引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―

魔法少女どま子

トルフィンの部 【お呼びでない客】

『あはははは! 楽しみよ! やっと殺しができるんだね!』
『……余計な発言は慎んでくれたまえ』

 ミュウの狂気じみた笑声と同時に、こちらも聞いたことのある男の声が脳内に届いてきた。
 聞き違えるであろうはずがない。こいつこそがシュロン国の幹部を装った、創造神ディストだ。

 現実だ。これは紛れもない現実。
 ディストもミュウも、本当に世界を滅ぼしにかかっている――

『おっと。いまのは失言だったね。ごめんごめん』
 あくまで軽い口調で、ミュウは続けて言葉を発する。
『というわけで、いまからみんなのステータスを全部1にロックしまーす。今度は解除できないからねー、ごめんね!』

「……え?」
 リュアがとぼけた声を出した、その瞬間。

「うおっ……!」
 形容しがたい重力を感じ、トルフィンは思わず両手と両足をついた。
 動けない。
 筋のひとつさえ動かせない。

「はぁ……はぁ……」
 と同時に、自身の呼吸がひどく乱れているのに気づいた。
 視界の縁がいつの間にか血の色に染め上げられている。HPが残り一割を切ったサインだ。

 トルフィンだけではない。リュアも、レイア先生たちも、同様の症状が起きている。みな床に這いつくばり、苦しい呼吸を繰り返している。

 ――なんだ、これは……!
 ある予感に打たれ、トルフィンは自身のステータスを確認し、そして激しくむせいだ。

《HP 1/1
 MP 1/1

 物理攻撃力 1
 物理防御力 1
 魔法攻撃力 1
 魔法防御力 1
 俊敏正   1 》

 もはや疑いようもない。
 俺は、そして他の者達も、熾天使ミュウによってすべてのステータスを《1》にされている。

 だが、おかしい。
 ステータス操作は無効化されるはずではなかったのか。
 トルフィン、セレスティア、リュアに限り、ステータス操作無効スキルが授けられたはずなのに――

 トルフィンのそんな疑問に答えるかのごとく、愛嬌のある幼女の声が脳内に響き渡った。

『ちなみに、無効スキルもついでに解除しといたから。あたしの手にかかれば、あんなのザルみたいなもんよ』

 ――解除、だと……
 たしかに先ほど悪魔アリアンヌは言っていた。
 ステータス操作無効スキルは、あくまで応急的な処置であり、絶大な力を持つ者には簡単に看破されてしまう――と。

 いままで戦ってきた天使たちに、このスキルに対抗できた者はいなかった。リュアやセレスティアと力を合わせれば、なんとか応戦することもできた。

 だが、このミュウという敵は違う。
 ただでさえ厄介な天使たちの、さらなる上位に立つ強敵……
 そしてミュウのもっと上には、ディストという創造神が存在する……

 そんなトルフィンの思考とは裏腹に、ミュウのあくまで明るい声が脳内に木霊する。

『さーて、ついでだから面白いものを見せちゃうよ。神に逆らうと、こんなことになっちゃうんだからっ』


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