AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者とマグロモード
第四世界 闘王技場
「仲良くなってるみたいだな」
「師匠が騙すから、危うく断罪するとこだったんだよ」
クラーレとユウたちの元に戻ってみると、全員がユウに見つかった状態で楽しそうにお喋りしていた。話をしている顔に負の感情が隠れているようにも見えず――俺の望んだ展開と言えよう。
そしてユウはクラーレたちから離れ、俺の元へ近づいてくる。
「事実だったろ? あくまで――このメルとしてだったけどな」
「……まだそんな、可愛い姿を。師匠、僕を萌え殺す気なの?」
「お前はそれが無ければ、本当に良かったんだけどな」
昔、ショタに変身したときにも似たようなことを言っていたユウ。普通にしていれば可愛く見てもらえそうなのだが……まあ、モッフルよりは症状的にマシだと言えるけど。
「師匠、いちおう上級まで使ってたスキルを上げられたよ。でもそれ以上はこの状態じゃ難しかった」
「はいはい、お疲れ様。お礼はどうする? 食べ物でもダンジョン利用権でも良いが」
「うーん……師匠を撫でるじゃ駄目?」
「なんでそんな選択肢を作るんだよ。そこで俺がいいですよって言うと思うか?」
もちろん、眷属が……って、ユウも眷属に含まれてたや。 ならいいのか? いや、まあうん……三だが、補正はあるし。
「…………まあ、いいぞ。ただしお前はいっさいスキルとか魔法を使うなよ。俺が止めろと言ったら止めるんだからな」
「分かった! ありがとう師匠!」
手をワキワキとさせ、ジリジリと迫ってくるユウ。眷属との経験が恐怖を感じさせず、ただただ冷凍マグロのように時間を経過させることを可能にする(――“触覚遮断”)。
◆ □ ◆ □ ◆
触覚を遮断しているだけで他の感覚はまだハッキリとしている。まあ、傍から観ればレイフ°状態に見えるようにしてあるから誰も俺が念話をしていてもツッコまないだろう。
……ちなみに今ではマグロだけで通用するが、元々は冷凍マグロだったし、そもそもはやらまいかな人たち用の言葉であった。
「(まあ、例えが悪かったか。アン、超級って普通習得が難しいのか?)」
《そうですね……一般スキルの中で一番位が高いと思っていただければ、話は簡単に答えに行きつきますね》
「(じゃあ、それ以上は成長しないのか)」
《はい、(一般)スキルの限界点。これ以上の効果がほしいならば、職業補正やアイテムによる付加効果しかございません》
「(――普通は、か。可能性は無限だしな)」
例えば固有スキル、侵蝕さえなければその力を正しく獲得者に与えるだろう。
スキルを合成する、というのも手だな。
長期間スキルを併用していると、俺のように無理矢理【スキル創造士】の力で混ぜ合わせなくとも、スキルを合成できるようになるらしい。
これの例は……(平行思考)と(高速思考)とかが分かりやすいな――(並速思考)が習得できるようになったとのことだ。
「(ユウたちは共有で重ねがけでもすればいいだろうから置いておくが、実際クラーレたちにはどう対応すればいいんだろうか)」
《隠すだけでしたら、魔道具を渡せばよろしいではないですか。本来彼女たちの目的は、身を隠すことなのですし》
「(……イアのときは外套を渡すしか選択肢が無かったからな。今回は別の方法を見つけてみたかったんだよ)」
今や俺の力は自分で言うのもなんだがほぼ全能である。だが、使用者である俺が凡人であるためその一割足りとも全能性を振るえていない。
できることは少しでも増やし、できないことをできるだけ減らし、未完成な全能をより完成へ近づけるため――日々行動する。
「(【謙譲】や【希望】、【救恤】や【強欲】はさすがに使わないが、それでも誰でもできる方法があるなら試しておきたい。合成スキル……まあ、普通は複合スキルか。クラーレたちが習得できる組み合わせの中でそれが有るかどうかを探してくれ)」
《畏まりました、メルス様》
そう簡単には発見できないだろうから、後で国民たちにも協力を求めよう。新しいスキルを発見したら可能な限りで良いから報告をしてくれるようにな。
存在が分かればどうとでもなる、そうでないなら俺が直接交渉に行く。
歪んでいるのは分かるが、それでもいつか俺の手が届かない場所で何か起きたときそれに対応できる力を渡しておきたいからな。
◆ □ ◆ □ ◆
「――はい、終わり。もう手を放せ」
「ふひ~、好い触り心地だったよ。ナイス師匠!」
「何がナイスだ。撫で回されるこっちの身にもなれ。逆に撫で回したろうか」
「うん、いいよ――さぁ」
両手を広げて俺を待ち構えるユウ。
目や口やら色々と笑っているので、後ろで見ている奴らをからかっているのだろう。
「……さぁ、じゃない。一度立場ってのを教えた方がいいかな――眷属に任せて」
「そ、それは遠慮しておきます!」
「そうか? ユウ好みの可愛い子もいるにはいるが……まあ、本人がそういうのなら仕方ないな」
「そんな~!」
先程のユウのアクションは、ネタだったということで誤魔化せただろう。そう思い、背後を確認するが――。
「……むぅ」
なぜか頬を膨らませるクラーレがいた。
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