AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と『覇導劉帝』 その03



(――"牙点竜犀"!)

 矛を捻るように前に突くと、ドラゴンの鱗が一部欠ける。
 その痛みを煩わしいと感じたのか、前方を爪で切り裂いていく。

(――"転移眼")

 俺の元へ爪が来る前に転移を行い、その範囲から離脱する。
 ……が、ドラゴンはすぐに俺の元まで飛んで来て、何度も何度も爪を振るってくる。

(――"瞬脚""テレポート""空間転移")

 (転移眼)ばかりを使ってはいられない。
 僅かながらにだが、発動の際にリキャストタイムが必要だからである。
 ……なのでそこら辺を計算しながら、ドラゴンの攻撃を避け続ける。

 GYAAAAAAAAAAA!!

「くっ、面倒だな(――"光迅槍")」


 回避が追い付かなくなったため、【勇者】の力を発動させて爪を弾く。
 酷く重い衝撃が体に掛かると、耳にはとても鈍い音が入ってくる。
 腕が飛ばされたかと錯覚してしまう程、ドラゴンのパワーは凄まじかった。

 即座に【物体再成】で肉体を元に戻して、リキャストタイムの終了した(転移眼)で場所の変更を行う。


「矛のデータはあんまり無いからな~。そろそろエラーでも起きそうだ。その前に解析を終わらせてほしいところだな」

 GURRRRRRRRR……

「……間に合うかな?」


 ドラゴンは、体内の魔力を口内に溜め込み始める。
 俺も負けじと矛に力を集中させて、次に来るであろう攻撃を迎え撃つ準備をする。

 GUYAAAAAAAAA!! 「――"貫通槍撃"!」

 放たれた息吹ブレスを、貫くことに特化した槍の武技で穿つ。
 高熱が全身に浴びせ掛けれらるが、結界でそれを防ぎ、魔法で冷却していく。


「う、うぉおおおおおおおおおおお!!」


 普段は上げることの無い叫びを力に変え、息吹ブレスの威力を拡散させていく。
 ……まあ、咆哮系のスキルも同時に発動させているから、能力値の方もちょっとだけ増えるんだけどな。

 その微力もあり、どうにか俺一人が潜る分ぐらいの穴が生まれた。
 ドラゴンには攻撃が届かなかったが、飛んでくる残滓で魔力の解析ができる。


「"縛れ、グレイプニル"(――"拘塞")」


 腰周りに巻き付けていた『グレイプニル』と、(縛鎖術)の武技を発動させてドラゴンの体を縛りあげる。

 魔力を解析していたため、ドラゴンが逃げようとしても追尾して捉えることができた。


『GYAAAAAAAAAAAAAぁ!』


 このときドラゴンは叫ぶことで拘束をすぐに解いたのだが、咆哮の最後の辺りに若干の違和感を感じた。
 改めてドラゴンを注視すると、狂っていた瞳に、僅かながらに光が灯っている。

 これは……いや、まだ確信が無い。
 ちゃんと確認をしなければ。

(――"不可視の鉤爪")

 その名の通り見ることのできない幾多の鉤爪が、ドラゴンに襲い掛かる。
 精密な操作を行って、鉤爪を魔力で強化した後――引っ掻きまくった。


『GYAAAAAAAAあぁ!』


 見えざる龍の爪によって鱗を傷付けられたドラゴンは再び息吹を放ち、向かって来る見えないはずの鉤爪を消し去っていく。
 見えなくとも、確かに痛みは感じる。
 ならば在る、だから息吹で消し去ろうというシンプルなやり方だ。

 その選択に感心しているとここで、ドゥルからの念話が入ってくる。


《我が王、解析が完了しました》

「(おっ、やっとできたか。して結果は?)」

《ステータスの情報は必要ですか? 不完全ですが、ある程度なら……》

「(まあ、分かってるならほしいな。俺がやったら確認できなかったし)」


 チャロの時からなのだが、(鑑定眼)が効き辛くなっている。
 相手が(神氣)を使えるからだと俺は思っているが、もしかしたら俺の解析能力のLv不足かもしれないな。


《では、送りますね――》


 ドゥルがそう言うと、頭の中にドラゴンのステータスが浮かんできた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ステータス
名前:シュリュ=ドラガオン (女)
種族:英霊Lv??
職業:<武芸覇者>Lv?? ・<元■帝> Lv-

状態異常:狂勇者ベルセルク

 HP:??????/?????? 
 MP:??????/?????? 
 AP:??????/?????? 

 STR:??????/+30000/
 VIT:??????/+30000/
 AGI:??????/+30000/
 DEX:?????/+30000/
 INT:?????/+30000/
 LUC:???/-100/

/状態異常/

スキル
Lv有り
(生活魔法)(禁忌魔法)(魔纏化)(空間把握)
(物理加速)(物理加速)(行動予測)(身体超化)
(魔素支配)(王族礼儀)(帝王の意力)(超解析)
(超級隠蔽)(軍団指揮)(音速飛行)(躯幹強化)
(並列行動)(無詠唱)(龍殺し)(大物喰らい)
……????????????????????????????????

Lv無し
(種族限界突破)(物理限界突破)(全魔法適性)
(低位魔法完全無効)(低位武技完全無効)
……????????????????????????????????

固有/伝説/夢幻
<武芸覇者>:武術系スキルの頂点の一つ
<元■帝>:詳細不明
【乱神狂武】:狂っている原因

〔祝福〕
〔(竜神の加護)(辰神の加護)(龍神の加護)
 (破壊神の加護)(戦神の加護)(武神の加護)
 (軍神の加護)〕

〔呪縛〕
〔(理法神の呪縛)〕

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「(うわー、ドゥル。どうせバグってるなら、俺が絶望しないスキルを並べてくれよ。こんなスキルばっかり見せられたら、やる気が一気にガタ落ちだよ)」


 能力値は殆どが6桁、スキルは強そうなものばかり。
 しかも種族や職業も厨二病患者が使いそうなぐらいカッコイイ名前のヤツ……どうしようも無い気がしてきた。


《我が王。強化中の今ならば同格であると思われますし、ステータスが戦闘の全てではありません》

「(いや、分かるよ。チャロも6桁だったし、ステータスはソイツが使える最大の力なだけで、フルには使えないことはさ。だけど、さすがにコレは勝てないだろ~)」

《ですから、狂っている原因を探らせたのではないのですか?》

「(ああ、一応最初はそのつもりだったんだけど……多分無理だ)」

《……と、申しますと?》


 ドゥルはそう訊いてくる。
 うん、俺も戦わずして勝ちたかったんだけど、絶対にドラゴン――シュリュは許してくれないだろうよ。


「(――だって、アイツ戦闘狂だもん!)」


 ダメージを与えられる毎に、だんだんと意識を取り戻していき、牙を剥き出しにしながら口角を上げていく姿。
 それを見て、俺はそう確信したよ。



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