう襲っちゃうからね!
「ほら、千佳と恵も着替えてきて」
「花は一緒に家に戻って着替えましょうね」
お母さんと花ちゃんママの言葉に、名残惜しみつつも炬燵から這い出て、メグちゃんと共にお部屋へ向かいます。
花ちゃんは別れる寸前まで、こちょこちょのお願いを忘れないようにと言いつけました。
心配しなさんな!
年越しにやってるなんちゃら荘以上に笑わせてあげるよ!
「うーさむっ」
「うーさむっ!」
ストーブで暖められたリビングから廊下に出ると、その気温差に身体が震えてしまいます。
私の真似をしたメグちゃんを見ると、ふにゃりと笑って抱きついてきました。
メグちゃん懐炉です、あったか。
「ちゃちゃっと着替えに行こっか?」
「そうだね、お姉ちゃん!」
「あけお、ってまだ年は越してないか~」
「千佳ちゃん、メグちゃん、花ちゃん。こんばんは」
「こんばんは!」
「ばんは!」
「湖月ちゃんに愛ちゃんも早いね。私は既に炬燵が恋しいよ」
近くの神社へ行くと、そこは青年団のお兄さんたちが焚き火をしており、商工会か何かの代表さんであるおじさんが拡声器を持って何やら言っています。
甘酒用意してますよとか、年越しまで後五分ですよとか。
「後は莉里ちゃんと桃ちゃんだね、皆揃ったら初詣の列に並ぶってことで」
「了解や! それにしても皆、今年は眠そうやないな~?」
「あ、愛は寝ないよ!」
「去年は寝てたよね。眠そうな愛ちゃん可愛かったなぁ」
「か、可愛い!?」
顔を真っ赤にして湖月ちゃんの背中に隠れる愛ちゃん。
くっ、カメラはお父さんに託したままか!
何処だお父さんは、って既に甘酒パーティーしてる!?
「私はさっきまで寝てたから大丈夫なのです!」
「花も!」
「二人は初めてだね、起きたまま年越しするの」
「去年のリベンジだもん!」
「もん!」
湖月ちゃんと一緒に年越しをしたことを聞いた二人と、愛ちゃんは大層悔しがっていました。
なので今年の年越しに懸ける思いは特段強いのでしょう。
「今年こそは愛も一緒に言うからね」
「二人増えたし、更に年越しが楽しみやな!」
「……参上」
「うわっ!? びっくりしたわ!」
「……どっきりだいせいこー」
「あはは、こんばんは莉里ちゃん。桃ちゃんも」
「こんばんはです愛先輩。それに千佳先輩と湖月先輩も」
「ばんわやで!」
「うん、こんばんは。桃ちゃんは眠くない?」
「はい、大丈夫です」
「桃ー!」
「もも!」
「うわっ、いきなり飛びつかないでください! 危ないといつも言ってるでしょう!」
「ごめん桃ー!」
「ごめもも!」
「そこっ、略さない!」
皆が揃って、初詣の列に並んでも談笑は続きます。
莉里ちゃんと桃ちゃんが来たことで、去年よりももっと盛り上がった一年でした。
この二人ともお友達になれて、本当に良かった。
「……千佳、もうすぐ時間」
「あ、本当だ。皆、そろそろカウントダウンだよ」
「よっしゃ、声合わせるで!」
「うん、愛も頑張る!」
「私も頑張る!」
「花も!」
「カウントダウンに頑張るとかあるんでしょうか?」
「……気にしたら負け」
「よーし行くよー! 十!」
私の合図に反応して、皆で声を上げます。
「九!」
皆で手を繋いで、輪になって。
「八!」
目が合えば微笑み返してくれる。
「七!」
莉里ちゃんは声は大きくなくても、楽しそうな笑顔を見せて。
「六!」
桃ちゃんは真面目さんだからか、恥ずかしそうに声を出して。
そんな彼女をメグちゃんと花ちゃんが元気一杯に引っ張ってあげて。
「五!」
湖月ちゃんと愛ちゃんは指を立てて、一つ一つカウントと一緒に折りながら声を出す。
「四!」
可愛い女の子たち、優しい家族たち。
「三!」
皆と共に過ごす毎日が、とても楽しい。
「二!」
私は幸せだよ、神様。
「一!」
きっとここなら、神様にも私の声が届くかな。
「ハッピーニューイヤー!!!!」
ありがとう、神様。私はとても幸せです。
「皆、あけましておめでとう!」
「……おめでとう、千佳」
「おめでとうや、千佳ちゃん!」
「おめでとう千佳ちゃん」
「お姉ちゃん、あけおめ!」
「ねぇねおめ!」
「千佳先輩、あけましておめでとうございます」
そうして私たちの一年が、また始まる。
暖かい炬燵にうつ伏せになったまま、首から下を潜り込ませ肘を立てて、お父さんが買ってきた週刊の漫画雑誌を読みます。
既に今世の精神に引っ張られている私ですが、熱い冒険譚やアクション系が好きなのは前世の残り粕かもしれません。
「うぅ、お姉ちゃん?」
「ん? メグちゃん起きたんだね」
隣りで同じように、炬燵に首元まで潜り込んで寝ていたメグちゃんが起きたようです。
本当ならもうすぐ起こそうかと思っていましたが、自然と起きてくれたみたい。
逆サイドに寝ている花ちゃんは起こさないといけませんが。
「おはよーお姉ちゃん」
「そろそろ十二時だし、初詣行く?」
「そうねぇ、準備して行きましょうか」
今現在家にいるのは私たち家族と花ちゃん一家。
お父さんと花ちゃんパパはお酒とおつまみを楽しみながら娘自慢を語らい、お母さんと花ちゃんママは私たちの横、つまりメグちゃんの隣りにお母さん、花ちゃんの隣りに花ちゃんママと陣取ってテレビを見ながら談笑していました。
出発の知らせを聞いて、花ちゃんを起こします。
「花ちゃん、起きて」
「うぅん……」
「起きないとこちょこちょしちゃうよ?」
「……」
私がこちょこちょすると聞いて、花ちゃんの耳はぴくぴくと動きました。
あ、これは起きてるな。
こちょこちょとは、脇やお腹を擽って笑いの地獄へと導くことなのですが、私とじゃれ合うのが好きな妹たちにとっては罰ではなくご褒美なようです。
「ずるい! 私もこちょこちょしてもらいたい!」
「ま、また後でね」
詰め寄ってくるメグちゃんが抱きついてきますが、まず花ちゃんです。
こちょこちょがご褒美なら、これならどうだ。
「早く起きないと、置いて行っちゃうよ?」
「起きました!」
早っ!?
「でも花もこちょこちょをきぼーします!」
「あ、うん。また後でね」
「えへへ、やったねメグちゃん!」
「うん! やったね花ちゃん!」
後でぜーぜー言うくらいにまでこちょこちょしてやるぞ!
止めてって言っても止めてあげないからね!
涙目で止めてって言われた日には、もう襲っちゃうからね!
「ほら、千佳と恵も着替えてきて」
「花は一緒に家に戻って着替えましょうね」
お母さんと花ちゃんママの言葉に、名残惜しみつつも炬燵から這い出て、メグちゃんと共にお部屋へ向かいます。
花ちゃんは別れる寸前まで、こちょこちょのお願いを忘れないようにと言いつけました。
心配しなさんな!
年越しにやってるなんちゃら荘以上に笑わせてあげるよ!
「うーさむっ」
「うーさむっ!」
ストーブで暖められたリビングから廊下に出ると、その気温差に身体が震えてしまいます。
私の真似をしたメグちゃんを見ると、ふにゃりと笑って抱きついてきました。
メグちゃん懐炉です、あったか。
「ちゃちゃっと着替えに行こっか?」
「そうだね、お姉ちゃん!」
「あけお、ってまだ年は越してないか~」
「千佳ちゃん、メグちゃん、花ちゃん。こんばんは」
「こんばんは!」
「ばんは!」
「湖月ちゃんに愛ちゃんも早いね。私は既に炬燵が恋しいよ」
近くの神社へ行くと、そこは青年団のお兄さんたちが焚き火をしており、商工会か何かの代表さんであるおじさんが拡声器を持って何やら言っています。
甘酒用意してますよとか、年越しまで後五分ですよとか。
「後は莉里ちゃんと桃ちゃんだね、皆揃ったら初詣の列に並ぶってことで」
「了解や! それにしても皆、今年は眠そうやないな~?」
「あ、愛は寝ないよ!」
「去年は寝てたよね。眠そうな愛ちゃん可愛かったなぁ」
「か、可愛い!?」
顔を真っ赤にして湖月ちゃんの背中に隠れる愛ちゃん。
くっ、カメラはお父さんに託したままか!
何処だお父さんは、って既に甘酒パーティーしてる!?
「私はさっきまで寝てたから大丈夫なのです!」
「花も!」
「二人は初めてだね、起きたまま年越しするの」
「去年のリベンジだもん!」
「もん!」
湖月ちゃんと一緒に年越しをしたことを聞いた二人と、愛ちゃんは大層悔しがっていました。
なので今年の年越しに懸ける思いは特段強いのでしょう。
「今年こそは愛も一緒に言うからね」
「二人増えたし、更に年越しが楽しみやな!」
「……参上」
「うわっ!? びっくりしたわ!」
「……どっきりだいせいこー」
「あはは、こんばんは莉里ちゃん。桃ちゃんも」
「こんばんはです愛先輩。それに千佳先輩と湖月先輩も」
「ばんわやで!」
「うん、こんばんは。桃ちゃんは眠くない?」
「はい、大丈夫です」
「桃ー!」
「もも!」
「うわっ、いきなり飛びつかないでください! 危ないといつも言ってるでしょう!」
「ごめん桃ー!」
「ごめもも!」
「そこっ、略さない!」
皆が揃って、初詣の列に並んでも談笑は続きます。
莉里ちゃんと桃ちゃんが来たことで、去年よりももっと盛り上がった一年でした。
この二人ともお友達になれて、本当に良かった。
「……千佳、もうすぐ時間」
「あ、本当だ。皆、そろそろカウントダウンだよ」
「よっしゃ、声合わせるで!」
「うん、愛も頑張る!」
「私も頑張る!」
「花も!」
「カウントダウンに頑張るとかあるんでしょうか?」
「……気にしたら負け」
「よーし行くよー! 十!」
私の合図に反応して、皆で声を上げます。
「九!」
皆で手を繋いで、輪になって。
「八!」
目が合えば微笑み返してくれる。
「七!」
莉里ちゃんは声は大きくなくても、楽しそうな笑顔を見せて。
「六!」
桃ちゃんは真面目さんだからか、恥ずかしそうに声を出して。
そんな彼女をメグちゃんと花ちゃんが元気一杯に引っ張ってあげて。
「五!」
湖月ちゃんと愛ちゃんは指を立てて、一つ一つカウントと一緒に折りながら声を出す。
「四!」
可愛い女の子たち、優しい家族たち。
「三!」
皆と共に過ごす毎日が、とても楽しい。
「二!」
私は幸せだよ、神様。
「一!」
きっとここなら、神様にも私の声が届くかな。
「ハッピーニューイヤー!!!!」
ありがとう、神様。私はとても幸せです。
「皆、あけましておめでとう!」
「……おめでとう、千佳」
「おめでとうや、千佳ちゃん!」
「おめでとう千佳ちゃん」
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