引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
一回戦 1
「さあ皆さんお待ちかね、武術大会の始まりだァー!」
審判の甲高いアナウンスが、ただっ広い会場に響き渡る。
本戦の舞台は、予選のそれとは比べ物にならない。
闘技場を囲むようにして、円形の観客席がずらりと並んでいる。二階席、三階席まで埋まっているから、この会場にはのべ一万人以上の観戦者がいることになる。
彼らのテンションは最高潮に達していた。いわば人間とモンスターで最強を決める戦いなのだ。これに胸躍らない者はいまい。
「いま選手たちは戦いに備えて準備中だ! 観客のみんなは、もうしばらく待っててくれ!」
中年のやり手っぽい審判がそう告げるや、観客席からうおおおー! という歓声が沸き起こる。彼らの興奮は極限にまで高まっているようだ。
控え室。
トルフィンはリュアと壁にもたれかかりながら、いまかいまかと試合開始を待っていた。この日のためにずっと引きこもってきたのだ。準備は万端である。
「うう……緊張してきたよトルフィンくん」
身を震わせながら言うリュアに、トルフィンは思わず苦笑した。
「そんなこと言うなよ。俺なんて一回戦目だぜ?」
「そ、そうだけどぉー」
ちらりとトーナメント表を見ながら、リュアは唇を尖らせた。
そう。記念すべき武術大会の一回戦目は、トルフィンが戦うことになる。相手は魔術師だ。聞くところによると、前王エルノス、そしてセレスティアを護衛しているほどの実力者らしい。その魔術師はいま、控え室の片隅で座禅を組んでいる。
ちなみにアルスは控え室にはいない。居場所は不明だが、奴のことだ、試合前にはきっと姿を現すだろう。
そして。
リュアと勇者アルスが、おそらく二回戦目で戦うことになる。
二人ともかなりの実力者だから、一回戦くらいは難なく突破するだろう。
トルフィンが最終戦まで残れれば、リュアかアルス、どちらかと戦うことになる。
トルフィンはぽんとリュアの頭に手をのせた。
「大丈夫だ。おまえだって強い。きっとアルスにも負けない」
「……そうかな」
「ま、俺には勝てんだろうがな」
「もう、そういうこと言う」
そんなやり取りをしているうちにとうとう時間がきたらしい。
審判に登場を促され、トルフィンはよっと壁から背を離した。
まずは初戦だ。ここで勝てなければ世話がない。
意気込むトルフィンに、さっきまで座禅を組んでいた魔術師が近寄ってきた。
「おや、あなたがトルフィン殿ですかな?」
「はい。よろしくお願いします」
「私は過去、シュン国王様に大変失礼なことをしてしまいました。転移魔法で、悪魔の住処へ追いやってしまったのです」
――悪魔。
ここでその単語が出てくるか。
「いえ。父はかなりテキトーな性格ですから、そんなことは忘れていると思いますよ。気にしないでください」
「そう言われると嬉しいですな。……トルフィン殿、あなたの父上はアグネ湿地帯から平気で帰ってきた。あなたもさぞお強いんでしょう」
「…………」
「手加減はしません。お互い、全力を尽くしましょう」
「はい、頑張りましょう」
二人は対戦者に勝ち気な笑みを浮かべるや、さっと闘技場に歩み出した。外光の眩しさに、トルフィンは思わず目を細めた。
審判の甲高いアナウンスが、ただっ広い会場に響き渡る。
本戦の舞台は、予選のそれとは比べ物にならない。
闘技場を囲むようにして、円形の観客席がずらりと並んでいる。二階席、三階席まで埋まっているから、この会場にはのべ一万人以上の観戦者がいることになる。
彼らのテンションは最高潮に達していた。いわば人間とモンスターで最強を決める戦いなのだ。これに胸躍らない者はいまい。
「いま選手たちは戦いに備えて準備中だ! 観客のみんなは、もうしばらく待っててくれ!」
中年のやり手っぽい審判がそう告げるや、観客席からうおおおー! という歓声が沸き起こる。彼らの興奮は極限にまで高まっているようだ。
控え室。
トルフィンはリュアと壁にもたれかかりながら、いまかいまかと試合開始を待っていた。この日のためにずっと引きこもってきたのだ。準備は万端である。
「うう……緊張してきたよトルフィンくん」
身を震わせながら言うリュアに、トルフィンは思わず苦笑した。
「そんなこと言うなよ。俺なんて一回戦目だぜ?」
「そ、そうだけどぉー」
ちらりとトーナメント表を見ながら、リュアは唇を尖らせた。
そう。記念すべき武術大会の一回戦目は、トルフィンが戦うことになる。相手は魔術師だ。聞くところによると、前王エルノス、そしてセレスティアを護衛しているほどの実力者らしい。その魔術師はいま、控え室の片隅で座禅を組んでいる。
ちなみにアルスは控え室にはいない。居場所は不明だが、奴のことだ、試合前にはきっと姿を現すだろう。
そして。
リュアと勇者アルスが、おそらく二回戦目で戦うことになる。
二人ともかなりの実力者だから、一回戦くらいは難なく突破するだろう。
トルフィンが最終戦まで残れれば、リュアかアルス、どちらかと戦うことになる。
トルフィンはぽんとリュアの頭に手をのせた。
「大丈夫だ。おまえだって強い。きっとアルスにも負けない」
「……そうかな」
「ま、俺には勝てんだろうがな」
「もう、そういうこと言う」
そんなやり取りをしているうちにとうとう時間がきたらしい。
審判に登場を促され、トルフィンはよっと壁から背を離した。
まずは初戦だ。ここで勝てなければ世話がない。
意気込むトルフィンに、さっきまで座禅を組んでいた魔術師が近寄ってきた。
「おや、あなたがトルフィン殿ですかな?」
「はい。よろしくお願いします」
「私は過去、シュン国王様に大変失礼なことをしてしまいました。転移魔法で、悪魔の住処へ追いやってしまったのです」
――悪魔。
ここでその単語が出てくるか。
「いえ。父はかなりテキトーな性格ですから、そんなことは忘れていると思いますよ。気にしないでください」
「そう言われると嬉しいですな。……トルフィン殿、あなたの父上はアグネ湿地帯から平気で帰ってきた。あなたもさぞお強いんでしょう」
「…………」
「手加減はしません。お互い、全力を尽くしましょう」
「はい、頑張りましょう」
二人は対戦者に勝ち気な笑みを浮かべるや、さっと闘技場に歩み出した。外光の眩しさに、トルフィンは思わず目を細めた。
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