ノアの弱小PMC—アナログ元少年兵がハイテク都市の最凶生体兵器少女と働いたら

稲荷一等兵

第4部21話ー共同操縦ー

「なにしてたのぉ、しーどーおー?」
「いろいろあったんだよ。話すと長くなる」
「……ふぅん」

 ガーネットは随分怪我を負った雛樹の体と、折れた足に視線を這わせてどこか納得したようだが……。

「知らない人間と一緒にするしぃ、一人でどっかいっちゃうしぃ……挙句なぁにこのオンボロぉ」
「夜刀神のとこの事務所にあった機体だ。高部さんがある程度動かせるようにしてよこしてくれたんだけどな……。俺にはまだまともに動かせない」
「こんなのも扱えないのぉ? ふふん、だめねぇしどぉは」

 そう言って、ガーネットは我が物顔でコクピットシートの前に回り込み、雛樹の股の間にその小さなお尻を割り込ませた。
 負傷していたため痛みが走ったが、ぐっと堪え……。

「なにしてるんだよ」
「くひひ。動かし方、あたしが教えてあげるぅ」

 操縦桿を握る雛樹の手の上から、ガーネットの手が覆いかぶさった。
 随分と小さな手なのだが、どうしてだろうか。とても頼もしく感じるのは。

《ヒナキ、大丈夫ですか!?》

 そうしていると、上空から降りてきたブルーグラディウス、結月静流から通信が入った。通信用のモニターに静流が映り、肯定の返答をしようとした雛樹だったが、胸部をガーネットの後頭部で打たれて咳き込み……。

「はろぉー……青いのぉ」
《……ッ。ステイシス。なぜあなたがそこに!》
「あたしが居ちゃまずいのかしらぁ? こっちはいいからぁ、あんたは他行きなさいよ他ぁ」
《ヒナキから離れなさい……》
「やぁよ。べぇ」

 舌を出して馬鹿にした風な態度を見せられ、表情こそ冷静な様子をみせていた静流だったが、見開かれた目と瞳孔から、相当な怒りが見受けられた。
 雛樹はガーネットを黙らせて静流に状況を説明しようとするが、静流は他の通信に応対していた。
 その内容は、正体不明のグレアノイド体を撃破したならば、転覆した艦への救出を手伝ってくれというものであり、急を要するものだった。

 そのため……。

《く……雛樹、私は先に向かいます。貴方も急いでくださいね》
「ああ、わかった」
「ばいばぁい」

 ブルーグラディウスがその場を去った後、ターシャの何が気に入らないのかとガーネットに聞いたのだが……。

「いろいろと鬱陶しいのよぅ、あの青いのぉ……」
「俺の幼なじみなんだ。できるだけ仲良くしてくれ」
「やだ」

 ガキか。と、言ってしまうところだった。だが、ガーネットがここにいることで頼りになるのは事実。あまり機嫌を損ねるようなことを言うものではない。

「いーい? こんなもの感覚で動かさないとだめ。いちいち考えながらだと下手くそのままよぉ?」
「下手くそも何も、さっき初めて乗ったところだよ。教えてくれるなら基礎から頼む」
「ん、じゃあ始めはあたしの動きに合わせてぇ」

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