ノアの弱小PMC—アナログ元少年兵がハイテク都市の最凶生体兵器少女と働いたら
第5節4部—怪物を使役する者達—
先ほどまでの、兵器としてのステイシスとは思えない。自分の腕を、腫物にでも触れるようにぺたぺたと触る彼女はどこか嬉しそうで、見た目通りの少女らしさを見せていた。
こんな状況でもなければ、気の利いた話でもしてやりたいところだったが……。
「なんだ、こいつは……」
コンピュタールームより先の区画。そこに足を踏み入れ、水密扉を閉めた。
そこに広がる光景を見て……吐き気を覚える。
その区画中を満たす、赤い光。
「なんでこいつらがここに……」
大きな水槽の中に沈んでいる、黒い体を持つ怪物ドミネーター。動かず、ただじっと、圧倒的な存在感を持ってそこにいた。
「捕獲されてるのか……? 都市に撃ち込まれたやつと同じタイプだ……、こいつらが撃ち込んできたのか」
「この子“達”がどおしたのぉ?」
「達? ここにはこれしかいないように見えるけどな……」
目の前の赤く光る液体で満たされた水槽は、目の前の一つしか見当たらない。
「この子の中にいっぱいいるわよぉ? わからないのぉ?」
「一体の体の中に複数の核があるってことでいいのか……? そんな個体が自然発生したって事例は聞いたことない……」
都市に撃ち込まれたドミネーター。その怪物は、頭部から胴体を真っ二つにしてもまた再生してきた。あれだけの損傷を負わせ、それでもなお絶命しなかったことを考えると……。
「あれも核が複数あったのか……?」
「たまーにいるわよぅ? ほとんど見かけないけどぉ。でも中にいる数が多すぎるわぁ、この子。これは見た事なぁい」
水槽に寄って行って、じっとその怪物を見つめている少女。普通、こういった少女の正常な反応は、怖がるか見ないようにするかなのだが……やはり彼女は生物兵器としての側面が大きく出ているらしい。
と、背後に幾らかの気配を感じて振り向きざまにハンドガン、ガバメントを引き抜いて構えた。
それと同時に、こちらへ向けられた複数のライフルの銃口。
雛樹たちに追いついた兵士たちと、その真ん中で立つ男の姿。
「そいつらは、俺たちの生物兵器さ。元CTF201、祠堂雛樹。てめーには見苦しいもんだろーけどよ」
「政府海軍、飛燕大佐……」
「へ、お互い知っている同士じゃん。面倒だぜまったく。銃を捨て、その嬢ちゃんをこっちによこせよ。お前だけは逃がしてやる。昔世話んなったしよ」
ため息をつきながら、飛燕という男はそう要求してきた。しかし……。
「どうした? はやくしろよ。これだけの高級機材破壊したことも見逃してやるってんのによ。本土で戦ってきてる同士だろ? 話がわかるやつだと見込んでるんだぜ?」
「こんな怪物を使役する奴らの言葉を分かれと言うのか、おたくらは」
雛樹のその言葉を聞いた彼らは、別段何も感じてはいないらしい。表情一つ変えず言葉を返してきた。
「怪物? おいおい言ってくれるじゃん。ならてめぇの横にいるそれはなんなんだよ。怪物以外の何物でもねぇだろ。生物へのグレアノイド侵食反応の強さが尋常じゃねぇ。常人なら触れもしねぇ女なんだぜぇ?」
「……!!」
こんな状況でもなければ、気の利いた話でもしてやりたいところだったが……。
「なんだ、こいつは……」
コンピュタールームより先の区画。そこに足を踏み入れ、水密扉を閉めた。
そこに広がる光景を見て……吐き気を覚える。
その区画中を満たす、赤い光。
「なんでこいつらがここに……」
大きな水槽の中に沈んでいる、黒い体を持つ怪物ドミネーター。動かず、ただじっと、圧倒的な存在感を持ってそこにいた。
「捕獲されてるのか……? 都市に撃ち込まれたやつと同じタイプだ……、こいつらが撃ち込んできたのか」
「この子“達”がどおしたのぉ?」
「達? ここにはこれしかいないように見えるけどな……」
目の前の赤く光る液体で満たされた水槽は、目の前の一つしか見当たらない。
「この子の中にいっぱいいるわよぉ? わからないのぉ?」
「一体の体の中に複数の核があるってことでいいのか……? そんな個体が自然発生したって事例は聞いたことない……」
都市に撃ち込まれたドミネーター。その怪物は、頭部から胴体を真っ二つにしてもまた再生してきた。あれだけの損傷を負わせ、それでもなお絶命しなかったことを考えると……。
「あれも核が複数あったのか……?」
「たまーにいるわよぅ? ほとんど見かけないけどぉ。でも中にいる数が多すぎるわぁ、この子。これは見た事なぁい」
水槽に寄って行って、じっとその怪物を見つめている少女。普通、こういった少女の正常な反応は、怖がるか見ないようにするかなのだが……やはり彼女は生物兵器としての側面が大きく出ているらしい。
と、背後に幾らかの気配を感じて振り向きざまにハンドガン、ガバメントを引き抜いて構えた。
それと同時に、こちらへ向けられた複数のライフルの銃口。
雛樹たちに追いついた兵士たちと、その真ん中で立つ男の姿。
「そいつらは、俺たちの生物兵器さ。元CTF201、祠堂雛樹。てめーには見苦しいもんだろーけどよ」
「政府海軍、飛燕大佐……」
「へ、お互い知っている同士じゃん。面倒だぜまったく。銃を捨て、その嬢ちゃんをこっちによこせよ。お前だけは逃がしてやる。昔世話んなったしよ」
ため息をつきながら、飛燕という男はそう要求してきた。しかし……。
「どうした? はやくしろよ。これだけの高級機材破壊したことも見逃してやるってんのによ。本土で戦ってきてる同士だろ? 話がわかるやつだと見込んでるんだぜ?」
「こんな怪物を使役する奴らの言葉を分かれと言うのか、おたくらは」
雛樹のその言葉を聞いた彼らは、別段何も感じてはいないらしい。表情一つ変えず言葉を返してきた。
「怪物? おいおい言ってくれるじゃん。ならてめぇの横にいるそれはなんなんだよ。怪物以外の何物でもねぇだろ。生物へのグレアノイド侵食反応の強さが尋常じゃねぇ。常人なら触れもしねぇ女なんだぜぇ?」
「……!!」
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