AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と自己紹介 その21



 夢現空間 居間


 二組の少年少女のスカウトを終え、ゆっくりとする予定……だったんだが──


「そんなときでも、やろうと思ったらやることにしてみました──どんどん盛り上がっていきますよ! ついに漢字表記なら三桁突入のこの企画! 第二十一回自己紹介タイムがやってまいりましたー!」

「本当、飽きないわね……」

「飽きることなんてないさ。お前たちの可愛さを、美しさを知るための時間なんだから」

「……そう」


 結局、何もしないというのも耐えられなくなったので、順番的に今回インタビューを受ける予定であった少女を引っ張り出した。


「今回のゲストはこの方! 剣を握れば何でも真っ二つ! 剣を愛し、剣に愛された猫獣人のお姫様──ティルさんでございます!」

「物凄く恥ずかしいわね……」

「実は愛剣である獣聖剣が無いと補正が受けられず、人より少しマシのステータスしか無いはずなんですけど……どうしてそれで、純粋なステータスの化け物に喰らいついていけるんでしょうね?」

「ダメージも、受けなきゃ0よ」


 そうだね、たしかに避けているよ。
 けどそれは、苛烈な剣激で攻撃させてないだけなんだからね。
 相手が攻撃すること自体、回避しているんだからな。


「なお、精神プロテクトを数十枚ほど展開してあります故、実は相手の心が読み取れる彼女も今回は俺の心は読み取れません。あくまでインタビューは公平に行わさせていただきます」

「読まなくたって、メルスの心情ぐらい分かるわよ」

「えっ、マジで?」

「ええ、それは撮影の間のお楽しみってことにしておきましょう」


 いろいろと不安だが……まあ、いいや。
 インタビューを始めるとしようか。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「問01:あなたの名前は?」

「ティルエ・リュキア・ハワードよ」


「問02:性別、出身地、生年月日は?」

「女性で、リュキア国、──年11月22日よ(年には本人の希望により、修正がかかっています)」


「問03:自分の身体特徴を描写してください」

「銀色がかった茶色の髪、黄緑色の猫の瞳。あとは猫耳と尻尾よね……触りたいでしょ」

「まあ、理性が崩壊しそうだな」


「問04:あなたの職業は?」

「【獣剣聖姫】。代々伝わる獣聖剣を振るうために与えられた役割よ」


「問05:自分の性格をできるだけ客観的に描写してください」

「そうね……真面目かしら」


「問06:あなたの趣味、特技は?」

「剣を振るうことよ」

「…………ほら、早く言え。インタビューだから正直に」

「か、可愛い動物を、撫でるのも……って、別に言わなくてもいいじゃない」


「問07:座右の銘は?」

「人剣一体、完璧に獣聖剣を扱えるようになりたいわ」

「(……えー、まだ強くなるのかよ)」

「そりゃそうよ、剣の道に果てなんてあるわけないじゃない」


「問08:自分の長所・短所は?」

「長所も短所も、他者の心が読めることね」

「……あれ? さっき、心が読まれてた気がするんだけど」

「気のせいよ」


「問09:好き・嫌いなもの/ことは?」

「好きなものは……可愛いもの。嫌いなものは熱い物かしら」

「(ね、猫舌や……!)」


「問10:ストレスの解消法は?」

「剣を振ることね」


「問11:尊敬している人は?」

「昔は初代や先代の獣剣聖を尊敬していたわね。今もそれは変わらないんだけど、それより尊敬する人ができたわ」

「へー、剣でか?」

「まっ、そう言うことね」


「問12:何かこだわりがあるもの/ことがあるならどうぞ」

「一日に一度は剣を握っているわ。そうじゃないと感覚が鈍るしね」


「問13:この世で一番大切なものは?」

「一番……私が守りたいと思ったものね。いろいろあって国がどうなってるか分からないわけだし、心配だわ」


「問14:あなたの信念は?」

「剣に身を、貴方に心を捧げる。それが私の信念よ」

「(それって信念か?)」

「……というより、もう心が読めるからって喋るのを止めないでちょうだい」


「問15:癖があったら教えてください」

「近しい関係だからこそ、つい心を読みたくなるってことがあるわね」

「(いやいや、それより何より感情の起伏に合わせて耳や尻尾が動いていることを癖とした方が──)」

「……(ニコリ)」


「問16:ボケですか? ツッコミですか?」

「ツッコミよ」


「問17:一番嬉しかったことは?」

「この剣に選ばれた時ね。自分の努力が認められた、そう心の底から喜んだわ」


「問18:一番困ったことは?」

「クエラムを封じている間、意識はほとんどないのになんとなく外の状況が分かったことかしらね。本当に何も分からなきゃ、知らぬ振りもできたのに」


「問19:お酒、飲めますか? また、もし好きなお酒の銘柄があればそれもどうぞ」

「そうね……マタタビ酒なんていいわね。味はアレだけど、体に好いし」


「問20:自分を動物に例えると?」

「猫よ、というよりそれ以外無いじゃない」


「問21:あだ名、もしくは『陰で自分はこう呼ばれてるらしい』というのがあればどうぞ」

「ティル、と呼んでもらっているわね。それとなぜか師匠って……メルスだけど」


「問22:自分の中で反省しなければならない行動があればどうぞ」

「国を守るためとはいえ、勝手に禁忌魔法を使ったのは悪かったと思っているわ」

「……というか、よく禁忌魔法を発動できたよな。スキルは発動後に習得したんだし、補正無しでだろ? 獣人族なのに、よくもまあ成功したな」

「そういう国宝があるのよ。私が使ったあの魔法だけに限って、発動のサポートをほとんどやってくれるアイテムがね」


「問23:あなたの野望、もしくは夢について一言」

「いつかあの国に戻って、あるやりたかったことをやることね」

「……内容は?」

「今は内緒よ」


「問24:自分の人生、どう思いますか?」

「剣に捧げた人生……そう思うわ」


「問25:戻ってやり直したい過去があればどうぞ」

「無いわね」


「問26:あと一週間で世界が無くなるとしたらどうしますか?」

「そんなどうしようもないことが起きるぐらいなら、剣を振りまわして足掻き続けるかしら? いい経験になりそうね」


「問27:何か悩み事はありますか?」

「少し伸び悩んでいることかしら?」


「問28:死にたいと思ったことはありますか?


「いいえ、それは無い」


「問29:生まれ変わるなら何に(どんな人に)なりたい?」

「獣聖剣に選ばれなかった私も少し気になるわね……どうなのかしら?」


「問30:理想の死に方があればどうぞ」

「剣の頂を知ってから死にたいわね」


「問31:何でもいいし誰にでもいいので、何か言いたいことがあればどうぞ」

「メルス、貴方に会えたことは私にとってとても大きな変化だった。心が読める私を受け入れ、家族として扱ってくれた。体が目当てかと思っていたけど……心の底からなんにも感じていないと気づいたのはショックだったわね。それも{感情}ってスキルのせいで、わりと男の子な反応をしているのにはこっちが照れちゃったけど。そういったこと全部を纏めて、私は嬉しかったわ」


「問32:最後に何か一言」

「だからこそ、私は剣になるわ。貴方を阻む障害を斬り裂く、一つの刃に」


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「はいカット! ティル師匠、なんだかセリフがカッコイイものばっかりだったぞ!!」

「カッコイイ……他には?」

「えっ?」

「だから、他に感想は? 嬉しいとか、こちらこそとか……それも、目当てだったとか」

「ストレートすぎるな。ティル、告白タイムじゃないから、普通にしてく──ヒィッ」


 突然獣聖剣を抜き、斬撃を飛ばしてくる。
 居間を破壊されるわけにはいかないので、全力の結界を構築してそれを防ぐ。


「ひ、人がどんな想いで言ったか……分かってるの!」

「だ、だからってそれを、ここで言わなくてもいいじゃないか!」

「う、うるさい! いいから木端微塵に切り刻まれなさい!」

「理不尽すぎる!?」


 ええ、まあ。
 地獄の鬼ごっこが始まりましたよ。



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