シスコンと姉妹と異世界と。
【第62話】眠れない夜から②
後日談というか、なんというか。
それをここでは語っていこうと思う。
まず場面としては、1泊2日の旅の中の2日目の朝、全員でワイワイとはしゃいでた時のことである。
「誰かそいつの口を塞げ!」
的な姉さんの号令というかゴーサインというかで、アリスさんが熱いキッスを、と迫ってきた。クラリスさんもだが。
「待て待て待て!!!」
と言いながら姉さんが飛び出してくる。がベッドから床への着地1歩目で足首をグキり。痛恨にも姉さんはそこで転んでしまったのだ。
あとはお察しがつくと思うが、転んだ体勢の姉さんがアリスさんにダイレクトアタック。その弾みで……ということである。結果、俺はローズのひざ枕の上で、アリスさんに押し倒されキスされるという事態となった。
「うあーたおれるー」
という棒読みの後にクラリスさんも時間差で倒れてきて、アリスさんを抑え込み離れないようにするという離れ技に出た。いや、離れないようにしてるから離れ技という訳では無いのか?
「「んんーー!!?!?」」
からかうだけでするつもりの無かったアリスさん、まさかホントにされるとは思わなかった俺。そんな2人の絶叫が響いた。
「あぁーー!!」
というローズ。膝の上で起こった事態に驚き、戦き、飛び退いた。
頭の支えがなくなり、完全にソファベッドに押し倒されて2人の可愛い女の子に囲まれる格好となった。姉さんは何も言えないまま、床から上で繰り広げられる事態にポカンとしていた。
「ショーくんに、初めて、あげちゃった……」
「責任取ってあげなきゃだな〜」
「そんなピロートークみたいな事言わないでください!」
「こんな乱暴な初めて……」
「俺がやった訳じゃ……。すみません……」
「責任を取るってことでお嫁さんにしてもらおうかな〜わたしも一緒に」
なぜクラリスさんまで一緒に……。
「ショーくん、わたしがお嫁さんじゃ嫌?」
「いや、そんなことは……」
こんな美人がお嫁さんならどんな嬉しいか……。でもなんだかんだでまだ12だから……。
「ショーくんのどんなお願いごとにも、『優しくしてね?♡』でアリスは応えてくれるよ?」
ズギューン!! ときた。アニメなら激しい効果音付きのやつだ。007も驚きのヒットっぷり。優しくしてね、を言うクラリスさんもだし、そう言ってくれるアリスさんを想像してもだし……。
「いーや、責任はわたしが取ろう。元はと言えばわたしが躓いたのが原因だ。嫁にはわたしが……」
「それは無理!!」
実の弟だからね!!
「なんだとこの!!」
判決、それは死刑だった。姉さんに殴られ意識を失い目を覚ますのに時間を要した為、朝メシを逃したあげく出発の予定が狂ったのだった。
______。
(……なんてことがあってさぁ〜)
(じゃあ結局ショー様は私の為に取っておくと約束されていたファーストキスを、アリスさんにあげたということですか!?)
(んな約束した覚えねえよ!?)
こちらはナビ子さんである。道案内から索敵、料理までなんでもござれのナビゲーター。見えないけどそこにある存在。幽霊とはまた違うんだろうけど、なんて分類なんだろうか……。妖精、とか可愛い感じで喜んでくれそうだな。
(ホント、節操の無いことこの上ないです。ショー様は私のモノだというのに……!!)
(痛くないけど往復ビンタしたり、素足で顔踏むんじゃない。あ、パンツ見えた)
(このバカーー!!)
首根っこに噛み付かれる。ナビ子の攻撃は全て通り抜けてしまうので、痛みは感じないのだが、少し心は痛む。だがワンピースから覗いた純白のソレが痛みを癒してくれた。痛くなったらすぐ……止めておこう。
(おいおい、この調子で街まで帰るのか? 流石に俺もまた疲れちまうぞ……。落馬はもうしたくないし)
(ふー。ふー。ふー)
(それに、俺はナビ子のモノになったつもりは無いんだ。せめて『お前の物は俺のもの、俺の物はお前のもの』くらいにしといてくれよ)
(『お前の物は俺のもの、俺の物は俺のもの』)
(それは何処ぞの悪ガキの物言いじゃねえか!!)
結局、今はまた行きと同じで馬車に揺られている。クラリスさんがなんだかんだでサボりになって、昼前に食事も済ませて出発出来た。馬車の手配はもちろんアリスさんが、デュボワ家御用達のタクシー的な感じでしてくれた。
とは言っても他の馬車と大して差はない。あっても片手くらいのものだ。お尻の下にクッションがあるのと、馬の脚力が違うのと、手綱を持つ人間が魔法を使えて、円錐状に馬車を囲い風の抵抗を極限まで無くしていることくらいだ。新幹線の500系のような感じらしい。
(で、どうだったんですか。初チューの感想は)
(どうってなあ……。嬉しいし申し訳ないしで……まぁ五分五分だな)
(嬉しいとか気持ち悪いですね)
(女の子と初チューで、嬉しくない奴がいるかよ!! 俺をなんだと思ってるんだよ!! 血も涙もないようなやつじゃないぞ俺……)
(狸型ロボットでしたか)
(猫型だよ! つーかドラえもんもういいわ!!)
(伝統を重んじるのはいい事ではありませんか)
(……じゃあナビ子は初チューについてどう思うんだよ)
(私の場合は感触とかがありませんので、知識としてしか知りませんね。初チューの相手と結ばれることって珍しいんですよね)
(んなこと言うなよ! ……でもそっか。いつかナビ子が実体化出来たらいいな)
(……優しくしてね?♡)
(いかがわしいことしようとはしてねーよ!!)
(ドキッとしました?)
(ま、まぁ……した)
(なら……結婚式にします? 指輪にします? 婚姻届にします? ハネムーンにします?)
(意味合い一緒じゃねえか! なんだよ選択肢がねえじゃねえか)
(おかえりなさい。わたしにします? わたしにします? わたしにします?)
(また選択肢が無いじゃねえか!!)
(選択肢はあります。ただ一択なだけで)
そんなこんなで、この痴話喧嘩というか絶妙な掛け合いというか定かではない会話は、街に帰るまで延々と続けられた。
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