シスコンと姉妹と異世界と。

花牧優駿

【第85話】貸し出し権⑪(サニー編)




 「ショーくん、ちょっと上がろっか?」

 「いいっすけど、どうしたんすか?」

 「いや、ただ背中を流して欲しいなって」

 「そういう事ですか。喜んでお受けしますよお嬢様」

 「な、お、お嬢様っ!? どうしたのショーくん……」

 「いやー文化祭で皆やってたから1度言ってみたくて。ダメでしたか?」

 「嫌とかじゃないの。ただビックリしちゃって……心の準備が出来てなかったから」と椅子に座りながらサニーさんがおっしゃる。

 「……、あの〜」

 「なに?」

 「タオルの上から背中を流すというのはちょっと難しいかな〜なんて思ったりするんですけど……」

 「そ、そそそ、そうだよね☆」

 「あいや、でも、鏡あるからそれ外しちゃうと、その……」

 「……いいの」

 「え?」

 「ショーくんなら、その……、嫌じゃないから」

 「ゴクリ」と息を飲み、「でも……」

 「女の子に恥をかかせないでよ……。それとも何、ショーくんはわたしの裸を男として見たくないの?」

 「ううう」本音で「見たいです」答えた。

 「じゃあ……いいよ」

 「?」

 「ショーくんが……脱がして」

 「え、でも……」

 「ほら、みんなに気づかれる前にっ」

 「は、はひっ。失礼、します……」

 子供の頃、俺とローズが6、7歳ぐらいの頃、着替えさせてやったりしてた時はこんな風に緊張したりすることは無かったと思う。草場翔一としての人格が無かった時の自分がどう思ってたかは、もうあんまりハッキリとしていない。

 過去を思い出したあの日にショー・ヴァッハウは死に、草場翔一がこの世界にいたショーを乗っ取ったような感覚がある。学園入学前に俺と関わっていた人たちは、今の俺に対してどういった印象を持っているのか、正直怖い。

 「ショーくん、あんまり焦らさないで……」

 「す、すみません……では、いきますね」

 脇の間から手を回し留めてある部分を外す。「んっ……、あっ」少し柔らかいところに手が触れた気がしたけど、サニーさんからなんか声出てたようだけど、無心無心。無視無視。

 タオルがサニーさんの肢体から離れる。正直、ガン見した。

 「ざんねーん!! 水着でしたー!!!」

 そこに現れるは上下黒で統一されたビキニを纏ったサニーさんであった。

 「…………、ええぇぇぇぇえええ!!??」

 「ごめんねー、ショーくん期待させちゃったかな☆」

 「そりゃあ、まぁ……」

 「わたしが水着を用意したのよ〜」

 「アリスさんが?」

 「だって混浴なのは知ってたから、泊まることも考慮して人数分用意してきてたのよ。ほらみんなこっち〜」

 「賭けはお姉ちゃんの負けだね〜」

 「賭けって何のことだローズ」

 「んっとね〜、お兄ちゃんがサニーさんのタオルを捲るか捲らないかで賭けをしてたの。まぁ賭けというより予想大会って感じかな」

 「みんな知ってたわけか……」

 「そりゃ、こっそりサニーが抜け駆けしようものならエリーゼが、黙って見てるはずないじゃない」

 「アリスさんの仰る通りですね……」

 「エリーゼは、『ショーにはまだそんなことできない』って言ってたんだけどねぇ〜。やっぱり牡だもんねぇ」

 「牡って言い方しないでくださいよ。種馬やってるんじゃないんですから……」

 「で、どうだったサニー」とゾラさんがサニーさんの方を向き直って尋ねる。

 「ど、どうって言われても……。わ、わたしもこんなこと初めてだし……、色々考えちゃって、すごい緊張というかドキドキした……」

 「お前は人の弟で何を想像したと言うんだっ!」

 姉さんが勢いよくサニーさんに突撃。その結果姉さんのタオルが……。

 「「「あ」」」

 「あ」

 なんで?

 「み、見るなぁぁぁぁぁああ!!」

 「なんで、姉さんは水着を着てないのさ……」

 「そうよっ。ちゃんとサイズもぴったりなの用意したと思ったんだけど……」

 「まさかお姉ちゃん、それでお兄ちゃんのこと……」

 「そそそそ、そんなわけあるかっ! ただ、別にタオル外さなければ特に問題ないだろうと思ってて……」

 「にしても、ショーくんはそんなに慌てないんですね」

 「だってステラさん、姉さんは身内だし……。それに小さい時には一緒に風呂入ったりだってしてたからそこまで変に意識するのもアレじゃないですか……」

 「まぁ、それはそうなんだけど……」

 「ローズ、お前は水着を中に着てるか?」

 「うん。ほら」ハラリっ。

 「黒いのに眩しいぜ……」

 「ショーくん何言ってんのよ」

 「でも、なんでローズのサイズとかをアリスさんが網羅しちゃってるんですか?」

 「そりゃ寝てる間に触ったりしてるし……」

 「えっ」

 「人の部屋に侵入するだけじゃ飽き足らずそんなことしてたんすか……」

 「エリーゼのバストアップマッサージもやったげてるわ」

 「なななななな……」

 「ほ、ほらショーくん、露天風呂の方行こ? エリーゼお姉様も早くタオル巻いてくださいっ」

 姉さんが爆発する前に退避しようというサニーさんの粋な提案。でも、正直なところ日本の知識を持ち込んだバストアップマッサージなら、姉さんの類な稀な貧乳力にも打ち勝つことが出来るんじゃないのかな……。だとしたら、俺としてもありがたいような気がする。うん。アリスさんグッジョブ。



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