AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と『極塔之主』 その13
「――レヴィアタンを倒した彼女たちは、遂に九八階層へと到達した。フィールドは先程と似通っており、小島が階層中に置かれているものであったが、最も異なる点として……宙に浮いていることが挙げられるだろう」
「そこは彼女たちが戦うボスモンスター、天空獣王ジズが待ち構える天空フィールドだったのだ。前足の無いグリフォンに類似したその魔物は、激しい暴風を以って小島ごと彼女たちを吹き飛ばす戦法を取った。結界や壁を生成して風を防ぐことはできても、固定がされていない小島を守ることはできなかった。そのため彼女たちは、階層の端まで何度か飛ばされることになる」
「小島にはなぜか魔核が埋め込まれており、それに魔力を流すことである程度移動が可能となっていた。それに気付いた彼女たちは、いくつかのグループに分かれて戦闘を行う。魔力を注ぐ者、小島や仲間を守る者、小島でジズと戦う者、空を飛んで戦う者……翼を持つ者たちは、そりゃあもうアクロバティックに空を駆けて戦っていった。巨大な翼を攻撃して風を起こせないように羽をズタボロにしたり、体中の部位という部位を傷付けて弱体化させたりしてな」
「弱ったジズが咆哮を上げると、小島がジズに周辺に集まって巨大な大陸のような地形を造り上げられた。この世界の魔物は、翼の力だけで飛んでいない魔物も多い為、現在もジズは空を飛んでいる……が、最終決戦的にはこっちの方がありがたい気がするな」
「もちろんその選択は不正解だ。グループを分ける必要が無くなった眷属は、現状で出せる限界の一撃を放ち――最後の魔物は死んで逝った」
「だが、問題はこれからだ。
その後『Wifone』にジズを収納した途端……彼女たちは全力の速度で次の階層を目指した。
これには深いわけがあるが(ドドドッ)……説明している暇はなさそうだ」
『……な、なぁ。本当に大丈夫……なんだよな? 俺、殺されねぇよな?』
現在俺とカナタは、大神殿のような豪華絢爛な舞台で相対している。
黄金や宝石で装飾が行われたその舞台は、芸術品としても一品だ。
宝箱から入手したというレア装備に身を固めたカナタだが、見た目が少女なため、可愛いという感想しか出てこない。
が、流石最強ダンジョンの宝箱から出てくる装備なだけあって、メイドin俺の装備の中でもかなり上位に匹敵する物が主であった。
いつか、レンと造るダンジョンもそうなるのかな?
「だ、大丈夫だろ。お前自体はほらっ、何もしてない……わけだ……し……あっ」
『お、おいっ。何だよその嫌な予感だらけのその間は!』
「……スライム(ボソッ)」
『うぐっ』
「触手、クトゥルー、ぬるぬる、ダメ絶対……(ボソボソ)」
『……お、俺、殺されねぇよな?』
罪状を呟いていくと、顔面蒼白な状態で怯えていく。
……確かに、あの無双を見た後ともなれば恐怖だよな~。
「ま、何があっても俺が説得するさ。……カナタがそう思ってくれているかどうかは別にしてもさ、俺たち……友達、だろ?」
『メルス……。そうだよな! 俺たち、親友だよな!!』
え? いや、親友とまでは言ってないんだが……まあ、友達いない歴=歩んだ人生の俺には嬉しいことだから、否定はしなくてもいいか。
「そうだな。あ、でも、親友って言葉に盾にして、調子に乗ったらたぶん殺されるぞ」
『分かってるって。初めての親友を利用するなんて、そんな酷いことするわけないじゃないか♪』
……今のセリフ、見た目が少女だったから良かったけど、もし男のままでやられていたら……ウプッ。
そんな会話をしていると、ついに眷属たちが個の階層へとやってきた。
激しい移動音と共に、最初に辿り着いたのは――。
『やった~、一番乗り~!』
「……えっと、おめでとうだな――ディオ」
一番に辿り着いたのは、{多重存在}によって創られた少女ディオである。
色だけ説明するならば、オレンジ色の髪と瞳を持っているぞ(別に石仮面や吸血鬼、幽波紋とは関係ないからな)。
他の娘たちもこの階層へと到達するが、皆が皆、悔しさを感じ取れるアクションをしている。
とりあえずカナタに話をつけ、ディオの元へと向かう。
『――ッ! メ、メルス様!? あ、ありがたきお言葉、感謝致します』
「別に、そんなに硬い言葉を使わなくても良いんだぞ。ほら、さっきみたいに伸ばしてくれても構わないからさ」
『で、ですが、それではメルス様への敬意というものが――』
「う~ん、俺には敬われる価値なんてないと思うが、それを言うと周りに怒られるしな~(……よし、なら二人きりの時、素のままでいてくれよ)」
『は、はい! 分かりました!!』
最後の言葉は念入りに偽装したから、多分他の眷属たちには分からないだろう。
秘密の一つや二つぐらい、彼女にも作ってあげたかったんだ。
『……そ、それでですねメルス様。れ、例のアレなのですが――』
「それに関してはのちほどだ。今は……親友との決着をつけさせてくれ」
軽くディオを撫でた後、再びカナタの待つ舞台へと上がる。
「――待たせたな。これがダンジョンバトル最後の決戦だ」
『あぁ、分かっているさ。先に相手に参ったと言わせた方が勝ち……これで良いよな』
「それで充分だ。死なせないってルールならなんでもいい――ドゥル、セット"天"を送ってくれ!」
『仰せのままに、我が王』
入口で何かをやっていたドゥルは、俺の言葉を聞いて、頼んだ装備を俺の周囲に召喚してくれる。
"着装"と念じると、それらは一瞬の内に俺の身を包む。
――さて、どうなることやら。
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