AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者なしの元英雄達の選択 前篇
『――それで俺が納得できたなら、全力でやらせて貰うからな……一時間後にまた来る』
そう言って、彼――メルスさんは闇の間と女性呼んだ、私達が現在居る部屋から出て行きました。
彼は私に、幾つかの可能性を提示してきました……自分は偽善がしたいから私を助けると言って。
《どうする? 俺は一番で良いと思うが》
一番――アンデッドのまま生きて選択を、ウルスは選びたいようです。
《アンデッドってのは、ダメージを受けても痛みを感じないんだよな? それなら俺は、アンデッドでも良いと思うぞ》
アンデッドは痛覚を感じないので、自身の限界を超えた動きを行うことができます。
魔王にアンデッドにされる前、敗北を帰したウルスには、自身が縛れていた過去以上に魅力的に感じられたのでしょう。
《私は二番が気になるわね。魂を移し替える技術なんて……それこそ不老不死じゃない》
シャルは、魂を不老不死と思われる技術に興味を持っているようです。
どれだけ長大な寿命を持つ種族だろうと、必ず訪れるもの――それが死です。
シャルは【賢者】に就く前、それを調べていたと言っていました。
不老不死に辿り着いたことがある例は幾つか存在しているそうです――
最強を誇ったという――吸血鬼・神祖
普人の身で神に届いた者――仙人
そして――(不老不死)のスキルを持つ者
――他にも不老や不死のみを可能とした者が、当時の資料には記載されていたとシャルは教えてくれました。
《私、知りたいの。本当に不老不死が存在するのか……そして、アイツが本当にそれをできるのかを》
……彼は成功例が無いと言っていました。
そんな方法を、私は仲間に選ばせて良いのでしょうか。
《ワタシは……三番が良いですね。
この人生は、魔王との邂逅で一度は終わったもの。新たな生を歩むのも……良いかもしれません》
ウェヌスは三番――転生を選ぶようです。
……にゅーげーむという単語はよく分かりませんが、今のスキルを持ったままやり直すという選択肢は、ある意味では不死と同等の選択かもしれませんね。
《……それで、アマルはどれが良いと思うんだ? お前の意見に付いていかないように、先に言わせたんだろう? 全員意見を言ったし、アマルの答えも教えてくれ》
私には『煌導士』という称号があり、それの効果で、仲間達に私の意見はとても通り易くなってしまいます。
過去、『覇導士』を所持していた言われる者が、とある大陸に大帝国を造り覇を唱えたいう文献もあるように、導士というのは強力な物らしいのです。
自身の運命に他人を組み込む力という導士の力は、仲間の意志をも歪めてしまう程。
私としてはそういったものは……あまり好みませんしね。
(ウルス。私はアンデッドのままでいると、光属性のスキルを使った時が気になります。恐らく大丈夫でしょうが、一応の疑念はあります)
《……俺、そんなの持ってたっけか》
(えぇ、剣聖のスキルは大体が光属性の上位属性――聖属性の武技ですよ。
シャル。彼は、彼自身が二番の選択をあまり勧め無いような言い回しでした。私は仲間に危険のある選択を好んではいません。不老不死の研究は、資料だけ見せて貰いましょう)
《……そんなに都合良く、資料を見せてくれるかしら?》
(こちらからも情報を渡せば、きっと見せてくれますよ。
ウェヌス。確かに私達の生は一度終わりました。ですが私は、みんなとの冒険をまだまだ続けたいと思っています。世界には蘇生魔法というものもありますし、これからも、一緒に生を歩みませんか?)
《(どうしてそんなことを素で言えるんでしょうか)……分かりました。それで、結局アマルさんはどうするのですか?》
(そうですね……少し時間が掛かりますが、聞いてもらえますか? 私の考えを)
そうして私は、私の考えた第四の選択を仲間達に相談してみた。
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《……なるほどな。一度浄化してもらう、か……大丈夫なのか? それ》
《アイツが聖属性を使えるなら、それも可能でしょうね。だけど、良く考えたわね》
《シャル、良いですか? 恐らく、それを実行するのはかなり危険な物だと思いますよ》
《え、浄化させるだけでしょう? そんなの一瞬で済むじゃない》
……どうやら、ウェヌスだけは気付いているようですね――この考えの欠点を。
《シャル。貴方が仮にアンデッド一体を浄化させるとして、どれだけの魔力を必要としますか?》
《えっと……大体300ぐらいかしら》
《貴方の眼で視えましたか? 彼の魔力量》
《そうね……少なくとも万は超えていたわ。実はアイツ、森人じゃないの?》
シャルには、視認した相手の魔力量をある程度分かるスキルがあります。
それを使って彼の魔力量を視たらしいのですが……万ですか。
万を超える魔力量となると――
種族が元なら森人族や魔族、竜族。
職業が元なら【勇者】や【魔王】……それに、シャルのような【賢者】でしょうか。
――いずれにせよ彼が只者で無いことは、先程の闘いを観て分かっていました。
《……ですが今の私達の体は、普通の浄化を受け付けないでしょう。そこに強引に浄化を発動させるとしたら……どれだけの魔力を必要とすると思いますか?》
《ッ!? ……確かに、浄化を拒絶するなら弾かれないように何度も行うか、ずっと発動させているしかないわ。それを行うのは……私でも難しいわね》
どれだけ魔力が多いとしても、魔王の力を常に弾きながら完全に浄化するのは至難の技だと思います。
ですからこの方法は、彼の技量で全てが決まってしまう――賭けのような方法でした。
(とりあえず、できるかどうかを訊くだけ訊いてみます……もし、彼が引き受けてくれたならば、分かってますね?)
長い時を待つ間に、みんなで決めた誓い。
それが果たされるのかも知れませんね。
TO BE CONTINUED
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