シスコンと姉妹と異世界と。

花牧優駿

【第51話】下ごしらえ⑥




 「今夜泊まる宿ってどこ?」

 「向こうのさっきの所よりも大きなとこです」

 「ふーん。これまた楽しみ〜♪」

 アリスさんが昨日、自分は役に立つ、なんて言ってたけどそんな生易しいレベルじゃなかった。

 目的のミソ屋につくや否や、話が竹の宿から回ってたのか店主さんはもうペコペコしまくりだし。お代はアリスさんの実家にツケることになってたりタダだし……。いいのかそれで。

 お茶屋にしてもそうだし……。アリスさんの名前はとんでもない威力を発揮していた。

 「そろそろ泊まりの受付もやってるんじゃないかな?」

 「確かにそうかもしれないな」

 「2人とも買い物とかはもういいの?」

 「「はい……」」

 俺もローズもこう返すのが精一杯だった。買い物というより貰い物って感じで多少罪悪感すら覚える。

 「じゃショーくん、案内よろしく〜」

 「姉さんも買い物とかいいの?」

 「ああ。とくにこれといって買わなきゃいけないものとかは無いしな」

 「お姉ちゃんはもう準備万端だか痛い!」

 喋ってるのにローズまでひっぱたかれた……。ほんと距離が縮まった感じがしてなんか嬉しいな。攻撃する時は武器を持たず、超手刀までで勘弁して欲しいんだけど。って痛!

 「なんで俺まで」

 「バカにしたようなこと考えてたからだ! ローズも変なこと言うんじゃない」

 バレとる……。

 「考えてないって!」

 「ショーくんかわいそー」

 「お姉ちゃん横暴だー」

 「な、なんでわたしが悪者扱いなんだ!」

 あ、拗ねそう。

 「ここ?」

 「ここっす。ほら姉さん宿についたから落ち着いて」

 「なっ!? ……分かったよ」

 「へぇ〜おっきいねぇ」

 まぁ2度目だからあの衝撃はもう大丈夫だろうけど、やっぱちょっとケツ締めていかないと……。

 「よし、入るよ」

 「なんでそんな覚悟決めたように……」

 「いらっしゃいませ、ご主人様、お嬢様! ってお嬢様ぁぁ!!??」

 「「「お嬢様ぁ!!!???」」」

 「やっほークラリス。久しぶり〜」

 「え、えぇ!? なんでこちらに!?」

 「こっちのショーくんの付き添い。それに、わたしたちの仲なんだから敬語は止めてよ〜」

 「うん、分かった! 堅苦しいから嫌なのよね、ホント」

 「……あの、アリス、状況の説明を願いたいんだが……」

 ええ、是非ともお願いしたいところでありますな。てかナビ子が来てたメイド服と大してデザイン変わんないのな。結構目のやり場に困る。まぁそれがウケてもいるんだろうけど。

 「えっとね、こっちのおっぱいメイドがクラリス。学校入るまではわたしの専属メイドだったの。なおかつ同い歳の幼馴染み、と言ったところかな」

 「はい、ただ今紹介に預かりましたクラリス・クリスハートでございます。皆様初めまして。エリーゼ様のお話は以前から伺っていましたよ」

 「は、はぁ……。エリーゼ・ヴァッハウです」

 「同じく、ショーです」

 「同じく、ローズです」

 「はい、よろしくお願い致します」

 「ショーくん、なにか目的があってここへ来たんでしょう?」

 「あ、はい。今度の文化祭でメイド喫茶をやることになって……。で、メイド服の用意や接客対応において協力して頂けないかな、と思いました次第でございました」

 「お兄ちゃん、緊張し過ぎ。何言ってるかよく分からないよ……」

 「んー、わたし個人としては是非とも協力させて頂ければと思いますが、店長次第というところでしょうか……」

 「じゃ、ちょっと待ってて」

 そう言い残して、アリスさんは店の奥へ消えていった。

 


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