AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と三回戦



『……そうか、このハーレム野郎め』

「全く、俺のどこをどう見たらハーレムになるんだよ。そりゃあ俺も男だしな、そう言う願望が無いわけでもないさ。……ほら、もう少し待っててくれよ。まぁ望んではいるが、周りに居るのは家族だぞ。みんながみんな、わけありの奴らだしさ」

『……そうか、このハーレム野郎め』

「あれ? 聞いてなかったのか? ……どうどう、落ち着けって。俺の一体どの辺がハーレムだって言うんだよ」

『今、俺が、見ているこの辺りだよ!』


 ネロを撫でているだけなんだがな、親と子のスキンシップもこんな感じなんだし、家族でこういうことをしても構わないだろう。
 いやぁな、確かに最初の頃はビバハーレムとか言ってたけどさ、さすがに今の眷属の中に犯罪級の若さの奴もいるだろ?
 家族のイメージはライオンよっちゃんだから、嫁でも強ち間違っていないんだけどさ。
 うん、やっぱり囲うだけのハーレムより、繋がる家族の方が良い気がするよ。


『まあ、その辺は大体予想はついていたから構わない。それより大事なことがあるんだ』

「ん? 大事なことだと?」

『具体的に言うなら、お前たちの目立ちぶりに関してだな』

「…………ああ、そういうことか」

『自分でも分かっているみたいだな。さっきの香辛料と言い、魔道具の流通と言い、かなりやっているようじゃないか』

「偽善者だからな、誰かが喜ぶために動くことは当然じゃないか。魔道具だって、周りともめないように手は回してあっただろ?」


 とは言っても、犯罪者が喜ぶような魔道具の販売は行っていないぞ。
 特殊魔法の補助を行う物や、対応したスキルの習得率が向上する物とかである。

 それにほら、街の裏側とは既に話を付けてあるからな。
 他のギルドに関しては、リーンの者や眷属たちが交渉に付いて来てくれた。
 直接ギルド長と会って、受け入れた際のメリットを提示して認めさせたぞ。


『確かに、それがお前がやったことだという確たる証拠は存在していない』

「うん、消したからな。一応何も無いというのも怪しいと思ったから、少しだけ別方向に思考が回るように誘導はしておいたが」

『そうだな、確かにお前はそうした。――俺たちに全部の厄介ごとを押し付けてな!』


 うん、もしかしてこれは『ユニーク』の誰かがやったのでは? と思えるような感じにしておいた。
 【固有】スキルの持つ可能性は、侵蝕されていなければ無限に広がる。
 今までもそうして活躍してきたんだし、もう少しぐらい目立っても構わないだろうと考えたんだけどな。

 何か問題でもあったのだろうか。


『数が多過ぎるんだよ! 最初の内はさ、アイツのことだから仕方が無い、そんな風に自分を誤魔化してきたさ! でも……お前は俺の許容範囲を超え過ぎなんだよ。もう無理、これ以上は他のプレイヤーの尋問から逃れるのは無理だ! あとは自分でやれ』

「…………そっか、それは残念だ」


 本心から、俺はそう思う。
 ナックルはこう愚痴っているが、表舞台に立てない俺の代わりに頑張ってくれている。だからこそ、ご褒美も用意していたんだけどな……。


「前に行った所でさ、とある世界で最高難易度を誇ったダンジョンを見つけたんだ」

 ピクッ

「ダンジョンマスターとも交渉(物理)して、どうにか第四世界ラントスに引っ越してもらえるようにしたんだよ。だけど、さすがにそこはダンジョンマスターの住処だから、俺の許可した奴しか入れないようにしていたんだ」

 ピクピクッ

「これからもナックルが、俺の代わりに色々とやってくれていたなら……俺も感謝して、許可証を出そうと思っていたんだが――」

『おいおい、どうしてそれを早く言ってくれなかったんだよ。俺達は同じギルドの一員だしな、困ったことがあれば助けあうのが当然だよな。ハッハッハ!』

「そうかそうか! なら、もう少し溜め込んでいた案件を流させてもらおう。今の言葉は録音してあるから、逃げられると思うなよ」

『気にするなって! 俺も男だぞ? 一度決めた約束は、しっかりと守るさ!』


 肩を組んでそう言ってくるナックル。
 いやはや、本当にありがたいな。
 カナタにはとっくに説明して移動させてあるし、入場許可は幾つかのダンジョンを攻略して、Pを溜めてあれば手に入る物だったんだが……ま、言わなくても大丈夫か。


《メルス、コイツはチョロ過ぎるな》

「(言うな、少し罪悪感が湧いてくる……気がするかも知れない)」

《つまりしていないのだな》


 俺と眷属は仕事が減ってWinだし、ナックルはダンジョンを楽しめてWin。
 正にWinWinな関係と言えるだろう。
 カナタのダンジョンはそう簡単に攻略できる場所でもないだろうし、一部改造をしたから色んな意味で安全だ。

 ――ダンジョンってさ、持っているスキルで一部機能が開放されるだろ?
 俺のあの膨大な量のスキルもあって、更新したら新しく追加された機能がいっぱいだったよ。


『それじゃあ、俺はやることができたから失礼する! あ、確かカップル御用達の店があるらしいから、そこに行ってみると良いと思うぞ!』

「――もう行った」

『そうか! 分かった!』


 張り切っている様子で、この場を去っていくナックル。
 ……なんか、ゴメンよ。
 その内お詫びの品でも持っていくからさ。


『メルス、それでは……』

「もちろんだ。さぁ、一緒に行こうぜ」

『うむ!』


 俺たちもまた、賑やかな屋台通りへと歩いていった。
 今日は何があるか、楽しみだな~。


SIDE リュシル
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『さぁ、遂に三回戦もいよいよ中盤。
 今回の対戦カードは――
 魔法を、壁を、そして対戦者を吹き飛ばして来た『暴嵐』!
 戦えば戦う程に謎は深まっていく、今度は一体何をするのか『譎詭変幻』!
 ベスト4へと手を伸ばすのは果たしてどちらなのか!?』


 メルスさんの代理ということで、私も何故か闘技大会に出ることになりました。
 しかし、どうして私が闘わなければいけないのでしょうか。非戦闘職なんですが……。


開発者ディベロッパーがご褒美に釣られたからでしょう。後で私にも活躍の機会を所望します》

「……貴女を出すと、私より貴女の方がご褒美を貰える気がするから駄目です」

《そうですか、それは残念です……チッ》

「マシュー、絶対に舌打ちしましたよね!?」

《チッ……いえ、していませんよ……チッ》


 もう、ツッコむのは諦めましょう。
 マシューが優しい子だということは、開発者である私が良く分かっています。
 今回のことも、きっと私を和ませるためにやってくれたのでしょう……そうですよね?


《開発者、相手は風属性のスキルですし――ここは私の出番なのでは?》

「いえいえ、ここはメルスさんのスキル強化のためにも、解析能力がある私の出番です」


 そうして二人で会話をしながら、闘技場へと上がっていきました。


SIDE OUT
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「結局、マシューは呼ばれたみたいだな。というか、最初から呼ぶ気だったんだろうに」

『そうなのか?』

「リュシルにとって、マシューは大事な娘だからな。一緒に分かち合うんだろ」

『……そうとは思えないがな』


 相手の魔法を受け続けたリュシルは、流石に不味いと思ったのかマシューを召喚した。
 ステータスが弱体化しているしな、非戦闘職のリュシル一人だと難しかったんだろう。
 現れたマシューはもう無双、風も気にせず相手を舞台から落とした。
 ……あっけない終わり方だったな。


 ま、それでもご褒美はご褒美だ。ちゃんと二人共聞いてやらないと。

 そう考えながらも、俺の手はネロと繋げられたままだった。
 ……ずっと恋人繋ぎのままなんだよなー。



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