AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者とトゥワス浜辺
サルワス
カグが声を取り戻したことを祝って、盛大にパーティーをしてみたりもした。
誰からも反対の意見などなく、その日の食堂はカグの食べたい物がたくさん並ぶことになる。
余興を見せたりプレゼントを渡したり……みんなでカグの笑顔を満喫したよ。
そして今、そんな祭りの気分は終わりメルとしての活動中だ。
サルワスの冒険者ギルドで依頼を洗っている真っ最中である。
「新人さんたちはどうなの?」
「各々楽しそうに生産をしていますよ。たまにメルに見せたいアイテムがあると言っていましたので、今度会いに行ってください」
「へー、何を作ったんだろう?」
女子ならではのアイテム、というのも新しい作品への想像力を掻き立ててくれるんじゃないか?
未だ女子力というものは、未知の領域に存在するもので俺ごときが把握することなど烏滸がましい神秘のナニカだからな。
「時折そうして作ったアイテムを見せてくれますけど、わたしたちから見ればかなり品質の良い物ばかりですよ。さすが、メルの弟子ですね」
「弟子、って扱いでいいのかな? 私はそれでも構わないけど……気に入るかな?」
「慶びますよ、絶対に」
「喜ぶのか……なら、それでいっか」
そんな話をしながらも依頼を探していく。
「メルがパパッと船でも出してくれれば、遠洋の依頼が受けられるんですけど……」
「さすがにそれはやらないよ。船を用意するのは構わないけど、その後ますたーたちがどういう目にさらされるか、だいたいの検討がついちゃうからね」
「それもそうですけど……見てくださいよ、遠洋の依頼である程報酬が高いんですよ?」
「うわっ、本当だ。私一人で行って解決してきた方が早いんじゃ……」
遠洋に出て魔物の討伐、もしくはレアの素材を回収してくるのが主な内容だ。
似たような依頼は近海でのものもあるが、額が十倍ぐらいことなっている。
航海というのは、かなり金がかかるし命懸けだからなー。
「けどこれ、船必須じゃないんだから遠海にだけ行ければいいんでしょ? なら、魔法で足場を作っていけばいいじゃん」
「普通MPが尽きますよ。それなら船で行った方が安全に向かえます」
「むぅ……それもそうか。なら、ますたーたちも遠海に行かない依頼にしてね」
「そうですね、そうしましょうか」
結界魔法で足場を創るのもいいし、海を凍らせるという手もある……魔力さえあれば意外と選択肢は豊富なんだよ。
カグだったら、海を蒸発させるって方法でもいいのかもしれない。
このあとクラーレは、近くにある砂浜に現れる魔物を討伐する依頼を受ける。
砂浜か……澄んでいるんだろうか?
◆ □ ◆ □ ◆
トゥワス浜辺
「凄い微妙……漂流物なんかは漁られてるからほとんど綺麗だけど、魔物がなー」
「サハギン、という魔物でしょうか? ここからだとあまり鑑定が使えません」
エリアの三分の一が砂浜。
そんな場所でプレイヤーたちが、ゴミの回収を行う様子を遠くから見ながら語り合う。
時々魔半魚人が海から現れると、周辺のプレイヤーたちが即討伐して素材を回収していく……お金が欲しいようだ。
「たぶん、船の代金でも稼いでいるんじゃないかしら?」
「どういうことですか、シガン?」
「異常なスペックの生産師でも確保していない限り、プレイヤーが海を渡すためには膨大な額の金が必要になる。けど、転移門を使うのももったいないと感じる人たちがここで集まって金策を行っている、といったところでしょうね」
『おー』
シガンの推理に思わず全員で拍手をする。
気づいていた者もいただろうが、ここは場の流れで拍手喝采だ。
眼で視ずとも、なんとなく分かったよ。
人のことを好きなように言っていたことには、目を瞑っておいてやろう。
「しかし、あれだと狩りをできるんでしょうか? 現れた瞬間に倒してますよ。依頼自体はキャンセルしても問題ない常駐の物ですけど……メル、どうにかできます?」
「できるよ。海から呼びだすのと魔方陣から召喚するのと二パターンだね」
「では一つ目、呼びだす方でお願いします」
「はーい!」
移動して人気の少ない辺りに移動する。
潮の流れ的に、漂流物が流れて来づらいからだと思われる。
「それじゃあ始めるよ」
「いつでも大丈夫です」
その返事を訊いてから魔法を行使する。
調べておいたサハギンの居る辺りに、不快な音を流し込む。
同時に水の槍を生成して投擲しておく。
多少強引だが、すべて海の中で遠隔発動しているから俺に危害はない。
むしろ犯人のいる方角を見誤った魔半魚人が勝手には離れた場所に浮上するので──
「はい、あっちに出てくるよ」
そう言った直後には、ノエルが魔半魚人が現れるのを察知して戦闘を始めていく。
魔半魚人はだいたいのプレイヤーが想像する、いわゆる人に魚が融合しているような魔物だ。
その見てくれは俺同様にあまり宜しくはなく、『深きものども』などと言われてしまうのも納得の容姿である。
まあ、そんな見た目だからこそ彼女たちによってパパッと討伐された。
俺も少しだけ同情してしまうよ。
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