引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
トルフィンの部 【コンビネーション】
シュロン国はまさに地獄絵図と化していた。
頭上に輪っかを浮かべ、片手に杖を携えた天使たち。さきほど病室を襲ってきたのは女性だったが、天使には男性も存在するらしい。顔や髪型など、さまざまな個性を持った天使たちが、人間とモンスターたちを一方的に殺している。
当然だが、人間とモンスターたちに一切の勝ち目はない。
ステータスを低下させられてしまえば、たとえ屈強な戦士でも軟弱者となってしまう。
そしていまも、植物型モンスター《ネプト》が、長身の天使によって殺されようとしていた。植物の成長を加速させることができる、有能な女の子である。ここまでシュロン国が繁栄してきたのは、彼女たちのおかげといってもよい。
「ひぃぃ……やだ、やだよ……!」
ステータスを操作されたか、ネプトは一歩も動けずにひざまずいている。にも関わらず、彼女を助けようとする者は誰一人としていない。やはりゴルムを初めとする騎士たちはすでにやられてしまったか。
トルフィンはすううと息を吐き、自身の剣の柄に触れた。ステータス低下さえ防げれば、個々の天使たちはそれほど脅威にならない。それはさきほどの戦闘で明らかになった。
――守ってやるさ。俺が。
「さあ、いくぞリュア」
「うん!」
リュアも真剣な顔で戦闘の構えに入る。非常事態だが、緊張している場合ではないことは彼女自身わかっているのだろう。
「……援護はお願いします。セレスティアさん」
「任せてちょうだい。これでも攻撃魔法だっていけるんだからね」
堂々と胸を張る王女はたしかにたくましかった。
トルフィンは
「頼りにしてます」
と言うと、再度ネプトらに目を戻した。
「「おおおおおおっ!」」
同時に叫び声をあげながら、トルフィンとリュアは駆けだした。アルスとの戦いでリュアはまた強くなったらしい。以前よりも走るスピードが上がっている。
ここにきてやっと、短髪の天使はトルフィンたちの存在に気づいたらしい。これでもかと言うほど目を見開く。  
「あれは王子と王女……。おかしい……同志たちは病院にも行ったはずだが……」
「はっ! そんな奴、俺がぶった斬ってやったわ!」
「な、なんだと……!?」
またしても天使の両目が大きく見開かれる。よほど人間を下等と見なしているようだ。
天使は例のごとく右腕を突き出すも、トルフィンたちの身にはなにも起こらない。おそらく《ステータス低下》を試みているのだろうが、そんなものは効かない。徐々に天使の顔が青く染まっていく。
「馬鹿な……なぜ効かない!」
まるで隙だらけだった。トルフィンとリュアは容赦なく天使に斬撃を見舞う。エックス字に斬られた天使が、紫の鮮血をまき散らしながら、弱々しく後退する。
「お、おのれ……人間がァ!」
まさに天使という名前には似つかわしくない、悪魔のごとき叫び声。天使は激しく顔を歪ませながら、トルフィンたちに殴りかかってきた。
トルフィンはちらりとリュアに視線を送った。
なにを言ったわけでもない。だが放課後ずっと一緒に訓練してきた彼女はすべてを察し、いったん身を引いた。
さすがと言うべきか、天使の攻撃は強烈の一言だった。紅の光芒を空中に引きながら、次々とトルフィンに拳を打ち込んでいく。おそらく物理攻撃力だけでなく、魔法攻撃力も持ち合わせているだろう。
だが。
発狂したアルスに比べれば、この程度どうってことはない。
トルフィンはわずかに発生した隙を素早く見抜き、天使の片足を浅く抉った。威力的には不十分だが、いまはこれくらいの攻撃で精一杯だ。それに、狙いは別にある。
「いやああああああっ!」
気合いのこもった発声が響きわたった。素早く踏み込んだリュアが、天使の背中から見事な一撃を見舞ったのである。
「ガアアアアッッ! おのれ人間の分際でェェェェェエ!」
ついに天使が壊れた。
判読不能な叫声とともに、天使が神速でリュアに殴打を差し向ける。
だがその攻撃は届かなかった。
「我希う――」
魔法の詠唱をするセレスティアの声が大きく響きわたり。
「悠久の時に眠りし凄惨なる太古の雷よ!」
瞬時にして発生した一筋の雷が、見事に天使の胴体を貫いた。これにはさすがの天使にも看過できないダメージが通った。シュウウ……という音を立てながら、天使身体が真っ黒に焦げる。
「かはっ……」
弱々しい悲鳴をあげながら、天使は倒れ――その身体が地面につく前に、無数の粒子となって四散した。
頭上に輪っかを浮かべ、片手に杖を携えた天使たち。さきほど病室を襲ってきたのは女性だったが、天使には男性も存在するらしい。顔や髪型など、さまざまな個性を持った天使たちが、人間とモンスターたちを一方的に殺している。
当然だが、人間とモンスターたちに一切の勝ち目はない。
ステータスを低下させられてしまえば、たとえ屈強な戦士でも軟弱者となってしまう。
そしていまも、植物型モンスター《ネプト》が、長身の天使によって殺されようとしていた。植物の成長を加速させることができる、有能な女の子である。ここまでシュロン国が繁栄してきたのは、彼女たちのおかげといってもよい。
「ひぃぃ……やだ、やだよ……!」
ステータスを操作されたか、ネプトは一歩も動けずにひざまずいている。にも関わらず、彼女を助けようとする者は誰一人としていない。やはりゴルムを初めとする騎士たちはすでにやられてしまったか。
トルフィンはすううと息を吐き、自身の剣の柄に触れた。ステータス低下さえ防げれば、個々の天使たちはそれほど脅威にならない。それはさきほどの戦闘で明らかになった。
――守ってやるさ。俺が。
「さあ、いくぞリュア」
「うん!」
リュアも真剣な顔で戦闘の構えに入る。非常事態だが、緊張している場合ではないことは彼女自身わかっているのだろう。
「……援護はお願いします。セレスティアさん」
「任せてちょうだい。これでも攻撃魔法だっていけるんだからね」
堂々と胸を張る王女はたしかにたくましかった。
トルフィンは
「頼りにしてます」
と言うと、再度ネプトらに目を戻した。
「「おおおおおおっ!」」
同時に叫び声をあげながら、トルフィンとリュアは駆けだした。アルスとの戦いでリュアはまた強くなったらしい。以前よりも走るスピードが上がっている。
ここにきてやっと、短髪の天使はトルフィンたちの存在に気づいたらしい。これでもかと言うほど目を見開く。  
「あれは王子と王女……。おかしい……同志たちは病院にも行ったはずだが……」
「はっ! そんな奴、俺がぶった斬ってやったわ!」
「な、なんだと……!?」
またしても天使の両目が大きく見開かれる。よほど人間を下等と見なしているようだ。
天使は例のごとく右腕を突き出すも、トルフィンたちの身にはなにも起こらない。おそらく《ステータス低下》を試みているのだろうが、そんなものは効かない。徐々に天使の顔が青く染まっていく。
「馬鹿な……なぜ効かない!」
まるで隙だらけだった。トルフィンとリュアは容赦なく天使に斬撃を見舞う。エックス字に斬られた天使が、紫の鮮血をまき散らしながら、弱々しく後退する。
「お、おのれ……人間がァ!」
まさに天使という名前には似つかわしくない、悪魔のごとき叫び声。天使は激しく顔を歪ませながら、トルフィンたちに殴りかかってきた。
トルフィンはちらりとリュアに視線を送った。
なにを言ったわけでもない。だが放課後ずっと一緒に訓練してきた彼女はすべてを察し、いったん身を引いた。
さすがと言うべきか、天使の攻撃は強烈の一言だった。紅の光芒を空中に引きながら、次々とトルフィンに拳を打ち込んでいく。おそらく物理攻撃力だけでなく、魔法攻撃力も持ち合わせているだろう。
だが。
発狂したアルスに比べれば、この程度どうってことはない。
トルフィンはわずかに発生した隙を素早く見抜き、天使の片足を浅く抉った。威力的には不十分だが、いまはこれくらいの攻撃で精一杯だ。それに、狙いは別にある。
「いやああああああっ!」
気合いのこもった発声が響きわたった。素早く踏み込んだリュアが、天使の背中から見事な一撃を見舞ったのである。
「ガアアアアッッ! おのれ人間の分際でェェェェェエ!」
ついに天使が壊れた。
判読不能な叫声とともに、天使が神速でリュアに殴打を差し向ける。
だがその攻撃は届かなかった。
「我希う――」
魔法の詠唱をするセレスティアの声が大きく響きわたり。
「悠久の時に眠りし凄惨なる太古の雷よ!」
瞬時にして発生した一筋の雷が、見事に天使の胴体を貫いた。これにはさすがの天使にも看過できないダメージが通った。シュウウ……という音を立てながら、天使身体が真っ黒に焦げる。
「かはっ……」
弱々しい悲鳴をあげながら、天使は倒れ――その身体が地面につく前に、無数の粒子となって四散した。
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