TSカリスマライフ! ―カリスマスキルを貰ったので、新しい私は好きに生きることにする。―

夕月かなで

運動会!応援団長は天使

「それでは只今より、午後の部を始めます。プログラム九番、全校生徒による応援合戦です。選手入場」

 生徒が全員参加の競技とあって、放送席には違う学年の先生が座っています。
 そして入場門に集まった私たちは応援団長であるマイシスターメグちゃんを先頭に、駆け足で事前に練習しておいたルートを走ります。
 さぁお姉ちゃんが見守ってるから、頑張って!

「それでは先行、白組お願いします」

 今年は私たちが先行です。
 去年と同じく、チャンスは二回あるので焦らず行きたいですね。
 そして並んだ私たちの前にメグちゃんが立ちます。

「み、皆さん! い、いけますか!」

 どうやら緊張しているようで、少し声が詰まっています。
 ここで私が手を差し伸べることは簡単……でもそれじゃあ、メグちゃんの為にならない!
 私は湖月ちゃんと愛ちゃんに両脇を抱かれ、身動きを取れないようにされたまま血の涙を流している、気がします。

「緊張しなくても大丈夫だよー!」
「頑張れ団長さーん!」
「私たちがついてるからねー!
「プルプル震えてる団長ちゃんもかわいい!」
「抱きしめたくなるよね!」
「おい、そこのやつちょ」
「あかんて千佳ちゃん、抑えて抑えて」
「メグちゃんの大切な一歩だから、私を抑えて逃がさず助けさせないでって言ったのは千佳ちゃんだよ!」

 ぐおお、メグぢゃああん!
 ハッ!? 今私は何をしようと……。

「すぅ、はぁ、よし! 私はお姉ちゃんの妹だもん! お姉ちゃんの期待に応えるんだ!」
「頑張ってメグちゃーん!」
「頑張れメグメグ!」
「ファイトー!メグちゃん!」
「花も応援してるよ!」
「恵!落ち着いて!」

 花ちゃんと桃ちゃんの他にも、クラスメイトや一年生からのエールが送られます。
 おお、メグちゃんも皆と仲良くできてるんだね!
 お姉ちゃん感動です!

「よーし皆!元気ー?」
「元気ー!」

 皆に向かって、口に手を当てメガホンのようにして問いかけるその姿は、正にアイドル! 投票しちゃうよ!
 でも結婚発表をするなら、相手は私だからね!

「一緒に練習したから、赤組に見せてあげよー!」
「おー!」
「お父さん、お母さんたちにも見せてあげよー!」
「おおー!!」
「お姉ちゃんにも見せてあげよー!」
「おー!!!! 前団長の為に!!」
「ちょ、なにそれ!? なんで皆一字一句ハモれるの!?」
「それじゃーいっくよー?」
「おー!」

 謎の私への忠誠を見せ付けた白組、本当にどうして!?
 というか計測までに滅茶苦茶大声出してるけど、皆大丈夫なの!?
 私の不安を余所に、息を大きく吸ったメグちゃんに合わせて、白組皆も息を吸います。

「頑張れー!」
「白組ぃぃぃぃ!!!!」



 結果は、三デシベル差という僅差での勝利。
 放送席からグラウンド中に伝えられた結果に、湖月ちゃんと愛ちゃんは私の拘束を外して背中を押してくれました。
 そして白組の波を駆け抜け、私はメグちゃんに抱きつきます。

「やったねメグちゃん!」
「お姉ちゃん! 私、ちゃんとできた?」
「うん! さすが私の妹だ!」
「……ぐすっ、よかったよぉぉ!!」

 安心からか、勝利の嬉しさからか。大泣きするメグちゃんの頭を撫でながら、背中をポンポンと叩きます。
 私の身体を強く抱きしめるメグちゃんからは、柔らかい膨らみの感触が……あぁ、なんだか私も泣けてきました。大きくなりたいなぁ。

「さ、戻ろ? 皆待ってるよ」
「うん、うん! お姉ちゃん!」

 そして泣き止んだものの鼻水を垂らしたままのメグちゃんと手を繋いで、騒いでいる白組の皆の下へと走ります。
 後で鞄からティッシュ取り出してあげるから、今は我慢してね。

「メグぢゃーん!」
「頑張りまじたね、恵ぃ!」
「花ちゃん! 桃ちゃん!」

 きっとメグちゃんが頑張れたのは、こうやって一緒に喜びあって、一緒に泣いてくれる友達がいるからかもしれません。

「うおっ千佳ちゃん!? めっちゃ服に鼻水ついとるで!」
「いいでしょ?」
「いや、あの、よくは、ないんちゃうか?」
「勲章さ!」
「せやろか」

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