AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と地中探索 後篇



≪警告:ここから先は特区に指定されている区画です
 一般の方は立ち入ることが許されておりません
 これ以上進む場合、警備のものが動きます
 一般の方は直ちに後退を、関係者は通行証の提示をお願いします≫


 先程の警告は俺にそう告げていた。
 ……本当、文明が発達してるよな~。


《それで、メルスはどうするんだい?》

「いや、進むしかないだろう。これだけ厳重な警備を想定していたんだからこそ、その先に目的のものがあるってもんだよ。ドゥル、雷属性の武器を用意してくれ!」

《仰せのままに、我が王。"偽・御雷御魂"を転送します》

「おう、ありがとな」


 建御雷タケミカヅチという神が日本では知られている。
 軍神や弓神、海上交通の神としても信仰されているその神において、主に知られているのは雷神や剣神としての姿であろう。

 名前の『ミカヅチ』は雷を敬い『ミ』を付けた名前――『ミ・イカヅチ』が短縮化されたものである。
 そのことから、雷神としての姿は理解できるよな。

 ――では、剣神としての姿は?
 それは、別名を聞けば分かると思う。

 建御雷の別名は建布都神タケフツノカミ、あるいはトヨ布都神である。
 そう、かつて俺が使った『偽・布都御魂』と同様に、『布都』という物を断ち斬る際の擬態語なのだ。

 さて、何故俺がそれを説明してたのか……それはその二つの刀剣の違いについて、製作者として少し語りたかったからである(ま、パクリだけどな)。

 先程語った布都神としての姿は、建御雷が持つ姿では無かったとされる。
『古事記』に記された建御雷の別名がそう記載されていたため、現代においても布都神としての姿を知られているのだ(むしろ、布都御魂剣が建御雷の化身ともされている程だ)。

 そんな誤解もあったのだが、それでも信仰されていることは間違いない。
 しかし、建御雷が剣神であったとしても、雷神としての力が剣自体と結び付くということは無かった。

 ……というわけで、雷神としての力を籠めた剣を創り上げてみたのだ。


 布都御魂には、その神話通りの力――浄化と鼓舞の力を籠めて創り上げた。
 そして、御雷御魂にh《話が長い!》


「えー、ちゃんと言わせろよ~」


 確かに熱く語り過ぎたな。
 俺の手には、布都御魂と類似した刀が握り締められている。
 長さは同じく85cmで、刃側に湾曲している片刃の鉄刀だ。
 少し違うのは柄頭についているのが、環頭では無く稲妻の形をしたオブジェクトということだ。

 そこからは時折バチバチッといった音やエフェクトが発生して刀身を光らせ、ロマン武器感をアピールしている。

 ――元ネタはある代物だが、別におっさんの顔が剣に付いているわけでは無いし、完全なパクリというわけでも無い。
 ……うん、合法だよな。


 そんなことを考えていると、まだ一歩も前に進んでいないというのに、どこからか再び無機質な声が聞こえてくる。


≪一定時間内での退避を確認できません
 通行証の発信も感知できません
 武器所持による破壊行為と推定されます
 ――侵入者と定義します
 これより侵入者の排除を行います、周囲の者は速やかに避難をしてください≫


 この言葉を聞き終ると同時に、周囲から何かがやって来る音が知覚できる。


「……うん、やっぱり敵はアレみたいだな」

《こういった時、君の世界では大体出てくるのはアレだしね!》


 俺とリアは互いに意見を交わすが、リアも現れる敵に関しては同意見のようだ。

 でも、妙にワクワクしている気がするな。
 ま、今はそれより先に、準備をしておかないと。

 ガシャン ガシャン ガシャン ガシャン

 ステータスに補正を掛けながらその時を待つと、次第に音がはっきりと聞こえてくる。

 機動音というか、モーターが動いて鳴るというか……まぁ、ロボットだよ。
 そう、ロボットが俺の目の先には、大量に立ち並んでいた。

(――"鑑定眼")

SR:TYPE―α Lv??
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SR:TYPE―β Lv??
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SR:TYPE―γ Lv??
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SR:TYPE―ω Lv??
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 相手は4種類の機兵達だな。
 見た感じ、手に――αアルファが棒を、βベータが盾を、γガンマが銃を、ωオメガがそれら全てを束ねたような武器を持っている。
 ωの持つ一体型の武器は、ランタン・シールドのような形状をしているので、持つというより填めるって感じだな。


《メルスメルス! ほら、機械だよ!》

「う、うん。まあ、そうだな」

《それよりメルス、何台か鹵獲してくれ! 嗚呼、ついにぼくもロボットに触れられるんだね!》

「ロボット……というより機械なら俺でも一応作ってただろ。何が違うんだ?」

《君の造るロボットは……完璧過ぎてぼくの手の入れようが何もないんだよ。だけど、こういうロボットなら、きっと改造できる!》


 ――お姫様がロボットにハマってました。
 理由は仮想の地球で遊んだからだとは思うが、いつの間にここまで思いを積もらせていたとは……。

 やっぱり、『騎士達と魔法英語読み』は読ませない方が良かったのかな?


《君も忙しいからね。わざわざぼくのためにロボットを作ってもらうわけにもいかないしね……》

「いや、お前たちのためならいくらでも作ったんだがな」

《そういうことを言うから、ぼくは欲しいと言わなかったんだよ。君には君がやらなければいけないことがある。でもそれは、ぼくのために何かを作ることじゃない。――君の重荷にはなりたくないんだよ》

「リア……話が重い」

《メルス。君はいつもそうやって話を逸らそうとする。君の献身的な行動はとても嬉しいけど、それはぼくたちを駄目にするんだよ》

「……ハァ、ちょっと待っててくれ。今は先にロボットをどうにかしよう」


 目の前のロボットたちは、いつの間にか武器を構えて攻撃態勢に移っていた。

『偽・御雷御魂』を一振りし、地面に稲妻を発生させる。
 ……うん、バッチリだ。


「リア、その考えは合っているが間違っている。今からそれをゆっくり話し合おうぜ」


 ロボットの動きを窺いながら、俺はそうリアに告げる。



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