ノアの弱小PMC—アナログ元少年兵がハイテク都市の最凶生体兵器少女と働いたら

稲荷一等兵

第4節7部ーツーマンセルー

 次々と姿を現してきた浸食体を無視し、集落を突っ切って、そのまま山の施設の方へ向かった。徐々に濃くなるグレアノイドの気配に、雛樹は後方から追随してきていた来栖川と荒木にストップをかけたのだが……。

「君たちだけに行かせるわけにはいかないな。私たちも協力する。2人より4人いた方がいいだろう」

 来栖川がそう言って、雛樹やガーネットだけに任せるのを良しとしなかったのだ。雛樹としては、当初の目的であった、この任務の裏の目撃者としてありがたくはあったのだが……。

「わかりました。では、今から廃棄施設内に入り俺たちは生存者を捜索し、発見し次第救出します。」
「ああ、わかった。しかし祠堂雛樹。使い慣れないなら敬語などは使ってくれるな。今は君が頼りだ、効率良く仕事をしてくれ」
「ああ、ええと。わかった。なら今から言うことをよく聞いてくれ……」

 雛樹は己が感じるグレアノイドの気配から、施設内にグレアノイド粒子が発生しているか、あるいは強いグレアノイド反応を発生させる何かがいる可能性を伝えた。
 そしてその上で、比較的安全に通れるルート指示と撤退のタイミングを請け負うことを言ったあと、施設内に侵入した。

 施設内は、金属壁に囲まれた無骨なものだった。あかりとなるようなものはなく、それぞれがタクティカルライトなどを使い足元を確保。そして、一番重要な“役割分け”について話し合っていた。

「生存者の救出と、防衛システムのシャットダウン、これは班を分けておこなったほうがいい」
「なら私と荒木が防衛システムを担当」
「いや、防衛システムは荒木一等と……ガーネットを付ける」

 雛樹の言い分に、疑問を覚えたのは来栖川と荒木だけではなかった。ガーネットもなぜかという目でこちらを見てきていたのだ。

「こいつは危機察知能力に長けてる。一番重要な役割を任せるにはうってつけだ。来栖川准尉は俺と来てくれ。荒木一等、あんたが先頭に、ガーネットの言葉に気をつけて火器管制室へ向かってくれ」
「ああ、わかったよ。よろしく頼むね、ガーネットさん」
「……ッ」

 ガーネットは雛樹の元から離れたくない様子だったのだが……それでも。雛樹の言葉を飲んでいた。

“ここで頼れるのはお前しかいない”

 荒木一等も、箱舟の住人であり、ステイシスが守ってきたものだ。ここでわがままを言って無理やりにでも自分についてくるようならば、これから先危険な任務をこなしていく中で、背中を預けるわけにはいかなくなる。

 初任務で、酷ではあるのだが……。

「荒木を任せたぞ、ガーネット君」
「来栖川准尉を頼みます、祠堂君」

 こくりと頷くガーネットと、ガーネットを頼みますと返事をした雛樹。お互いに、火器管制室、そして生命反応を追ってツーマンセルを組み、別々に行動を開始した。

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