TSカリスマライフ! ―カリスマスキルを貰ったので、新しい私は好きに生きることにする。―

夕月かなで

私と莉里ちゃんの映画の必需品

 十月頭の運動会が終わって季節は初冬、十一月へと入りました。
 廊下で擦れ違った一年生から、すけこましのお姉ちゃんだー! と言われたときは思わず保健室へと行きかけましたが、なんとか出会う人全員にすけこましの厳戒態勢を敷くことができました。

 いやぁでも焦ったよ。
 朝会で校長先生が、二年生の諸弓千佳さんのことをすけこましと呼んではいけません! 事実ですが、人には言っていいことと言ってはならないことがあるのです! なんて言うんだもん。

 校長先生もですやん……。

 気を取り直して、今日は放課後の莉里ちゃん家へとやってきました。
 放課後なので遊べる時間は少ないですが、今日も最高に楽しい時間を莉里ちゃんとトゥギャザーしちゃうぜ!

「というわけなんだけど、莉里ちゃん。メグちゃんたちが遊びに出掛けちゃったわけだけど、私たちはどうしよっか?」
「……どういうわけなの」
「察して、いや。察せ!」
「……お笑い見るの?」

 ここで確認しておこう。
 莉里ちゃんは終始言葉数の少ない子である。
 しかし無口な分表情が豊かなのだ。

 面白いことがあったらとても笑顔になり(しかし笑い声は出ない)、悲しいことがあったら目尻を下げて泣き(しかし泣き声は出ない、こうげきも下げることもできない)、怒ると頬を膨らませて涙目になる(この瞬間が一番可愛い)。

「……千佳? どうしたの」
「どうもしてないよ! さぁさぁ、何して遊ぶ?」
「……これ、見る」
「ふむふむ、ちょっと今から部活やめるってよ。おお、この前話題になってた映画、もうレンタル開始したんだ」

「……サラウンドで」
「アクションじゃないのに!?」

「……ポップコーンも用意」
「スナック菓子にあるポップコーンだ! 美味しいよねそれ!」

「……ナチョスもご用意」
「どこで売ってるんです!? 作ったの? トルティーヤなの!?」

「……チュロスもご用意」
「そっちもあるの!?」

「……ターキーもあるよ」
「もうそれはテーマパークじゃないかな!?」

「……早く見よう?」
「……そうだね、ははは」

 この私が翻弄されるとは……。
 莉里ちゃん、恐ろしい子っ!

 莉里ちゃんに先導されて廊下を歩く、その先にまだ私が入ったことのない部屋へと辿り着きます。
 扉の先に広がっていたのは、なんと……。

「……どうぞ座って」
「本当にサラウンドなの!? ホームシアター完備なの!?」

 莉里ちゃんの話によると、莉里ちゃんの両親がこの家を建てるときにホームシアターと屋上のバーベキュースペースを作ったそうです。
 どうやらお酒を飲みながら映画を見たりバーベキューをしたかったそうで。
 何故これだけお祭り大好きな両親から、この無口少女が生まれたのかは定かではありません。

「……早く座って」
「あ、ごめん。このソファに座ればいいんだね」
「……もちのろん」
「よいしょっと、これでッ!?」

 私が座った上に莉里ちゃんがドスンと座ってきました。
 いえ、体重は少ないので音的にはポスンっなんですけど、立った状態からジャンプするように私の膝へと落ちてきました。

「……ベストポジション」
「そ、そっか。良かったね」
「……ポップコーンおっけー」
「ドリンクもオレンジジュースを淹れてきたし、バッチリだね!」
「……千佳、再生して」
「はーい!」

 私はリモコンを取って、スイッチを押します。
 再生スイッチを。
 ……再生スイッチを。

 ……再生スイッチさん、反応して?

「……ディスク入れてなかった」
「あ」

 そうして私は莉里ちゃんのフライングボディプレスならぬ、フライング着座をもう一度受けてから、映画の観賞を始めることになります。
 映画はとても面白かったのですが、まさか私の上で莉里ちゃんが寝てしまうとは……。
 ぐへへ、寝ている間に色々揉んでやったぜぐへへ、ぐへ、はぁ……。

 なんで大きくならないんだろ、私のは。

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