ノアの弱小PMC—アナログ元少年兵がハイテク都市の最凶生体兵器少女と働いたら
第6節5部ー方舟で戦う意味ー
本土ではよく、作戦区域周辺の住民から食料をもらうことも多かった。そういったこともあり、雛樹にとって食料というのは金銭にも負けるとも劣らないものなのだが……。
「で、なんなんだ? その特別報酬って」
「あなた個人へのものは置いといて、会社に対する報酬は」
「俺個人の方が聞きたい!!」
「いいから黙って聞きなさい」
「はい」
元気な怪我人ねと呟きつつ、企業連から検討されている報酬についてのことを、葉月は話し出した。
「二脚機甲の所有、および運用許可?」
「ええ。小規模民間会社にはあり得ない待遇だわ。そりゃ企業連合に直接貢献する形でのステイシス奪還作戦となったのだから、当たり前といえば当たり前だけど」
GNC所属、RBとの共闘による、攻撃性を持つドミネーターの撃破。企業連の所有するステイシスの奪還。そして、同じく所有する二脚機甲の爆破処理による機密保持行動。
そのどれもが直接的に方舟に貢献することであったことが今回、報酬として反映されているようだ。
「二脚機甲の所有許可が下りただけ? それってそんなに重要なことなのかね?」
「超重要よ。二脚機甲の使用許可が下りた時点で、受注できる仕事の量も、報酬の質も段違いになるわ。まあ、機体が用意できればの話だけど」
あくまで所有許可が下りただけであり、その保管場所および機体そのものは支給されないようだ。
「他の企業からレンタルすることもできるわ。しずるんのツテを使えば、センチュリオンテクノロジー製の型落ち機なら格安で借りられるだろうけど……まあ、その必要はないわね」
「いやいや、誰が操縦するんだ」
「祠堂君」
「俺が!? いや、まともに動かせるわけないだろ。突っ込んで爆発するだけならいくらでもやってやるけど」
「高価な機体をいちいち爆破できるわけないでしょ! ……初めは誰だってそんなもんよ。それに……二脚機甲の使用許可は私から言い出したことなの。理由があってね」
その理由は退院し、出勤した時に“見せる”と言われた。そこでその話題はひとまず幕を下ろしたのだった。
しばらく沈黙が続いて、雛樹がその空気に耐えられなくなり口を開こうとすると……。
「しずるんに言われたわ。あなたはいつも無茶をする人だって」
「うっ……、ああ。いや、一応自分の許容量を超えるようなことはしないつもりだけど」
「こんな負傷具合でキャバを超えてないって、よく言えるわね」
「申し開きの言葉もございません」
ぺこりと頭を下げた雛樹に対し、呆れたようにため息をつきながら葉月は腕を組み……。
「いい? 私の会社に雇われているってことは、あなたは会社の財産なの。勝手に怪我したり死んだりしたら許さないから」
「仮にも軍事をビジネスにする会社なんだから、ある程度の怪我や死体は仕方ないだろ?」
「詭弁なのは自覚してるわ。でもいくら軍事といっても、民間事業よ。国じゃなく、会社の主たる私に従ってもらう。……どんな危険な任務が来ても、なるべくバックアップしてあげるから。あまり一人で無茶しないようにしなさい」
そんなことを震えた声で言うものだから、雛樹は面食らった。彼女は、死地に居る自分をどんな気持ちでオペレートしてきたのか。
どれだけストレスで胃を締め付け、心配を重ねていたのか。その言葉の端々に滲み出ているように感じたのだ。
昔は国を護るために戦った。しかしここでは、この海上都市では違うようだ。
あくまでも、ビジネスのために。あくまでも合理的に、任務をこなす。
それが、ここでのスタンスなのだと思い知らされた。
「で、なんなんだ? その特別報酬って」
「あなた個人へのものは置いといて、会社に対する報酬は」
「俺個人の方が聞きたい!!」
「いいから黙って聞きなさい」
「はい」
元気な怪我人ねと呟きつつ、企業連から検討されている報酬についてのことを、葉月は話し出した。
「二脚機甲の所有、および運用許可?」
「ええ。小規模民間会社にはあり得ない待遇だわ。そりゃ企業連合に直接貢献する形でのステイシス奪還作戦となったのだから、当たり前といえば当たり前だけど」
GNC所属、RBとの共闘による、攻撃性を持つドミネーターの撃破。企業連の所有するステイシスの奪還。そして、同じく所有する二脚機甲の爆破処理による機密保持行動。
そのどれもが直接的に方舟に貢献することであったことが今回、報酬として反映されているようだ。
「二脚機甲の所有許可が下りただけ? それってそんなに重要なことなのかね?」
「超重要よ。二脚機甲の使用許可が下りた時点で、受注できる仕事の量も、報酬の質も段違いになるわ。まあ、機体が用意できればの話だけど」
あくまで所有許可が下りただけであり、その保管場所および機体そのものは支給されないようだ。
「他の企業からレンタルすることもできるわ。しずるんのツテを使えば、センチュリオンテクノロジー製の型落ち機なら格安で借りられるだろうけど……まあ、その必要はないわね」
「いやいや、誰が操縦するんだ」
「祠堂君」
「俺が!? いや、まともに動かせるわけないだろ。突っ込んで爆発するだけならいくらでもやってやるけど」
「高価な機体をいちいち爆破できるわけないでしょ! ……初めは誰だってそんなもんよ。それに……二脚機甲の使用許可は私から言い出したことなの。理由があってね」
その理由は退院し、出勤した時に“見せる”と言われた。そこでその話題はひとまず幕を下ろしたのだった。
しばらく沈黙が続いて、雛樹がその空気に耐えられなくなり口を開こうとすると……。
「しずるんに言われたわ。あなたはいつも無茶をする人だって」
「うっ……、ああ。いや、一応自分の許容量を超えるようなことはしないつもりだけど」
「こんな負傷具合でキャバを超えてないって、よく言えるわね」
「申し開きの言葉もございません」
ぺこりと頭を下げた雛樹に対し、呆れたようにため息をつきながら葉月は腕を組み……。
「いい? 私の会社に雇われているってことは、あなたは会社の財産なの。勝手に怪我したり死んだりしたら許さないから」
「仮にも軍事をビジネスにする会社なんだから、ある程度の怪我や死体は仕方ないだろ?」
「詭弁なのは自覚してるわ。でもいくら軍事といっても、民間事業よ。国じゃなく、会社の主たる私に従ってもらう。……どんな危険な任務が来ても、なるべくバックアップしてあげるから。あまり一人で無茶しないようにしなさい」
そんなことを震えた声で言うものだから、雛樹は面食らった。彼女は、死地に居る自分をどんな気持ちでオペレートしてきたのか。
どれだけストレスで胃を締め付け、心配を重ねていたのか。その言葉の端々に滲み出ているように感じたのだ。
昔は国を護るために戦った。しかしここでは、この海上都市では違うようだ。
あくまでも、ビジネスのために。あくまでも合理的に、任務をこなす。
それが、ここでのスタンスなのだと思い知らされた。
「SF」の人気作品
書籍化作品
-
-
0
-
-
768
-
-
111
-
-
34
-
-
1168
-
-
337
-
-
59
-
-
26950
-
-
17
コメント