引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
勝ったらデート
「さあ、ついに始まります! リュア選手 VS アルス選手! 両選手とも、圧倒的な実力差で勝利を重ねてきました! その二人がぶつかり合う二回戦! とても! とても期待できます!」
審判のアナウンスに続いて、おおおおお! という大歓声が響きわたる。
本戦とはいえ、これまではトルフィンたちがほぼ一撃で試合を決めてしまっていた。観客たちからすれば、あまり面白くない試合ばかりだったと言える。そういう意味では、この試合に期待するのも当然といえた。
二万人もの人々に注目されてもなお、勇者アルスは余裕綽々たる態度だった。相変わらずニヤニヤ笑いを浮かべて腕を組んでいる。
対するリュアは対照的だった。ガチガチに足を震わせ、「リュアちゃーん!」というクラスメイトの声援すら、びくっと背中を竦ませている始末である。
――大丈夫かよ……
トルフィンにしてみれば心配で仕方ないが、これは彼女の試合だ。部外者が助けていいものではない。
――頑張れリュア。おまえは強くなった。相手が元勇者であろうと、おまえなら――
「おーいリュアぁー! おまえが勝ったらなー、どっかデート連れてってやるよー!」
「え、ほんと!?」
「だから負けるなよー。全力で戦えー!」
「う、ううううん!」
これで幾らか気分は晴れただろう。若干怯えてはいるものの、気を取り直したように剣を引っこ抜き、アルスに向き合う。
「ほう、すっかりその気か……。面白い……」
相も変わらずニタニタ笑いながら、アルスも剣の取っ手に触れる。
「いくら小娘とて容赦はせん。後悔しないうちに全力でかかってくるがいい」
「わ、私だって負けないもん!」
そんな応酬が繰り広げられるうち、ゴン、ゴンというゴングが鳴り始める。
トルフィンはごくりと唾を飲んだ。いままでの試合はお遊びのようなものだったが、これは違う。正真正銘、どちらが勝つかわからない本物の戦い――
「はじめー!」
審判が気合いのこもった大声を発するのと同時に、リュア、アルスは地を蹴った。両者、迷いのない走り込みで互いの距離を詰めていく。
「なっ……」
自分とほぼ同じスピードで走るリュアに、アルスが驚きの表情を浮かべる。そのせいだろう。剣を抜くのがほんのすこし遅れた。
剣と剣が激突する。
すさまじい金属音。
心なしか、両者の間からわずかな波動が発せられているように見えた。いまの剣の衝突は、それだけ常軌を逸した威力だった。
「やるな……俺のスピードについてこられるとはッ……!」
口の両端を大きく吊り上げ、どこか狂気じみた表情でアルスが言う。
「私だって真剣に修行した。あなたにだって負けない!」
「ほう。神々の欠陥システムをうまく突いたということか」
「えっ……?」
「知らぬのなら気にするな。さあ、いくぞ!」
勢いよく剣を振り払うアルス。
リュアは負けじと踏ん張ろうとしたが、元勇者の腕力には適いそうにない。このままでは自分の剣が折れると判断し、大きく後方に飛び退いた。
審判のアナウンスに続いて、おおおおお! という大歓声が響きわたる。
本戦とはいえ、これまではトルフィンたちがほぼ一撃で試合を決めてしまっていた。観客たちからすれば、あまり面白くない試合ばかりだったと言える。そういう意味では、この試合に期待するのも当然といえた。
二万人もの人々に注目されてもなお、勇者アルスは余裕綽々たる態度だった。相変わらずニヤニヤ笑いを浮かべて腕を組んでいる。
対するリュアは対照的だった。ガチガチに足を震わせ、「リュアちゃーん!」というクラスメイトの声援すら、びくっと背中を竦ませている始末である。
――大丈夫かよ……
トルフィンにしてみれば心配で仕方ないが、これは彼女の試合だ。部外者が助けていいものではない。
――頑張れリュア。おまえは強くなった。相手が元勇者であろうと、おまえなら――
「おーいリュアぁー! おまえが勝ったらなー、どっかデート連れてってやるよー!」
「え、ほんと!?」
「だから負けるなよー。全力で戦えー!」
「う、ううううん!」
これで幾らか気分は晴れただろう。若干怯えてはいるものの、気を取り直したように剣を引っこ抜き、アルスに向き合う。
「ほう、すっかりその気か……。面白い……」
相も変わらずニタニタ笑いながら、アルスも剣の取っ手に触れる。
「いくら小娘とて容赦はせん。後悔しないうちに全力でかかってくるがいい」
「わ、私だって負けないもん!」
そんな応酬が繰り広げられるうち、ゴン、ゴンというゴングが鳴り始める。
トルフィンはごくりと唾を飲んだ。いままでの試合はお遊びのようなものだったが、これは違う。正真正銘、どちらが勝つかわからない本物の戦い――
「はじめー!」
審判が気合いのこもった大声を発するのと同時に、リュア、アルスは地を蹴った。両者、迷いのない走り込みで互いの距離を詰めていく。
「なっ……」
自分とほぼ同じスピードで走るリュアに、アルスが驚きの表情を浮かべる。そのせいだろう。剣を抜くのがほんのすこし遅れた。
剣と剣が激突する。
すさまじい金属音。
心なしか、両者の間からわずかな波動が発せられているように見えた。いまの剣の衝突は、それだけ常軌を逸した威力だった。
「やるな……俺のスピードについてこられるとはッ……!」
口の両端を大きく吊り上げ、どこか狂気じみた表情でアルスが言う。
「私だって真剣に修行した。あなたにだって負けない!」
「ほう。神々の欠陥システムをうまく突いたということか」
「えっ……?」
「知らぬのなら気にするな。さあ、いくぞ!」
勢いよく剣を振り払うアルス。
リュアは負けじと踏ん張ろうとしたが、元勇者の腕力には適いそうにない。このままでは自分の剣が折れると判断し、大きく後方に飛び退いた。
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