引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
手厚い歓迎
エルノス・ディ・クローディア。
それが、人間界における王者の名前だ。
シュンも人間界に住んでいたとき、王の噂を聞いたことがある。
温厚にして徳の高い人物。
権力者でありながら、並々ならぬ優しさを併せ持った類稀なる人物。
そして、その指導力、胆力、観察眼を用いて、不眠不休で国益のために日々行動している……と。
まさにべた褒めである。王を批判している者を、そういえばシュンは見たことがない。
それだけに手強い相手なのだろう。
シュンは気を引き締め、セレスティアの案内するままに、謁見の間に向かっていた。
国王として見られていないことに関しては、ムカつきはするが、とりあえず脇に置いておくことにした。セレスティアたちに助けられたことも事実だから。
「ここよ」
セレスティアはとある通路の前で立ち止まった。
目を凝らすと、細い通路の先に、豪勢な大広間が見える。あそこに王の玉座があるのだろう。
「シュンくん……」
あろうことか、セレスティアがシュンの裾を掴んできた。
「気をつけて。いいように遊ばれないで。お父様は大国の王よ」
「わーってるさ。ーーんなことより、手を離せ」
「……うん」
さすがに妻の前で浮気はできない。実際にも、ロニンが冷たい目で二人を睨んでいた。
シュンはこほんと咳払いすると、わずかばかり声を張った。
「よし、いくか!」
その発言を皮切りに、一同は同時に歩き出す。
距離的にはたいしたことのない通路を進みながら、シュンは物思いに耽っていた。
ーー三年前までは引きこもりだった自分が、まさか王に呼ばれることになろうとは。以前の自身ならば想像もできなかったことだ。不思議なものである。
だが、いまではこちらも同じく国王。
引くわけにはいかない。いくらエルノスが強敵といえど、こちらにも国民の生活がかかっている。
そうして、とうとう謁見の間に足を踏み入れたとき。
ーーん?
シュンは違和感を覚えた。
この気配。
まさか。
「……ロニン。感じるか」
「うん」
シュンの問いかけに、ロニンも深刻な顔で頷いた。
ただひとり、セレスティアだけが、訳がわからないといったふうに目をぱちくりさせている。
「どうしたのよ。感じるとか感じないとか」
「武装した騎士が潜んでるな。だいたい五十人といったところだ」
「えっ……」
セレスティアが息を呑む。
「手厚い歓迎じゃねえか。かなり警戒されてるようだ」
薄ら笑いを浮かべながら、シュンは堂々と、謁見の間に一歩、踏み出した。
それが、人間界における王者の名前だ。
シュンも人間界に住んでいたとき、王の噂を聞いたことがある。
温厚にして徳の高い人物。
権力者でありながら、並々ならぬ優しさを併せ持った類稀なる人物。
そして、その指導力、胆力、観察眼を用いて、不眠不休で国益のために日々行動している……と。
まさにべた褒めである。王を批判している者を、そういえばシュンは見たことがない。
それだけに手強い相手なのだろう。
シュンは気を引き締め、セレスティアの案内するままに、謁見の間に向かっていた。
国王として見られていないことに関しては、ムカつきはするが、とりあえず脇に置いておくことにした。セレスティアたちに助けられたことも事実だから。
「ここよ」
セレスティアはとある通路の前で立ち止まった。
目を凝らすと、細い通路の先に、豪勢な大広間が見える。あそこに王の玉座があるのだろう。
「シュンくん……」
あろうことか、セレスティアがシュンの裾を掴んできた。
「気をつけて。いいように遊ばれないで。お父様は大国の王よ」
「わーってるさ。ーーんなことより、手を離せ」
「……うん」
さすがに妻の前で浮気はできない。実際にも、ロニンが冷たい目で二人を睨んでいた。
シュンはこほんと咳払いすると、わずかばかり声を張った。
「よし、いくか!」
その発言を皮切りに、一同は同時に歩き出す。
距離的にはたいしたことのない通路を進みながら、シュンは物思いに耽っていた。
ーー三年前までは引きこもりだった自分が、まさか王に呼ばれることになろうとは。以前の自身ならば想像もできなかったことだ。不思議なものである。
だが、いまではこちらも同じく国王。
引くわけにはいかない。いくらエルノスが強敵といえど、こちらにも国民の生活がかかっている。
そうして、とうとう謁見の間に足を踏み入れたとき。
ーーん?
シュンは違和感を覚えた。
この気配。
まさか。
「……ロニン。感じるか」
「うん」
シュンの問いかけに、ロニンも深刻な顔で頷いた。
ただひとり、セレスティアだけが、訳がわからないといったふうに目をぱちくりさせている。
「どうしたのよ。感じるとか感じないとか」
「武装した騎士が潜んでるな。だいたい五十人といったところだ」
「えっ……」
セレスティアが息を呑む。
「手厚い歓迎じゃねえか。かなり警戒されてるようだ」
薄ら笑いを浮かべながら、シュンは堂々と、謁見の間に一歩、踏み出した。
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