引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
教育に悪い親子喧嘩
――コンピューターゲーム。
シュンやロニンには聞き覚えのない単語だった。
トルフィンが言うには、《機械》のなかの登場人物を操作し、レベルを上げ、ストーリーを進めていくもの……らしい。
「なんだそりゃ。わっかんね」
「なんていうか……改めて説明しようとすると難しいな、これ」
「ともかく、おまえの前世ではステータスっていう概念はない。それは《ゲーム》っていう遊びによく使われるシステムだった……ってわけか」
「……まあ、そういうことだな」
――ゲーム? 作られた世界?
慣れ親しんできたこの世界が、虚構のものだってのか?
確かに奇妙な点はある。
毎日汗水を垂らして国を守っている戦士よりも、引きこもりのほうが強い。これには明らかな違和感がある。
なんらかの欠陥、つまりはバグとしか思えないわけだ。
「ふう……」
シュンは小さく息を吐くと、にたりと笑ってみせた。
「この話はいったん脇に置こう。たぶんいま考えてもわかんねえ。……それよりも、トルフィン」
「ん?」
「おまえ、もう二十一なんだろ? 俺たちとほぼ同い年だ。これからは自分のことは自分でできるか?」
「なっ……」
トルフィンは両目を剥いた。
「ふ、ふざけんな! 育児放棄だ育児放棄!」
「なーにが育児放棄だこのすっとこどっこいが」
「も、もうやめてよ二人とも」
ロニンが困った顔で仲裁に入る。
「これでやっと合点がいったぜ。おまえがなんで女好きなのか。そりゃもう、いい歳だもんなあ。しかもロリ……」
「やめろクソ親父! 老いぼれになっても親孝行してやんねえぞ!」
「ほーん、言うねぇ」
教育に悪い会話を繰り広げつつも、室内の雰囲気は徐々に明るくなっていった。家族三人は冗談を交わしながらも、それぞれに食事を口に運びはじめる。
シュン、ロニン、トルフィン。
みんな《ほぼ同い年》という奇妙な家族であったが、このとき、三人の仲が深まったのは事実だった。トルフィンがやっと、胸中を吐露したからである。自分の息子なのに内心が窺い知れないのは、親にとって相当なストレスになる。
シュンとトルフィンが軽い掛け合いを繰り広げるうち、テーブルの食事もいい具合に減ってきた。このまま今日は寝てしまおうかと誰もが思った頃―― 
バタンッ!
ふいにロニンがテーブルに手を当て、立ち上がった。
「お、おい、どうした?」
怪訝な表情で問いかけるシュン。
「……悪魔が……動き出した……」
「なんだって?」
魔王ロニンは、モンスターと悪魔の動向に関してのみ、シュンより敏感に気配を察知することができる。
「この場所は……まさか……!」
「お、おいおい、だからどうしたって……」
「シュンさん! 《故郷の村》にワープしよう! 早く!」
シュンやロニンには聞き覚えのない単語だった。
トルフィンが言うには、《機械》のなかの登場人物を操作し、レベルを上げ、ストーリーを進めていくもの……らしい。
「なんだそりゃ。わっかんね」
「なんていうか……改めて説明しようとすると難しいな、これ」
「ともかく、おまえの前世ではステータスっていう概念はない。それは《ゲーム》っていう遊びによく使われるシステムだった……ってわけか」
「……まあ、そういうことだな」
――ゲーム? 作られた世界?
慣れ親しんできたこの世界が、虚構のものだってのか?
確かに奇妙な点はある。
毎日汗水を垂らして国を守っている戦士よりも、引きこもりのほうが強い。これには明らかな違和感がある。
なんらかの欠陥、つまりはバグとしか思えないわけだ。
「ふう……」
シュンは小さく息を吐くと、にたりと笑ってみせた。
「この話はいったん脇に置こう。たぶんいま考えてもわかんねえ。……それよりも、トルフィン」
「ん?」
「おまえ、もう二十一なんだろ? 俺たちとほぼ同い年だ。これからは自分のことは自分でできるか?」
「なっ……」
トルフィンは両目を剥いた。
「ふ、ふざけんな! 育児放棄だ育児放棄!」
「なーにが育児放棄だこのすっとこどっこいが」
「も、もうやめてよ二人とも」
ロニンが困った顔で仲裁に入る。
「これでやっと合点がいったぜ。おまえがなんで女好きなのか。そりゃもう、いい歳だもんなあ。しかもロリ……」
「やめろクソ親父! 老いぼれになっても親孝行してやんねえぞ!」
「ほーん、言うねぇ」
教育に悪い会話を繰り広げつつも、室内の雰囲気は徐々に明るくなっていった。家族三人は冗談を交わしながらも、それぞれに食事を口に運びはじめる。
シュン、ロニン、トルフィン。
みんな《ほぼ同い年》という奇妙な家族であったが、このとき、三人の仲が深まったのは事実だった。トルフィンがやっと、胸中を吐露したからである。自分の息子なのに内心が窺い知れないのは、親にとって相当なストレスになる。
シュンとトルフィンが軽い掛け合いを繰り広げるうち、テーブルの食事もいい具合に減ってきた。このまま今日は寝てしまおうかと誰もが思った頃―― 
バタンッ!
ふいにロニンがテーブルに手を当て、立ち上がった。
「お、おい、どうした?」
怪訝な表情で問いかけるシュン。
「……悪魔が……動き出した……」
「なんだって?」
魔王ロニンは、モンスターと悪魔の動向に関してのみ、シュンより敏感に気配を察知することができる。
「この場所は……まさか……!」
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