AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者なしのダンジョンイベント その10
難易度九 準強者の巣窟
このダンジョンは、最強ギルドと称された者達が造り上げたダンジョンである。
その名が轟き崇拝にも似た感情を抱かれているため、プレイヤーたちはそこに向かうこともなく、攻め入られる筈など無い。
だが、現在そのダンジョンの製作者は、ある者からの使いへの対応に追われていた。
「……なるほど、色々と大変そうだな」
「我が主は、そこまで苦労した様子を見せないから心配になるのだ。一言でも言ってくれれば、全眷属で行動を起こすのだが……」
「……そ、それはそれで、形が変わりそうだから、予め連絡をしてほしいです」
「うむ、承知した」
使いの者は仕える主から伝えるように言われたことを、ギルドの主に伝えに来たのだ。
「しかし、まさかここに直接来るとは。いきなり侵入者が来たから、戦闘準備もしていなくてかなり焦ってしまいました。なんせ、仕掛けていた罠を全部無視されましたので」
「すまんな。眷属の中には情報解析を得意とする者がいてな、主が一度でもあった者の魔力波は全て分かるらしい。今回は主の加入しているギルドの者たちのダンジョンであったが故に、壊すワケにもいかず、こうして転位してきた次第だ」
「まあ、アイツの眷属たちの強さは、前回のイベントの時に良く分かっていたつもりですので。……あのときの火玉は、今でも覚えています」
「……フェニのアレか。今のフェニならば、アレの十倍は余裕で放てるであろうな」
「…………マジか」
「マジだ」
それはもちろん、メルスの[眷軍強化]と(再生の焔)の影響である。
『超越者』――この称号を持つ者は、必ずという程に強大な力を有している。
そんな称号の持ち主のステータスを九割受け継ぎ、死ねば死ぬ程ステータスが強化されるスキルの持ち主が、火玉を発動させた場合など……メラをメラゾーマ――いや、メラガイアと間違えるぐらいには強大な物となるであろう。
「……では、そろそろ本題に移るとしよう」
「本題?」
「――無論、模擬戦だ」
緑色の髪を持つ女性(?)は、ギルドの長にそう宣言した。
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難易度八 闘剣嵐武
嵐が荒れ狂う草原で、男達は雨に濡れながらも警備を続けている。
「……おいおい聞いたか? 難易度一~三までのダンジョン全て、もうコアが無い状態らしいぞ。お前、どう思う?」
「おいおい……まだたった五時間しか経って無いんだぞ。みんな難易度高めのダンジョンは狙えないのかな、って思うな」
「ま、俺たちのダンジョンが攻略される筈も無いしな」
男は、自分たちの造り上げたダンジョンの強固さを信じていた。
難易度こそ最大にはいかなかったが、それでも自分たちが居ることで、その難易度はかなりのものとなる……そのときはまだ、そう思っていたのだ。
「……ん? おい、あれは侵入者か? えっと、数は……二人だな」
男の一人が、自身のスキルによって二人の侵入者を見つける。
顔は外套によって見えないが、小柄な背丈であることが分かった。
「おいおい、まだ子供じゃないか。遠くを巡回に行った奴らは何処を視てたんだよ」
「こりゃあ、アイツらに一杯奢ってもらった方が良いかもな」
「いいや、一杯じゃなくていっぱいだな!」
そんな軽快なジョークを言いながらも、侵入者を死に戻らせるために武器を準備する。
――そして、二人の侵入者は、彼らから近い場所まで近づいてくる。
「そこの子供たち、ここは危険だから戻った方が良いよ」
男は、丁寧な物腰で侵入者にそう告げるのだが――。
「申し訳ありませんが、ここは通してもらいますよ」
「……邪魔」
――侵入者たちは聞く耳を持たない。
「チッ! こっちが丁寧に言ってる内にさっさと帰っておけよ、ガキが!」
「さっさと殺っちまうぞ!」
あまり気が長くは無い男たちは、即座に戦闘態勢へと入る。
それを見てまた、侵入者たちも話し合う。
「……お姉ちゃん」
「……ハァ。全員が全員、■■■様のような方ではありませんよね」
侵入者たちは、禍々しくも美しい長剣を何処からか取り出すと、男たちに切っ先を向けて、スキルを発動させる。
「――"紅色雷電"」
「――"龍炎"」
この後、ここのダンジョンコアが無くなったということは……言うまでも無い。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
難易度十 偽・世界樹の迷宮
「安心しろ、俺は神じゃないからな! さっきのは幻影で、巨人なんていないぞ!」
男たちが橋に着いた途端、そこにいた男は彼らにそう告げた。
男は中学生程の身長で、白と黒の混じった髪と尻の辺りにピョコンと狼の耳と尻尾が生えた――獣人であった。
「幾ら■■■様でも、神を配置するのはまだ無理だからな。俺は代わりにをやっているただの魔物さ」
「……ん? おい、今最初の方にお前、なんて言ったんだ?」
「ああ、無理無理。俺の装備を全部外さないと、■■■様の名前は聞こえないぞ」
男の言う通り、眷属たちはメルスの名前がバレるのは不味いとの見解から、装備にある装置を付けた。
――メルスと言おうとすると、自動的にノイズが掛かるようにしたのだ。
「……それで、お前はどんな魔物なんだ? 鑑定を使っても全く分からないんだが……」
「ハッハッハ、そりゃあ仕方ねぇよ。俺は■■■様の実験に付き合ったからな。その分突然変異が起こったんだよ(ま、アッチの方は変わらなかったけどな)。
俺は名も無き狼――迷宮狼・天魔種さ!」
男は自身の四肢を地に付けて、体の状態を変質させていく。
髪と同じように白と黒が混ざった毛並み、鋭く伸びた爪、全てを噛み砕きそうな牙――紛うことなき狼であった。
「……さて、■■■様のためにもここは通らせないぜ!」
刃のように鋭く尖った牙を出しながら、狼は男たちにそう告げる。
――この後、男たちは抵抗する暇も無く死に戻りをした。
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