AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者とロットカップ 後篇
赤ずきんの精霊姫と狼男の護衛役を連れ、閉ざされた世界を巡っていく。
あくまで彼女が死ぬまでを再現した小さな箱庭には、明日を生きるために必要な物が全然足りていない。
おまけに断絶されているため他の街は無いし、彼女の街は僅かながらの食糧の自給と大量のワイン製造を行う街だ。
それでもワインは新たな貿易相手としてうちが引き取ったし、食糧問題も少しずつどうにかしていこうという意識を持たせられた。
何より、赤ずきんが精霊に頼んでくれるのでだいたいのことは楽だ……子供にいろいろとやらせてのんびりはできないようで、大人たちも張り切って仕事をしているぞ。
「新しい街?」
「まだ、考えているだけですけど……幸いボクの力があれば、この世界は無限に大きくできます。神様にバレると怒られますので、大幅にというわけにもいかず、少しずつしかできていませんけど」
「で、なんで新しい街を造んだよ?」
「理由は単純に、姫様のような方は一人ではないからです。終わった世界、つまり役目を果たして消える世界を繋ぎ合わせ、一つに纏め上げる……それがボクの目標なんです」
運命を司る女神によって、童話や逸話を持つ者たちが本の媒体に封じられている。
地球で物語として語られる者の場合、確実にバッドエンドで終わっている……それを拾い上げ、救済を与えたのが彼の神によるクエストなんだそうで。
実際の所は一部運命を歪曲させ、強引に悲劇になるように導いてたのだから救えない。
リアの場合と赤ずきんの場合、それらを比べた結果分かったことだ。
たとえクエストが終わろうと、条件が満たされなければ世界は消えない……俺はそうなる前にすべての世界を見つけだし、この世界と名付けた場所に繋げたいと思っていた。
「前に来た、リアさんみたいな人?」
「そうですね。彼女の国は救済を拒んだ特殊例ですが、それ以降考え方を変えたのかやり方を変えていましたね。ヴァーイに意味不明な精神侵蝕を働きかけたのも、何か理由があるのでしょう」
「……あの野郎か」
野郎じゃない、と冷静にツッコミたいが俺もそれなりに【憤怒】している対象なので好きに罵らせておく。
リオン曰く、圧倒的に神気の量に開きがあるので何もするなと言われている。
運営神と違い、長い月日を経て膨大な力を蓄えている運命神。
運営神のように世界の管理にリソースを注ぎ込むでもなく、我欲のためにすべてを使っているから本当にどうしようもない。
いくら『神殺し』の称号を振り回そうと、その隔てりを越えることはほぼ不可能だ。
そのため、やれることはそう多くない……せめてもの反抗心として、あっちがやったことに対する妨害をしているぐらいである。
閑話休題
精霊は主に、漂うものと眠っているもので分けられていた。
脈や自然が発するエネルギーに釣られ、ふらふらとしているのが漂う方。
気に入った地のエネルギーが何らかの理由で途絶え、活動休止してしまったのが眠っている方である。
「準備はいいですか、姫様?」
「うん、もちろんだよ」
赤ずきんがそういって、地に眠る精霊たちに呼びかける。
すでにユラルと勉強しているため、その言語は直接彼らに作用する精霊語。
姫としての力を持つ彼女が、魔力を対価に活性化を働きかけている。
「おおっ、本当に出てきやがった」
「そういえば、視えるのでしたね」
「テメェのダンジョンに居た精霊を喰ったらな。味が抜けてたが、まあスキルは手に入るからそれで勘弁してやるよ」
「どんどん喰べてください。なんでもしないと、いつか護衛対象に負けてしまいますよ」
赤ずきんは着実に、精霊使いとしての道を歩んでいる。
歴代(が居るか知らないが、)最強の精霊使いになることはほぼ間違いない。
一方、ヴァーイはそういった才能は無く、あくまで喰らうことで力を身に着ける。
そんな彼には第四世界を案内し、喰えるだけ喰ってもらうようにしていた。
「チッ、分かってるよ。俺だって、もっと強くなってテメェらを見返すんだからよ」
「どうぞお好きに。そのために、ランキング戦を用意したのですから」
「……テメェの所、本当に異常な奴らが多いよな。それをよく知った」
すでにランキング戦経験者のヴァーイ。
どうやら個人の部に出なかった猛者に、運悪く遭っていたようだな。
まあ、条件に勝利数とかも含んでいたし、必然と言えば必然なんだが。
「メル君、終わったよ! ここに居たみんなも、手伝ってくれるって!」
「おおっ、さすが姫様! ボクでは同じような交渉をしても、半数ぐらいは嫌がって別の場所に行ってしまうんですよね」
「そうなの? な、なら……メル君の代わりにワタシがこれからもやるよ」
「本当ですか? ……では、学業に差し支えの無い限りでお願いしたいです」
こちらの世界の住民たちも、学校型迷宮に通ってもらっている。
暇、といった彼女ではあるが平日はちゃんとお勉強をしているのだ。
「うん! それじゃあ、もっともっと頑張っていこうか!」
「はい、どこまでもおつきあいします!」
「……いや、テメェの企画だろ」
冷静なツッコミなんてスルーしておく。
可愛い少女が張り切っている、それだけで充分なんだから。
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