AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者とコンバットブル
聖なる力は、魔なるものへと絶大な影響を与えた。
例えそれが自分で掴んだものでなくても、ただその力は魔を打ち払うため、その性質を機能させ続ける。
(――"銀の聖弾")
魔法で生成された銀の魔弾に(聖氣)を籠めただけの代物だが、浄化というのが実際にできるこの世界において、それはかなりの威力になっているのだ。
聖獣の人化状態――聖獣人状態で無双を始めたんだが……子鬼や兎に関係無く、弾一発で倒せている。
ま、ステータスの所為というのが、一番の理由なんだがな。
「二人共、何かおかしい場所はあったか?」
《ううん、特には無かったよ》
《僕も特には……申し訳ありません》
「……そうか」
銃形態のグラとセイに訊いても、やはり分からないようだ。
今の今まで無双をしていても、未だに特殊フィールドは見つかっていない。
だいぶ徘徊しているから、まだ捜していない所なんて後少ししかないんだがな。
【聖獣王】を完全にものにするにはまだ時間も掛かるから、戦闘経験を積み続けていくとしようか。
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草原の魔物を狩り尽くした結果、(聖獣王の咆哮/威圧)(聖活気)を新たに習得した。
突然だが、武具っ娘たちは日々成長を遂げている。
今の俺の異常なステータスを、1.8倍した能力値の持ち主だ。
そんな彼女たちは日々模擬戦を行って鍛え合っているからか、成長系のスキルも働き、未開放だったスキルも少しずつ解放され始めている。
(――"命喰弾生成""時弾生成・七")
グラは生命力を直接削り取る弾丸を作れるようになり、セイは対象の時間を止められるようになった。
他の眷属がそんな感じで強力なスキルを使う姿も、一応模擬戦で見たことがあるが……かなり効果がえげつなかった。
ま、それについては置いておこう。
「全然見つからないな……条件が違った? まだ一度も見つかってないんだからその線もありえるにはありえるが、グーが俺に嘘を吐く筈も無いし吐いていたら吐いていたで俺の心がズタボロになるし……どうするか……」
傍から見ると一人事を呟く危ない人であるが、どうせ盗聴している眷属たちが何かに気付いてくれると思い、特殊思考内で纏まった考えを唱えていく。
「リアの居た結界にも無かったし、魔物を狩り尽くしても特に変化は無い。フィールドに変化を齎しそうそうなのはただ一つ――」
一度息を溜めてから、再び口に出す。
「――エリアボス。お前達は本当はとっくに気付いていたんだろうが、親切に待っていてくれたんだと勝手に思っておくよ。俺自身で辿り着いた方がなんか、こう……すっきりするしな。こういった時創作物なら、エリアボスが奥地に行っても現れなかった場合、出現する条件なんて大体決まっている――」
ズシン ズシン
俺の予想を裏付けるように、何かがこちらにやって来る足音が聞こえる。
「――フィールド上の魔物全てを狩り尽くした時……だ……あぁ」
GUAAAAAAAAAAAAAAAAA!!
俺の振り返ったその先には、化物がいた。
黒い毛皮で身を包み、爛々と輝く緋色の目で俺を睨み付けるその魔物は、かつて出会った一匹の暴れ猪を思い出させる。
だが、その魔物は猪では無い。
俺を突き刺さんとばかりにそそり立つは、牙では無く角。
頭から生えたそれは、前にでは無く横へと伸びている。
長い尻尾を振り回し、ビシバシと空気を切る音がここまで届いてきた。
コンバットブル・モルタル Lv70
エリアボス アクティブ
地上 格上
――(鑑定眼)の結果、こういったステータスが表示される。
ブル――つまり目の前のこの魔物は牛だといることだ。
「今の俺でも格上の出現って、ここの強者よりは苦戦しないと思うけど、俺自身で見つけて覚悟を決めてなきゃ逃げたくもなるわな」
俺が{他力本願}になればこの戦いもまた、すぐに決着が付くのだろう。
前に戦った憤怒猪のときは、自分で決めたルールも守れぬままに『イニジオン』を使って勝利した。
今回もまた、誰かに頼ることで勝つことが何かに負けるということになる……そう思えていたのだろう。
「グラ、セイ。力を貸してくれ」
《おっけー!》《はい!》
(――"他力本願・戦闘経験")
人には癖というものがある。
一つの行動ごとに手を振ったり呼吸をしたり、行動のブレであったり……一人一人異なるが、必ず一つは存在するという。
"他力本願・戦闘経験"は、眷属が集めた戦闘の記録から作られた、最適な戦い方を強制的に俺に強いるスキルだ。
体の仕組みを考えずにただ勝つためだけの最適解を取るので、肉体へのダメージはキツイものではあるがな。
――昔の俺はそれに頼ることすら少々後ろめたいことだと思っていたが、さすがに反省した。
折角創ってくれたんだ、有意義に使ってやるのが一番だよな。
「――と、いうワケだ。一瞬で倒させてもらうからな」
GUAAAAAAAAAAAA!!
俺のその言葉に反応してか、牛は目を血走らせて咆哮を上げる。
「行くぜ、はなっからフルスピードだ!」
(――"時弾生成・一")
時間を加速させ、俺は牛へと戦闘を挑んでいく。
六十秒後
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
≪最果ての草原の"コンバットブル・モルタル"が討伐されました≫
《初討伐称号『ブルスレイヤー』を入手しました》
《ソロ初討伐称号『ブルスレイヤー・ソロ』を入手しました》
《初討伐報酬を"牧畜の手袋"入手しました》
《ソロ初討伐報酬"豊穣牛の卵"を入手しました》
≪この放送の全ては秘匿されます≫
《ごしゅじんさまー、見つけたよー》
《結界の反応がありました。このフィールドに存在する丘陵の木の樹洞が、恐らく入口かと思われます》
「お、ありがとうな二人共」
よし、牛も倒して収納も終わったし、早速行ってみるとするか。
俺は遂に見つけた目的の地へ、ゆっくりと進んでいった。
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