シスコンと姉妹と異世界と。
【第105話】帰郷⑨
「え? 何だここは?」
「どこここ?」
「ここここ?」
「ショーは何を言ってるんだ……」
「いや、だってさ」
普通にまぁ3人水着で扉開けて風呂に入った。ら、視界が開けて……。
「外じゃん!」
そう、外なのである。何故か家の風呂に入ろうと扉を開けたら外に出された。そんな状況。
「母さんは何か言ってたっけ?」
「何も言ってなかったと思うけど……」
「あぁ……」
「温泉だよなぁ……どうみても。あの時の……、箱根行った時みたいなさ」
「確かにショーの言う通りだな。なんだ、露天風呂といったか」
「そうそう」
「にしても絶景だね、お兄ちゃん」
「さすがにちょっと、寒いけどな……。入ろう?」
「うん」
「ああ」
「せーのっ」
「「「ごくらくごくらく」」」
暦は11月。外はパンイチの状態ではさすがに寒かったので湯船に。温泉入る時のマナー的な感じでこの極楽コールを教えていた。ここは比較的標高が高い温泉で、眼下に広がる盆地を一望出来る。
なんか山梨とかっぽいな……。
「あらあら、3人揃ってるのねぇ」
「お母様っ!?」
「お母さん!?」
「なっ??」
姉さんに後ろから回り込まれて目を覆われる。背中に伝わる柔らかさ……は無かった。もしもローズなら……。
「何で急に目隠し!?」
「お母様、お召し物は……」
「お風呂入るのに服なんか着ないわよぉ」
「それもそうだ」
シンプルに裸ってことなんだろう。今更母親の裸なんか見ても……なぁ、なんとも思わないだろう……多分。世間一般でももしかしたら12歳でも親と風呂に入る所もあるんじゃ? こっちは成人が一応15歳だからなんとも言えないだろうけど。
「お母さん、お酒飲んだ?」
「ちょっとだけよぉ〜」
「ちょっとにしては出来上がり過ぎじゃね?」
「確かにそうだな……。お母様、大丈夫ですか?」
「大丈夫よぉ。これくらいなんてことないわぁ〜!」
「ホントかな……」
さすがに姉さんもローズもここまでになった母さんを見たことは無いらしく苦笑い。今度タイミングがあったら父さんに聞いてみるかな。
「母さん、どんなお酒飲んだのさ?」
「若いのにもうお酒に興味があるの〜? んー、たしかぁ……、40度くらいのを〜」
「ウイスキー?」
「かなぁ? 甘めの蒸留酒だったはずぅ〜うぃ」
「じゃあ当たりだ。それをどんな飲み方したのさ」
「氷作るの面倒だったからそのままグイグイっとぉ!!」
「お母様なら氷を作るなど容易いのでは……」
「わたしでもすぐ出来ると思う……」
「ダメだこりゃ。それに飲酒した後の風呂ってのはあんまり身体に良くないんだよ」
「年寄り扱いするにゃぁあ〜」
「とりあえず、わたしがタオルを取ってこよう」
「お姉ちゃん、ありがと」
「あっ、目隠し取れた」
「あっ……」
「あらあら、お母さんの顔に何か付いてるかしらぁ?」
「いや顔には特に何も付いてないけど……」
胸にメロンが付いてますです、はい。
「え、お母さん鼻血がっ」
「あらあらあら〜?」
「しゃーない、部屋戻って母さんをソファかなんかで寝かすか。とりあえず身体拭かないと出られねえな」
「お姉ちゃん待ちだね。あっお兄ちゃんも……」
「とりあえず湯船から出そう」
「悪い、待たせた……な……」
「あ、おかえり姉さん」
「お前は自分の母親に対してまでも……」
「お兄ちゃん、鼻血が出てるの」
裸の女性を鼻血出しながら抱きかかえている様は、他人にどんな印象を与えるだろうか。考えなくてもわかる。最悪だ。
「姉さん、これは……」
「歯を食いしばれぇぁあ」
久しぶりの家族団欒は涙の味だった。
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