ノアの弱小PMC—アナログ元少年兵がハイテク都市の最凶生体兵器少女と働いたら

稲荷一等兵

ーヒナキ到着ー


「やっほー結月ちゃん。美味しい料理いただきに来たよ」

「いらっしゃいませ、姫乃」

 その後、静流のオペレーターであり夜刀神葉月の姉である東雲姫乃が到着した。
 ひょうきんな姫乃に対して真面目な葉月は叱りを入れた。
 誕生日会だというのに、もっと言うことがあるでしょうと。

 そんなお堅い葉月に対して姫乃は笑いながら、こういう場に慣れてないことを告げ、静流に誕生日プレゼントを送った。

 そうしてパーティーを始める19時5分前。ようやく静流が待っていた人物が到着した。
 一目散に玄関へ駆けていく静流を見て、葉月と姫乃は顔を見合わせ、葉月はため息、姫乃はニヤニヤと笑みを浮かべてしまう。

「いらっしゃいませ、ヒナキ……とステイシス」

「んべぇ」

 開けてすぐに向けられる、バカにしたようなステイシスの舌出し顏。
 どうしたって自分が気に入らないのだろうと、静流は苦笑いを浮かべたが……。

「ターシャ、悪い。ちょっと遅くなった」

「いえ、来てくれて嬉しいですお二方」

 自分にも向けられた歓迎の言葉に対し、顔を背けたステイシスの心境は複雑なものだろう。
 美味い料理が食べられるとつられてやってきた……と、雛樹は思っているだろうが、雛樹が思っている以上にステイシス……いや、ガーネットは大人である。

 いくら自分が気に入らない人間だとはいえ、雛樹にとってはそうではない。
 それにだ。本当に嫌なら断っていい、家に帰って飯にしようなんて言われてしまえば多少の我慢はしてやりたくもなるというものだ。

 念のため、フード付きのマントで身を隠したガーネットは雛樹の後ろにぴったりとつくようにして、結月邸に入っていった。

「やあ、よく来てくれましたね、ステイシスさん」

「ガーネットぉ」

「ん?」

「恭弥さん、こいつのことはガーネットと呼んでやってほしい。ステイシスだと色々……ほら、ややこしいからさ」

「ほう、そうかそうか。名をつけたんだね。随分と仲がいいじゃないか」

 当然というかなんというか、結月夫妻はガーネットに興味津々といった様子だった。
 フードを深くかぶってできるだけ顔を隠していたガーネットだったが、よく顔を見せて欲しいという恭弥の要望によってフードを外す。

「これで満足かしらぁ?」

 フードの下から現れた、長く白い髪をもち、名の通り赤い瞳と、褐色の肌の整った顔。
 随分と幼い見た目をしているが、随分と美人さんである。
 半ば投げやりとなったガーネットだったが、その後の評価に気分を良くしてしまう。

 自分の容姿は随分と優れているらしい。雛樹からはあまり容姿について言われたことがなかったため、気に掛けた事などなかったのだが。

「高部くんに聞きはしていたが、実際見ても君が海上都市の最高戦力だとはにわかに信じ難いね」

「触ったら死ぬわよぉ」

「うん、それも聞いているよ」

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