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山田 武

偽善者と討伐報酬



 サルワス


「報告を受けてはいるが……さすが、メルスといったところか。感謝する」

「ええ、まったくです。さすが、『青』の新たなリーダーでございます」

「……代理だ代理。変わる気はないし、そのまま続けてくれよ」


 サルワスの二大巨頭である領主と『青』の頭領に、いちおうの報告を済ませていた。
 すでに魔道具を介して、彼らの部下がそれぞれに報告をしているのだが……俺(というか眷属)の推測を混ぜた報告は、彼らに人気なので直接伝えに来たのだ。


「密偵はどうなったか、報告は届いたか?」

「情報を吐かせている最中、不自然な動きをしていたらしい。おそらく、体内に埋め込まれていた魔道具を使おうとしたのだろう……そちらの魔道具も、すでに押収したのだが」


 領主がチラつかせるのは、俺が拷問の最中に奪い取ったいくつもの魔道具だ。
 機能を停止の弾丸で停めているので大丈夫だが、本来であれば外した途端に爆発する物などもあるので要注意の品々である。


「メルスさん、そういえば例の件に関してですが……どうなっていますか?」

「ん? ああ、アレか……」

「神によって造られた『始まりの町』。あそこを統括する、あのお方に会えるとは……光栄ですよ」

「特異な人が多いから、気をつけてね。それと、手土産は甘い物だな」


 ただ、普通の甘い物で気に入るかな?
 ボスたちは、【料理神】としての俺が作ったデザートを食べてたしな……拙いか。


「なるほど、ではサルワスの名物を──」

「あ、ああー。すまない、手土産の方は、こちらで用意させてもらいたい。俺が関わっていると知らしめる分にも、俺の手で作成した品である方が分かりやすい」

「……そうですか? では、品はお任せした方がよろしいでしょうか?」

「できるのなら、持っていきたい品を先に教えてもらいたい。それをこちらであちらの好みにアレンジする」


 サルワスのお土産品も、確認している。
 だが実際にどれがいいかなど、そんなことは俺が選んではいけない。
 あくまでボスが気に入る形で加工し、その品をリーダーが届ければ良い話だ。


「──こちらの話を、進めても良いか?」

「ああ、ドナード。申し訳ありませんね」

「おっと、すまないな……聞かせてくれ」


 今度は領主様からのありがたいお話だ。
 一度思考をリセットして、話を聞くことに専念する。


「サルワスから出る祈念者プレイヤーが、奥の海域で大型種と遭遇するらしい。『エリアボス』という神の試練、ということだが……祈念者を乗せなければその魔物も現れない。メルス、どういったことか分かるかな?」

「そのままだ。祈念者は『始まりの町』を基盤に活動を行うが、少しずつ活動範囲を増やしていく……その際、移動を阻むのがその試練とやらだ」

「試練は祈念者全員が行うモノなのか?」

「ああ。一匹目は神によって、強化された化け物だ。解放を望むのであれば、大量の祈念者が必要となる。……それ以降は、それなりの強さとなる。それでも大型種には変わらないから、注意が必要だ」


 エリアボスを説明するなら、まあこんな感じであろうか。
 ナックルなんかは出る場所がズレたため、この近辺のボスとは遭遇しなかったんだろうな……ついでに倒せばよかったのに。


「彼らにとってエリアボスは、いずれ自分たちが進んで倒したい存在だ。なにせ最初に討伐を達成した祈念者には、神より祝福された品が送られるからな」

「神からだと!?」

「ああ、これは俺たちでも使えるような品となっている。……伝手で一つ持っているが、見てみるか?」

「ええ、ぜひ見てみたいですね」


 若干誘導した感がいたたまれないが……その点は気にせず、“空間収納ボックス”から懐かしいアイテムを取りだして見せる。


「これは『白蛇の水筒』という品だ。無限に水が湧き出る上、その水に状態異常を癒す効果が付与されている。ただ、水量は一日ごとに制限があるけどな」

「そのような物をどうやって……状態異常を癒すのであれば、手放すはずがないだろう」

「──何も、譲ってもらわずともアイテムは手に入るだろう?」

「……なるほど、やりようはあるのですね」


 何を誤解しているかは分からないが、譲ってもらわずとも自分で取りに行けばいい。
 そして、これから提示するのは、そうしたキャンペーンの一環だ。


「ところでお二方、そうした品が手に入る場所が一つあるんだが……」

「……この話の流れからして、まさか──」

「ああ、祈念者に頼らずとも、簡単に手に入れられる。ほら、すぐそこに居るからな」

「『エリアボス』に挑むのですか……!」


 そう、それでも構わないだろう。
 世界は同時進行で進んでいるんだから、いつまでも来ない救世主を待つよりも、己の手で掴んだ方が面白いというものだ。


「それに、一度でも解放されたエリアボスはいずれ動きだすぞ……そう、やがてお前たちだけで戦わねばならなくな。報告は、来ていると思うのだが」

「「っ……!!」」

「俺であれば、それを急速に進めることができる。さぁ、選択をしろ」


 いずれそうなってしまう、これは確定だ。
 さて、戦の準備を整えておこうか。



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