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山田 武

偽善者と『神樹の支配者』 その02



『おぉ~、これが炎魔法か~。私には無縁の魔法と思ってたんだけど、まさかメルスンが使えるようにしてくれるとは』


 森の中で自分の手に宿る炎を見て感動しているユラルな訳だが……


「……何でメルスンなんだ?」

『えへへへ、私の契約者でもあるんし、何かこう、親しみを込めたニックネームでも……と思って~』

「いや、名前を教えていないと思うのだが」


 名前を言ったことは一回も無かったと記憶している。一体どうやって。


『それは、さっきメルスンに眷属の証を刻まれた時に頭の中に浮かんだんだよ。メルスンの眷属になったらできることも含めてね』


 成程成程、つまり[眷軍強化]で眷属化をさせると、眷属になった者は俺の情報を知ってしまうということか。……記憶忘却の魔道具でも創っておいた方が良いかな?


「……そういえばユラル。お前のステータスを見たいんだが、見ても良いか?」

『良いよ。ただし、見れるものなら見てみやがれ! だけどね』


 ほほぉ、言ってくれるではないか。なら、早速視てくれるわ! ――(超級鑑定)発動!


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ステータス
名前:ユラル (女)
種族:????? Lv??
職業:なし


 HP:?????/?????[+360]
 MP:?????/?????[+712]
 AP:?????/?????[+360]


 STR:?????   [+180]
 VIT:?????   [+180]
 AGI:?????   [+180]
 DEX:?????   [+180]
 INT:?????   [+180]
 LUC:?     [+180]

[眷軍強化]

スキル
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固有
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眷属スキル
[スキル共有][経験共有]


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


『見れた~? 無理だと思うけど~。私も一応は聖霊なんだから、普通の人には視えないように隠蔽しているからね』


 まぁ、(超級鑑定)で看破できるなら、終焉の島の魔物以下ということになるしな。アイツら、一匹も(超級鑑定)じゃ詳細が出てこないんだ。……よし、これなら多分視れる(というか、最初から使えば良かったと今は思う)。


("鑑定眼"+"神氣"発動!)


 すると今度は、バグっていないデータが表示される――


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ステータス
名前:ユラル (女)
種族:樹聖霊 Lv90
職業:なし

 HP:80000/80000[+360]
 MP:60000/60000[+712]
 AP:20000/20000[+360]

 STR:20000   [+180]
 VIT:40000   [+180]
 AGI:5000    [+180]
 DEX:5000    [+180]
 INT:30000   [+180]
 LUC:6     [+180]

[眷軍強化]

スキル
(樹魔法)(聖霊魔法)(魔法攻撃耐性)(金剛)
(魔法強化)(精神攻撃耐性)(物理攻撃耐性)
(危機回避)(特殊攻撃無効)(並列行動)(憑依)
(連続魔法)(無詠唱)(実体化)(聖霊化)(神氣)
(光合成)(樹木操作)(果実生成)(急速促進)

固有
【神樹支配】

眷属スキル
[スキル共有][経験共有]

〔祝福〕
〔(精霊神の加護)(聖霊神の加護)
 (不明の守護)〕

〔呪い〕
〔(世界樹の嫌悪)〕

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「……運、低いな」

『鑑定できたの?! メルスンって、本当に何者なの?!』

「ただのユラルの契約者だよ。まぁでも、他のステータスは凄いじゃないか。この島でどれくらい強いんだ?」


 これはかなり気になる。ユラルはこの島には強者がいると言っていたが、彼女にとっての強者ってことは、万超えのステータス持ちがいっぱいいるって事じゃ無いか!だから知りたい、ユラルがこの島でどれくらいの強さを持っているのかを。


『そうだね~、大体13番目ぐらいかな?』


 まさかの、13番目だった。前にグーは凄い強い魔物が12体いると言っていたが、ユラル入ってないの? この強さなのに。一体どれだけ強いんだよ、上の奴らって。


『まぁ、私より上の人達って、大体(神氣)を使えるからね。ステータスも強い人は十万を超えてるから……運を除いて』


 あ、こんな所に居るってことは、そういうことなんだ。って何の慰めにもならないわ! 別に無理して戦う訳では無いが、どうにかして対処ぐらいはできるようになりたい。その為にも、力が必要だな。


「ユラル、俺は力が欲しい。自分が平穏に過ごし、周りにやってくる悪意を振り払うだけの力が。お願いだ、俺に力をくれ。俺のちっぽけな偽善を貫くための力を」


 俺はユラルに頭を下げてお願いする。彼女が13番目の強者なら、14番目までの強者とならある程度闘える様になる。だからこそ、俺は力を求めてユラルに頭を垂れた


『う~~~~ん…………良いよ』

「本当か!」

『だけどね、その、力を与えるには、その、色々とやらなくちゃいけないことがあって』

「分かった、すぐにやろう。で、何だ」

『えぇ~! ちょ、ちょっと早すぎない?! 私にもそ、その、準備ってのがあるんだから』


 ……確かに力を与えるなんて大層なことをするんだ。準備に時間が掛かるのは当然のことだ。俺も急かし過ぎたか。
 慌て過ぎたのか、顔が赤いユラルがそう説明してくれたので、俺は反省してから別のことを行うことにする。


「分かった。なら俺は、スキルのレベル上げでもやって待っている。準備ができたらどんどんやってくれ」

『……う、うん。分かった』


 とりあえず、探知系のスキルのレベルを上げることにしよう。
 俺はそう考え、地面に座って自分の持つ探知系のスキルを全て使って、スキルレベルを上げることにする。


『……メルスンも目を瞑っているし、大丈夫だよね。……うん』


 ユラルがそんなことを言っているのも、【六感知覚】でしっかりと認識できる。……激しい光でもともなる儀式なのだろうか。そんなことを考えている俺にユラルはふわふわと浮かびながら近づいてくる。そして、俺の顔にかづかない程度の力で手を添えて――

 チュッ

 キスをしてきた。知覚系のスキルも同時に使っていた為、その感覚は鋭敏に感じ取れてしまう。甘い香りと共に触れた彼女の唇は、その香りと同じように、蕩けるような味を俺に伝えてきた。


『……よ、よし。メルスン、これでメルスンに色々と力が入ったよ』


 キスをしたユラルは元の位置まで一瞬で移動して、そのセリフを口にした。……恥ずかしかったのだろうか。【六感知覚】が彼女の頬の熱さの高まりを教えてくれる。


「あぁ、ありがとうユラル。今度また、やってくれると嬉しいな」

『えっ、え~~!! メルスン、これは一度きりの儀式だから、そ、その、二回目は無理というかなんというか』

「……なら、形だけでも二回目をやってくれないか? 良く分からないが、ユラルがやってくれた何かのお蔭でユラルのことを篤く感じられるんだ。だからさ、これからも定期的にやってくれないか」


 なんでだか分からないが、フェニの時みたいにセリフが直ぐに浮かぶ。(あの時は意識を失ったのだが、今回はあるという差異はあるけど)心の奥底で思っていたことなので、言うこと自体に不快感は無いのだが、とても恥ずかしい。……恐らく、{感情}が働いたな。
 {感情}の推定される能力に、本心をさらけ出すという能力があったので、間違いないだろう(無効化不可能)。
 ……だけどユラルは、これを聞いて怒らないだろうか。わざわざ俺の為にやってくれたキスを今度は意味も無いのにやるだなんて。今回は儀式という名目があったからやってくれた訳だが、二回目以降はそれは無い。ユラルは、嫌々俺とキスしなくても良いのだ。だから、俺は断られると思ったのだが――


『……分かった』


 あれ? 受けちゃうの!?
 俺の思いとは裏腹に、ユランは俺の本心からの願いを聞き入れてくれた。


『だけど、私がやりたくなった時しか、や、やらないんだからね』

「あ、あぁ、分かった」


 俺は、そう答えることしかできなかった。



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