引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
予兆2
「な……っ!」
トルフィンは思い切り目を見開き、そして激しく喘いだ。
――転生者。
聞き違えるであろうはずがない。
たしかに奴はそう言った。
それは国王シュンと、妻ロニンしか知らないはずだ。リュアにすらすべての事情を打ち明けていない。
なのに、こいつは知っている。
初めて会ったはずの、この男が。
「なぜ……それを……」
かすれ声でそう尋ねるのがやっとだった。
勇者アルスは気取ったように両目を閉じると、意味深に
「あなたが知る必要はありません」
とだけ言った。
「ともかく、シュン国王に伝えておいてください。あなたに会うのを楽しみにしていると――」
最後に気障なウインクを決めると、勇者アルスはいずこかへと歩き去っていった。
その後ろ姿を、トルフィンはただ呆然と眺めることしかできなかった。
――勇者アルス。
いったい何者だ。
あの性格はいかにも勇者らしくないし、トルフィンが転生者であることも知っていた。また、過去のシュンの発言を思い出しても、勇者の実力はそれほどでもなかったはずだ。だがさっきの戦いを見るに、奴のステータスは相当なレベルにまで高まっている。
なにがどうなっているのか、いくら考えてもわからない。
ただ、ひとつだけ言えることは、勇者アルスがおそらく最近の《異変》に関わっているかもしれないと……なんとなくそう感じた。
ちらりと、アルスの去った方向に目をやる。
奴は《一区分》の舞台にいた。予選の時点では、トルフィンともリュアとも被らない。
――厄介なことにならなきゃいいがな……
そう思いながら、トルフィンは意識を予選試合に戻した。アルスは本戦が云々と言っていたが、そもそも予選を通過できるかもわからない。ここで油断するわけにはいかない。
かくして、トルフィンは淡々と予選試合をこなしていった。
《引きこもり》たるトルフィンに適う者はこの時点で存在しなかった。予選の最終戦すらも、トルフィンはすんなりと勝利を飾った。リュアと勇者アルスも同様に、苦労なく予選を勝ち抜けた。
そのようにして、トルフィン、リュア、勇者アルスの本戦出場が決定した。
トルフィンは思い切り目を見開き、そして激しく喘いだ。
――転生者。
聞き違えるであろうはずがない。
たしかに奴はそう言った。
それは国王シュンと、妻ロニンしか知らないはずだ。リュアにすらすべての事情を打ち明けていない。
なのに、こいつは知っている。
初めて会ったはずの、この男が。
「なぜ……それを……」
かすれ声でそう尋ねるのがやっとだった。
勇者アルスは気取ったように両目を閉じると、意味深に
「あなたが知る必要はありません」
とだけ言った。
「ともかく、シュン国王に伝えておいてください。あなたに会うのを楽しみにしていると――」
最後に気障なウインクを決めると、勇者アルスはいずこかへと歩き去っていった。
その後ろ姿を、トルフィンはただ呆然と眺めることしかできなかった。
――勇者アルス。
いったい何者だ。
あの性格はいかにも勇者らしくないし、トルフィンが転生者であることも知っていた。また、過去のシュンの発言を思い出しても、勇者の実力はそれほどでもなかったはずだ。だがさっきの戦いを見るに、奴のステータスは相当なレベルにまで高まっている。
なにがどうなっているのか、いくら考えてもわからない。
ただ、ひとつだけ言えることは、勇者アルスがおそらく最近の《異変》に関わっているかもしれないと……なんとなくそう感じた。
ちらりと、アルスの去った方向に目をやる。
奴は《一区分》の舞台にいた。予選の時点では、トルフィンともリュアとも被らない。
――厄介なことにならなきゃいいがな……
そう思いながら、トルフィンは意識を予選試合に戻した。アルスは本戦が云々と言っていたが、そもそも予選を通過できるかもわからない。ここで油断するわけにはいかない。
かくして、トルフィンは淡々と予選試合をこなしていった。
《引きこもり》たるトルフィンに適う者はこの時点で存在しなかった。予選の最終戦すらも、トルフィンはすんなりと勝利を飾った。リュアと勇者アルスも同様に、苦労なく予選を勝ち抜けた。
そのようにして、トルフィン、リュア、勇者アルスの本戦出場が決定した。
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