AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と焔の衣



「──と、いうわけでだ。フェニ、お前にも新装備をプレゼントだ」

「我は修業志願者以外、特に戦闘などしていないのだが……」

「そういえば、今は一部の人にはそういう特典があるんだっけ?」

「そうでもしないと、誰もミントを突破できないからな」


 そんな当の本(蟲)人は、俺のプレゼントした新しい装備にご満悦だ。
 真っ黒と言うのも味気ないので、カラーは自在に変更可能──ミントはどうやら、桃色にしたみたいだな。


「フェニも着替えてみてくれ……もちろん、見せなくてもいいぞ」

「やる前に言われると、その……考えていた自分が恥ずかしくなるのだが……」

「もちろん見たい。だが、教育的にどうかと思うからな」

「仕方ない、か……」


 眷属の中には(瞬間着装)という、装備一式の着替えを一瞬で済ませるスキルを習得した者が居た。
 それを[スキル共有]で借り受ければ、誰でも一瞬で着替えができるようになる。


「ど、どうだろうか……」

「最高だ。フェニって感じがするぞ」

「フェニ、スゴい!」


 ミントも絶賛の俺が創ったアイテム。
 揺らめく炎が羽衣のように身を包む、赤と紫でデザインされた衣装。
 紅に染まったセミミニドレス、といったたとえが最適だろうか。

 生地の先が萌えて……いや、燃えている。
 その炎が淡い半透明の生地となり、セミミニのスカートをミニスカぐらいにしていた。


「その名も──『化焔斌カエンビン』だ!」

「ご主人……投げる爆薬のような名前の服を与えられても……」

「まあ、名前はともかく性能はいいんだ。フレイムドレスとか、自分なりに名称は考えてくれていいさ」


 若干、羞恥心も混じった苦情が来る。
 あまりミニスカなど履かせないので、自分には似合わないと思っているのだろう。


「うん、やっぱりフェニによく似合っているさ。美しさが全面的に出ている分、なんだか天女みたいだし」

「フェニ、可愛い!」

「……姉上」


 生まれが自分よりも早いがとても愛らしいミントへ、フェニは何やら思うところがあるような声を漏らす。
 いやまあ、オブリとは別の意味で妖精みたいな娘だからな……。


「実際、可愛いぞ。そうなるように設計したわけだし……その丈にした甲斐があった」

「うぅっ、もう少し長くならないか?」

「焔に魔力とイメージを注げば形は自在に変えられぞ。鎧にしたり、水着になったりな」

「なんで、もっと短い方向になる……要はいつものことか」


 まあ、眷属たちはそういう技術の扱い方には充分慣れているからな。
 説明をした途端、セミミニスカドレスはいきなりロング丈まで延びてしまう。


「というか、他の部分はいいのか?」

「スカートも気にすることではなかった。ただ、ご主人のご期待と言うものに沿わぬ結果が見たかっただけだ」

「フェニ……」

「また、別の機会にでも」


 そう俺の耳元でささやくと、フェニはミントとの模擬戦を開始する。
 相手が必殺の暗殺者ということもあり、焔の形を再び変えて戦っていた。


「…………」


 耐性しゅうちしんが時と場合によって可変してしまう俺は、ただ茫然とそれを見ていることしかできなかった。


  ◆   □   ◆   □   ◆


 ミントとフェニの新装備の実証が終わる。
 フェニは何度も殺され尽くし、ミントは装備の使い心地を把握した。
 文字通り熱い闘いをしたため、二人とも満足して検証は終了する。

 ミントは第一層に帰還し、再び侵入者たちの迎撃を行う最強の守護者となった。
 そして、フェニは──


「ご主人よ、どうしたのだ? リョクやリアがデートを自慢していたが……」

「デート、というよりただ話がしたかったんだが……ユラルには、真面目な話だけで済んだしな」

「では、何もしてくれないのか……」

「うーん、俺にできることなら可能な限りやるけどさ」


 ただ、リョクはリーンの案内がしたかったからだし、リアは自国を案内したかった……そこにデートという出来事はあったものの、それがメインというわけではなかった。


「では……その──ん、んっ」

「……あいよ」


 瞳を閉じたフェニに、求められたものを提供する。
 まあ、そんな風にされたらシたくなってしまうのが、男のさがというものだ。


「ご主人は、昔ほど初心ではないな」

「ずっとそのままだなんて、ハーレムの主として失格だろ。慣れでやるつもりはないが、それでも経験は積んでいるんだろうな」

「……あの頃の、顔に羞恥心を曝け出したご主人はどこに逝ったのやら」

「あ、あれは……【色欲】に背中を押されたからであって……まあ、アレが俺にとって初めて異性に向けた告白だったことは事実だよな……うん、恥ずかしかった」


 今の俺の顔はどうなっているのだろう?
 自分的には照れた気持ちでいっぱいなんだが、{感情}によって思考は冷静だし、頬が火照るような兆候は感じない。


「恥ずかしがっているようだが、まったく表情に出ていないぞ」

「ああ、やっぱりそうだったか……フェニ、俺の気持ちは変わらない」

「急にどうした?」

「いや、なんとなくな。ハーレムは好きで、お前らみたいな造形の美女や美少女が好きだし、全然甲斐性がない」


 全部事実だ。
 眷属全員が知っていることだが、初志を思いだすためにはちょうどいい。


「それを知ったうえで、ご主人を好きになったのだろう」

「今は感情の共有は解除されたし、そのうえで好きになってもらえるように努力はしているつもりだがな……」

「ご主人のそういった気概、また想いを我らは好いているぞ」

「なら、それを維持したうえで努力を続けていかないとな」


 停滞した関係はいずれ崩壊する。
 何もしない、ということは関係が薄れるということでもあるからだ。

 そうありたくはない、眷属の望む俺というものであり続けたい。
 そのうえで、本当の俺を理解してもらいたいと願うのは【傲慢】だ。

 それでも、足掻いてもがいて諦めないで、いずれは真のハーレム王になるんだ……実際何がそうだかなんて、分からないけどな。



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