AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と反省



夢現空間 居間


「たっだいま~……ってどったの?」


 居間に入った俺たちを待っていたのは、正座している眷属たちだった。


『おぉ、メルス。帰ったのか』

「いや、帰るって言ったじゃんか。……で、この状況は一体どういうことなんだ? クエラム」


 この場で正座をしていなかった数少ない人物の一人――クエラムに説明を求める。


『……反省の証だな』

「反省?」

『まぁ、それは本人たちに訊いた方が良いと思うぞ』


 そう言って、正座している眷属達の方を向くクエラム。
 ……いや、本当に何があったの?


「とりあえず……体勢を崩して良いぞ」

『いいえ、そういうワケにはいきません。わたしたちは、メルス様の意向に反ったのですから』

「へっ? ……反った? いつ?」


 ネロのことならもう終わらせただろう。
 まだあったのかよ……。


『いつって……さっきだよさっき』

『メルスがゴーレム……マシューだっけ? に攻撃されたのを見て、ぼくたちが転移しようとしたじゃないか』

「あぁ……」


 リアが言ってくれて、やっと分かった。
 嗚呼、本当に駄目なようだ。


「……つまり、俺が悪いってことか……。俺がダメージを受けるようなヘマをしなきゃ、みんながそんな風に心配しなくて済んだんだしな」

『『『っつ!?』』』


 そうだよな……。
 幾らカウンターアタックするって言ってもさ、もっと良い方法もあったのだろうに。
 馬で鹿な俺には思い付かない素晴らしい考えが、眷属たちにはあったんだろう。

 ……だが、中途半端にしか力を借りなかったから、こんなことになってしまった。
 意味の無い罪悪感を感じた眷属たちが、意味も無い正座をしている。
 こんな状況があっても良いのだろうか……いいや、良くない(反語)。

 俺もまた、眷属たちと同じように正座をして、話を続ける。


「例え、それにお前たちが何か思うところが有ろうと無かろうと……俺はそれを悪いことだとは思っていない。家族のことを思って動くことの、何処が悪いんだろうか。家族ってのは、どんなことでも笑って許せる関係だろう? 俺は……そんな家族を作っていきたいと思っている。お前たちは……どう思っているんだ?」

 ――眷属とは、家族と同等の者なり。

 俺の記憶を見た眷属たちは、俺がそう考えていることを知っている。
 繋がりの無い者達が誰かを起点に、家族として成立していく。
 俺がそんな者たちを、羨ましく感じていたことを(べ、別にアッチの意味でそう感じたワケじゃ、な、無いんだからね)。

 だからこそ俺は家族を求め、眷属を――犠牲となる者を増やし続ける。
 そうしていないと――――から。


『……私たちは、メルスと共にある』

『例え最初がどうだったとしても、今の私たちはメルス君と一緒にいたいと思っている』

『ごしゅじんさまと一緒が良い!』


 武具っ娘たちは……そう言う。


『メルスンと一緒にいると、毎日が楽しく感じられる。今までの退屈が嘘みたい』

『わ、吾は別に……悪くないと思うぞ』

『メルスさんは、私の質問に親身に答えてくれました。誰も教えてくれない寂しい日々より、貴方といた方が面白そうです』


 強者たちが……そう言う。


『そもそもね、それが嫌なら眷属を辞めているとは思わないの?』

「い、いやでも……」

『デモもメモも無いわよ。メルスは、私達のことを信じているんでしょ?』

「っ! 当然だ!」

『なら、それで良いじゃないの。話を逸らし過ぎよ。貴方は私たちを信用していて、私たちを貴方を信じ切ることができなかった。だからこそ、貴方を心配して、駆けつけようとしたのよ。……メルス、貴方の心は脆いって前に言ったわよね? 私たちは貴方がいつも頼ってくれないことが凄く不満なのよ……』


 ふ、不満?
 俺はただ、自分でやれることを自分の力だけでやろうと思っただけで……。


『だって、貴方が本当に力が必要な時に、誰かの力を借りようとしたことがある?』


 ……結構あるぞ。
 リアの時だって、ギーの力を借りて魔龍を倒したんだし。


『……そうね、なら質問を変えるわ。
 ――貴方は自分がピンチの時に、誰かに助力を求めたことがあるの?』


 ……いや、それは……無いけど。
 ほら、今は能力値に振り回されないように制御しているからあれだけど、その気になればアレだってさ。


『そうね、そもそも貴方がピンチになることは殆ど無かったしね。私達もここまで自分が取り乱すとは思ってもいなかったわ』


 そうなのか。
 俺としては、それはとても嬉しいことだから是非受け入れたいことだぞ。


『……わ、私が言いたいのは、いい加減頼りなさいってことよ。いつまでも貴方が自分だけでなんでもかんでも背負い込むから……私たちは、貴方を見ていることしかできない。見ていることしかできないからこそ、私たちは貴方を心配になってしまうのよ。
 ――お願い、分かって……』


 ティル……。
 俺を説得しようとする彼女は、最後には泣きながらの発言となった。
 周りを見ると、殆どの眷属が同じ気持ちなのか、目が潤んでいた(ネロだけは、何故自分がそんな状態にあるのかが不思議に思っているみたいだ)。


「毎回毎回みんなに言われても、俺が変われるかどうかは分からない。だけどその言葉達は……必ず俺の心に響いてい来る。
 ――ありがとう、こんな俺に優しくしてくれて」

『……グスッ。貴方が変われるように、何度でも言ってあげるわ。
 ――貴方が心配だと』

「あぁ、よろしく頼む」


 これから俺はしばらく自粛して、眷属達に心配されないように夢現空間でのんびりしていようかな~……と思っていた。

 ――これから来る、祭りが無ければ。


主様マイマスター、少々良いでしょうか》

「(良いけど……何かあったのか?)」


 俺に念話を掛けてきたレンは、祭りを俺に知らせてくる。


《――運営が、イベントを始めました》



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