AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と放映試合 その08



 残りMPは七割……八割になった。
 浴衣状態とはいえ、俺が着ているのは【怠惰】の魔武具である。
 そのスキルの一つ(MP自然回復・極)がとても勤勉に働くため、MPに関する悩みは持たなくて良いみたいだな。
 ……と、いうわけで大技いってみよう!

(――"神鉄鉱壁・多重/常駐/広範/極大")


 最大MPの三割程を一気に消費し、周りにある溝を中心として円を十字に四分するような強固な壁を築き上げる。
 <広範魔法>や<極大魔法>が使われており、この壁を超えることはほぼ不可能という程の高さになっている(超えようと隙を見せた途端に、俺が直接倒しに向かうからな)。

(――"全能強化・不明""限界踏破""合氣闘法")

 色々な強化法を行い、最後の準備を整えていく。
 "氣闘法"は龍氣や鬼氣はもちろんのこと、神氣や聖氣や邪氣も練り込んでいく。
 反発する力が体の中で暴走しようとするけれども、全て抑え付けて整えていった。
 ――どうせ反発するなら、有効的に使ってやろうじゃないか。

 再びギーの形状が変わり、全てを貫けるような矛――"霧遵"へとなる。
 実はこれ、"夢現返し"の消費MPも抑えられるんだよ。
 (矛盾理論)と似たような効果だからかな。


「んじゃまあ、俺が向かわない奴らの牽制は頼んだぞ!」

《《《《《了解!》》》》》


 よし、早速行くか。
 俺は(透視眼)で見つけた彼女の元へ、(転移眼)で移動する。
 あ、カメラ大丈夫かな?


  ◆   □   ◆   □   ◆

「――ご安心くださいメルス様。私が持っていたカメラの他にも、不可視の状態であらゆる所に設置してありますので」

「急にどうしたの?」

「いえ、メルス様がカメラの心配をなさっていましたので、ご説明をと」

「こういう時の盗聴って良いのかな?」

「もう半ば割り切っておられますので」

  ◆   □   ◆   □   ◆

「一番最初に向かったのは……ミシェルの所だね」

「恐らく、危機察知能力が一番高い彼女の元へ自分が向かうことで、武具っ娘たちが行おうとすることを成功させたいのでしょう。先程の攻撃も、彼女が一番最初に回避行動を取り始めておりましたし」

「だけど、メルス自身が行ってもそれは変わらないんじゃ……って、凄ッ!」

「ミシェル様は聖迅と邪迅を器用に使い分けて、矛による攻撃を防いでますね。槍に聖と邪の力を籠め、武技を行使して流すように捌いております」

「今さらだけど、聖迅と邪迅の効果ってどう違うの?」

「聖迅はよくある魔に属するものへの特攻効果にプラスして、攻撃が当たった際にHPが回復します。邪迅は逆に光に属する者への特攻効果にプラスして、攻撃が当たった際に状態異常をたまに発生させます」

「リスクとかは?」

「本来ならば、身の丈に合わないそれらを使うと色々と問題があるのですが……彼女は勇者と魔王の娘ですので、特に悪影響になる効果がありません」

「一応デメリットも教えて。ちょっと使ってみたくなったから!」

「……あまりお勧めはしませんよ。
 聖迅の場合は、一定以上の信仰力か加護、または神聖系統に属するスキルが無ければ――狂信者になります」

「怖ッ! どうしてそんなことに!?」

「聖なる力を使うなら、それ相応に神を崇拝しろということです。ミシェル様はそれを自分の<勇魔王者>で、メルス様は膨大な数の加護でクリアしています」

「えっと、……メルスの守護? だけじゃダメなの?」

「まだメルス様の神としての格は低いものですので、上級神になられればきっと、アイリス様も条件は達成できます」

「メルスが神ってのもあんまり信じられないけどね。それじゃあ、邪迅は?」

「身近に遭える神様ですから。
 邪迅の場合――MIN値が低い者が使うと狂います。それだけです」

「……ちなみに、どれくらいが基準なの?」

「そうですね、簡単に例えますと……百アイリス様と言ったところでしょうか」

「私のMIN値が確か――だったから……全然届かないじゃん! 二人共そんなにMIN値が高いの!?」

「ミシェル様は<勇魔王者>の効果で条件を下げておりますし、彼女自身のMIN値もかつての経験からかなり高いです。メルス様は私たちの称号で強化されているからです……それと」

「……と?」

「一番の理由は{感情}にあると思われます。
 恐らくメルス様の精神に異常が起きないような効果があるのかと。
 アイリス様、貴女は魔物を殺すことに忌避感を感じますか?」

「え? まあ、生き物を殺すわけだしね。最初の頃は躊躇ったりもしたよ」

「――メルス様には、それが全くありませんでした。記憶の中にメルス様がそれを躊躇わない理由がありませんので、恐らくはそうかとわたしたちは考えています」

「ゲーム感覚だから、とかじゃなくて?」

「そうであったとしても、少しは違和感を感じるはずです……が、メルス様の場合、それが日常における行動と言わんばかりに振舞っておいでなのです。一応は本人にも伝えてはありますが、あまり気にしていらっしゃらない様子でした。今聞いていらっしゃいますので、ちょうどいい機会だと思い言いました」

「う~ん難しい話だね……って、いつの間にか戦闘が終わってる」

「槍と矛の突き合いでしたが、やはり斬ることもできる矛の方が有利でしたね」

「……というか、盾も一緒にくっついてるんだから、実質三パターンの選択があるんだよね。斬るか突くか防ぐかで」

「戦闘シーンは見ながら話していたので理解しています。闘いの動きが速すぎて理解できなかった皆様に、簡単に二人の行ったことを説明しますと――

・激しい突き合い
   ↓
・一瞬の隙を突いてメルス様が盾で槍を弾く
   ↓
・踏鞴をミシェル様をメルス様が一突き

 ――と言った感じでしょうか?」

「大体そんな感じだったね」

  ◆   □   ◆   □   ◆


「……いやいや、適当過ぎないか?」


 危なかった。
 消えたミシェルのことを思い返しながら、そう考える。
 初めて・・・使う槍を、まさか俺を追い詰める程に使いこなすとは……恐ろしや、血統。
 最終的には"霧遵"の盾としての機能を使って倒すことができたが、普通の矛を使ってたら……負けてたのは俺かもしれないな。

 さて、次は誰を倒そうかな?



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