引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―

魔法少女どま子

叶わぬ願いならば

「……なるほどな」

 すべての話を聞き終え、シュンは静かに頷いた。

 かつてディストを含めた三人で食事をしたリビング。
 そこのテーブルで、シュンとロニンは向かい合っていた。

「ごめんね。隠すつもりじゃなかったんだけど……その、言いづらくて」

 うつむきながら呟くロニンに、シュンはなにも答えない。

 村人と魔王。
 この上なく仲の良い二人だが、ひとりは人間、もうひとりはモンスター。
 本来は交わることさえありえない種族間。
 そんななかで、どうしても思惑がすれ違ってしまう。

 特にロニンは魔王だ。自分だけの感情に流されて、一般のモンスターを全滅させるわけにはいかない。
 そしてモンスターのために働けば、確実にシュンたち人間に迷惑をかけることになる。まさに板挟み状態だった。

「ごめんねお兄ちゃん。もし迷惑なら、私、ここにはもう来な……」

 途端。
 シュンはおもむろに立ち上がり、ロニンのそばに歩み寄った。

 そして。
「ん……」
 ロニンと深く唇を重ね合わせる。

 シュンとの行為自体は初めてではない。魔王戦ののち、ドキドキに耐えられなくなったロニンが自分から申し出た。

 長い長い交わりのあと、ロニンはぼうっとした頭でシュンを見据えた。

「前にも言ったろ。めんどくせーことは考えるな。おまえはおまえの好きなようにしな」

「あ……」

 ーーお兄ちゃん。
 もし、私たちの種族が同じであったなら。
 きっと正真正銘の恋人関係になれたのに。
 胸のうずきを必死におさえつけながら、ロニンは小さく頷くことしかできなかった。

「……で、来るんだろ? 学園に」

「うん……行きたい」

 単なる調査のためだけじゃない。
 シュンと一緒にいられる。それだけで幸せだから。叶わぬ恋ならば、せめてすこしでも長く彼とひとつでありたいから。

 ロニンはぼうっとした頭のまま、シュンの胸に飛び込んだ。

「おおっと」

 めんどくさそうに言いながらも、やっぱり優しく受け止めてくれるシュン。

「参ったな。俺いま賢者タイムなんだが」

「え……賢者?」

「いやなんでもねえ。が、頑張るぜ俺」

「う、うん」

 よくわからなかったが、ロニンはなにも考えず、シュンの胸に顔をうずめた。

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