ノアの弱小PMC—アナログ元少年兵がハイテク都市の最凶生体兵器少女と働いたら
第6節8部ー結月静流の父としてー
問題はないと判断した結月恭弥は、退院しても大丈夫だと告げると……。
「ああそうだ。高部君が住居を用意したらしい。君はこれからそこに住むといい」
「俺に? なんで……」
「正確には君にじゃないらしいけどね。場所は後で伝えよう。ああ、警備ドローンをいちいち破壊されても困るとも言っていた」
「……悪い」
「僕に謝られても仕方ないけど。はっきり言って、このことが君にとっての一番の問題なのかもしれない」
「ドローンを破壊したことか? それとも、住居を与えられることが問題なのか?」
「いや……まあ、後々わかるさ」
雛樹が退院することを、娘に伝えておこうと言い出した医者に、雛樹は問う。
「恭弥さん、あんた……そうやって逐一ターシャに連絡を入れてるのか?」
「そうだよ。お願いされていてね。君が入院してから随分ここへ通っていたから、大抵のことは把握しているだろうけど」
静流は随分と自分のことを心配していたらしいことは、想像に難くはないが……。
それでも、任務の合間合間に寝る間を惜しんでまで来ていたことを聞くと心が痛くなった。
「静流は君から見て魅力的な女性かな?」
「藪から棒になんてこと聞くんだよ。親バカ話なら聞かないぞ」
「いや、そういうことじゃあないんだ。うーん、そうだな。僕はまったく魅力的だと思わない。いや、変な意味ではなく、親として心配してるんだ」
その発言を聞き、葉月はどこか不満げな表情を見せたが、さすがに相手は静流の父親。おとなしく聞いておこうと黙り込んだ。
「強い一兵士への憧れから、静流は女としての部分を半ば自分から排除している節がある。仕草や立ち振る舞いも、あまりに兵士然としたものでまったく女らしさはないよね。それでも、外見や体つきから言い寄ってくる男は後を絶たないんだ。宴席での彼女を見てたからわかっていると思うけど」
「……まあ。そうだったな。随分言い寄られてた」
「でも、彼女は男を受け付けない。拒否しているわけではなく、兵士として対等であるために馴れ合いを拒むからだよ」
雛樹はそこまで言われて、結月恭弥……静流の父親が何を言いたいのかわからなかった。
しかし、今は医師としての結月恭弥ではなく、静流の父としての顔を垣間見ているのだということは理解していた。
こうして彼自身が、雛樹に会いに来た理由の一つなのだろう。
「まあ、何が言いたいかというと……女は男を知らないと脆いということなんだけど」
「なんですかそれは!!」
さすがに耐えきれなくなった葉月が鬼の形相で食ってかかったのだが、「まあまあおちつきなさい」と静流の父親になだめられた。
「静流はあまりに色気が無い、女らしさがない、男っ気がない……はっきり言って、女性として枯れに枯れている子だ。このままでは遠くない未来、いつか潰れてしまうだろうね」
「それを俺に言ってどうしろって……」
「静流は、君には少し甘えている節があるんだよ」
「それは昔からだし、別段特別だとは思わないけどな」
「そう思っているなら、たまに張り詰めた静流の空気を抜いてやって欲しいって話だよ。さて、僕はそろそろ行こうかな、次の患者がお待ちだからね」
そう言いながら、娘思いの父親は雛樹に背を向けて病室を後にしようとする……が。
出て行く直前、ピタリと足を止めて思い出したように言う。
「もうあまり因子に頼ろうとしないほうがいいよ。内臓、筋繊維の一部が人のそれではないものに変質してきているのが確認できた。特に右腕の変異が著しい。だからと言ってどうなるかはわからないけどね……」
「……」
「ああそうだ。高部君が住居を用意したらしい。君はこれからそこに住むといい」
「俺に? なんで……」
「正確には君にじゃないらしいけどね。場所は後で伝えよう。ああ、警備ドローンをいちいち破壊されても困るとも言っていた」
「……悪い」
「僕に謝られても仕方ないけど。はっきり言って、このことが君にとっての一番の問題なのかもしれない」
「ドローンを破壊したことか? それとも、住居を与えられることが問題なのか?」
「いや……まあ、後々わかるさ」
雛樹が退院することを、娘に伝えておこうと言い出した医者に、雛樹は問う。
「恭弥さん、あんた……そうやって逐一ターシャに連絡を入れてるのか?」
「そうだよ。お願いされていてね。君が入院してから随分ここへ通っていたから、大抵のことは把握しているだろうけど」
静流は随分と自分のことを心配していたらしいことは、想像に難くはないが……。
それでも、任務の合間合間に寝る間を惜しんでまで来ていたことを聞くと心が痛くなった。
「静流は君から見て魅力的な女性かな?」
「藪から棒になんてこと聞くんだよ。親バカ話なら聞かないぞ」
「いや、そういうことじゃあないんだ。うーん、そうだな。僕はまったく魅力的だと思わない。いや、変な意味ではなく、親として心配してるんだ」
その発言を聞き、葉月はどこか不満げな表情を見せたが、さすがに相手は静流の父親。おとなしく聞いておこうと黙り込んだ。
「強い一兵士への憧れから、静流は女としての部分を半ば自分から排除している節がある。仕草や立ち振る舞いも、あまりに兵士然としたものでまったく女らしさはないよね。それでも、外見や体つきから言い寄ってくる男は後を絶たないんだ。宴席での彼女を見てたからわかっていると思うけど」
「……まあ。そうだったな。随分言い寄られてた」
「でも、彼女は男を受け付けない。拒否しているわけではなく、兵士として対等であるために馴れ合いを拒むからだよ」
雛樹はそこまで言われて、結月恭弥……静流の父親が何を言いたいのかわからなかった。
しかし、今は医師としての結月恭弥ではなく、静流の父としての顔を垣間見ているのだということは理解していた。
こうして彼自身が、雛樹に会いに来た理由の一つなのだろう。
「まあ、何が言いたいかというと……女は男を知らないと脆いということなんだけど」
「なんですかそれは!!」
さすがに耐えきれなくなった葉月が鬼の形相で食ってかかったのだが、「まあまあおちつきなさい」と静流の父親になだめられた。
「静流はあまりに色気が無い、女らしさがない、男っ気がない……はっきり言って、女性として枯れに枯れている子だ。このままでは遠くない未来、いつか潰れてしまうだろうね」
「それを俺に言ってどうしろって……」
「静流は、君には少し甘えている節があるんだよ」
「それは昔からだし、別段特別だとは思わないけどな」
「そう思っているなら、たまに張り詰めた静流の空気を抜いてやって欲しいって話だよ。さて、僕はそろそろ行こうかな、次の患者がお待ちだからね」
そう言いながら、娘思いの父親は雛樹に背を向けて病室を後にしようとする……が。
出て行く直前、ピタリと足を止めて思い出したように言う。
「もうあまり因子に頼ろうとしないほうがいいよ。内臓、筋繊維の一部が人のそれではないものに変質してきているのが確認できた。特に右腕の変異が著しい。だからと言ってどうなるかはわからないけどね……」
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