AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と『禁忌学者』 その04



『――この場合は、メルスさんというより、眷属の皆さんが凄いと言えば良いのでしょうか? 鑑定系のスキルを全て集めて、神眼としてスキルにする……聞いたことの無いような方法ですが、プレイヤーはそんな奇々怪々な技術を持っているんですね』

「ま、(鑑定眼)を最初に創って貰った時は、眷属も今ぐらい居なかったけどな。レン――ダンジョンコアに頼んでやって貰ったから、普通のプレイヤーには無理だと思うぞ」

『そういえば、元ダンジョンマスターでしたね。確かにダンジョンコアならそういったことも可能とのことですけど……。ダンジョンマスターって辞めらるとは初耳です。確か、コアと運命共同体となり、逃げることができないと文献に書かれていたのですが』

「プレイヤーはそもそも、この世界との結び付きが薄いからな。運営側が職業を全て剥奪できるぐらいだし。
 こっちの世界だと職業って、その人の人生そのものを表してるって聞いたが……それすら奪えるってことは、そう言うことだろ」


 あと、ハーレムという意味では、運命共同体な気がするな。


『そうですね……って、いつまでここで話しますか? 私としては、話が膨らみますので別に良いですけど……』

「それもそうか」


 確かに、少々長い会話をしていたな。
 一応対策を考える思考も用意してあったんだが、結局当たって砕けろというアイデアしか浮かばなかった(砕けちゃ駄目だろ)。
 職業に代わる力に関しては、運営をぶん殴るか運営以上に強くなるかの二択だな。
 どちらかと二つ目の方が成功率が高いが、それも俺自身ではできないことだから、眷属頼りの案件だ。


準備中
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


『では、開けますよ――』


 リュシルがぶつぶつ何かを言うと、扉に魔法陣が一瞬浮かび……消えたと思うと扉が勝手に開き始める(勿論記憶したから今度から使えるようになった。ま、何の魔法かはまだ分からんがな)。


「こ、こりゃあ何とも……デカくね?」

『しょ、少々、張り切っちゃいまして』


 そんなレベルの代物じゃないぞ。
 開かれた扉の先は、広い広い荒野だった。
 そんな場所に、マシューとやらはいた。

 空に届き得る程の巨躯、角張ったフォルムに爛々と輝く無機質な瞳。
 その体には、何かの回路が走っており、線上を青い光が浮かんでいる。


「絶対、殺戮兵器だろ。リュシル、コイツ何人殺った?」

『ひ、酷いですよ! マシューは良い子に決まってるじゃないですか。精々――国を一つ滅ぼしたぐらいです!』

「滅ぼしてんじゃねぇかっ!」

『ひぅ……』


 どこをどう見たら、国を滅ぼした奴を良い子だと言い切れるんだよ。
 これでもう、脚が八本ある蜘蛛型のゴーレムとかだったら、絶対にコイツをデスト□イヤーと呼び直していたぞ。


「なぁ、鑑定って効くのか?」

『鑑定無効化も付けましたけど……どうせできますよ~だ』

「はいはい、悪かったって。これをあげるから、許してくれって」


 後で渡す予定だったもの――Wifoneを渡して誤魔化してから、(望遠眼)と(鑑定眼)を発動させると、ステータスが浮かぶ――

ゴーレム"56号マシュー" ???
??? ???
??? ???

 か、勝てるのだろうか……これ。
 マレフィセントみたいに鑑定が全くできないのは、リュシルの言っていた神の影響だからだろうか。

 俺の勘では、絶対に魔龍より厄介な奴だろうよ。
 あの龍は強かったが、それでも龍という生物内に収まっていた……が、コイツは機械人形――合理的な考えに基づいて動く無機質な道具だ(意志が無いことは、予めリュシルに確認済みだ)。

 怯ませてドンッとか、不意打ち系の攻撃は全く使えない。
 しかも魔法による安全な攻撃も不可能……どうやったら勝てるんだよ。

 せめて鑑定ができれば、詳細から対策を作れただろうに(有効に使えるかは別だが)。


「神の加護の所為で鑑定できなかった……っておい、そのドヤ顔はなんだ?」

『い、いえ。それは私の用意した鑑定無効の効果なんじゃないかな~って』


 ちゃんと神の加護だと言ったのに、凄いニマニマしている……クソ、可愛過ぎやろ。
 どうしてこっちの世界は、美形が多いのだろうか……中身は残念なのに。


閑話休題妬ましいな


「とりあえず、分体で行ってみるか」


 意思の無いアバターを作りだし、扉の中へ一歩踏み出さプチッ……せたのだが、一瞬でこちらまで来たマシューがアバターを踏み潰した。
 ――その速さ、まさに光の如し!


「……なぁ、良い子ってのは、部屋に入って来た奴を問答無用で踏み潰す奴のことだったのか?」

『あ、あれぇ!? ……こ、これはきっと、あのシーバラスの所為なんです! あ、あいつめぇ、許せません!!』


 酷く動揺しているのか、焦点が定まっていない。
 顔を合わせてジトーッと見ても、綺麗な二色の瞳はグルグルと回っているだけだ。

 しっかし、入室しただけでこの世から排除される仕組みとは……マジでクソゲーだな。
 それでも(未来眼)で潰される瞬間は見れるぐらいの速度だった為、一応回避は可能だろう……が、避けているだけでは勝てないし、動きを止めることすらままならない。
 かといって、何もしないという選択肢は俺の中には全然無い……はてさて、一体どうすれば良いのやら。


 とりあえずは、色々なパターンを試してみるってことで。



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