AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と焼き串
第四世界 迷宮都市"ラントス"
レンに人形を届けた後、直ぐにミントの所に向かおうかと考えたが……それだけでは味気ないと考えので、真面目にダンジョンを攻略してミントに会いに行くことにした。
――と、いうことで、俺は迷宮都市に現在いる。散策に来た時には誰も居なかったのだが――
『へいらっしゃい、迷宮都市産のグレイウルフの焼き串はいかがーー!』『第一世界で採れた、新鮮な果物はいるかーい』『天魔迷宮のガイドブックはこちらで販売中だよー!』
――今では店ができる程、賑やかになっている。散策以降、ダンジョンの一部を改変したり、ここの宣伝などをして、人が来るように盛り上げたのだ。お蔭様でリーンやルーンから冒険者や商人がやって来て、今では迷宮都市の名に恥じない数の人々が、この都市には存在している。
『そこの兄ちゃん、グレイウルフの肉を食べてみないか?』
先程から焼き串を売っていたおっちゃんがそう勧めてきた。……そういや、魔物の肉を食べるのは、亜竜以来だな。
「おっちゃん、いくらだ?」
『一本5Yだが……何本いるかい』
「とりあえず一本くれ、その後考える」
『あいよ、ちょっと待ってな!』
おっちゃんはそう言うと、すぐさま肉を焼き始めた。肉に付いたタレが焼け、辺りに香ばしい匂いを感じさせていく。
『へいお待ち! 熱いから気を付けろよ』
「あぁ、ありがとう」
おっちゃんから串を受け取り5Yを払うと、軽く冷ましてから口の中に肉を入れて噛み千切る。
――!! これは……。肉を噛む毎に肉汁とタレが混ざり合って口の中を肉の味で埋め尽くしていく! 食べ物の批評なんてやったこと無いからあんまり上手くは言えないが、とにかく旨い! 【料理神】を持ってるけど、こんなに旨い物は作った事は無い(俺は料理下手だしな。補正だけで作ってると、ここまで旨い物は作れないんだろう。頑張ってみるか)。
「おっちゃん。最大で何本まで買える?」
『そうだなー、グレイウルフの在庫も考えるとなりゃー……100本が限界かな?』
「そうか、なら――500Yだ。それで100本作ってくれ」
『……兄ちゃん、俺はスピットだ。その剛毅さを見て訊きたくなった――名前は?』
「ん? 俺の名前はメルスだ」
『ッ!? おいおい、その名前は建国王の名前じゃねーか!』
「マジか! 俺って建国王って扱いなのか!?」
『いや、そりゃあ本来、俺のリアクションだからな。……その反応からして本者なんだろうが、闘技場で見たメルス様とは、顔が少し違うんだがな~』
「それは今、変装してるからだな。少し解くから、良ーく視とけよ」
俺は一瞬だけ、(変身魔法)を解除しておっちゃんに顔を見せる。……頷いているし、俺の顔を見て納得したようだ。
『……確かにあの時見た顔だったな。しっかし、どうしてこんな所に?』
「視察……かな? それと、俺のことは普通にメルスで良いぞ。それか、ノゾムかな? 偽名はそれで通してるから」
『なら、ノゾムって呼ばせて貰うぞ。
……で、どうしてうちの焼き串なんかを買うんだ?』
「旨い食べ物を食べない理由があるか?」
俺がそう言うと、おっちゃんはキョトンとしてから、突然笑い始める。
『ハハハッ、ちげぇねぇ、ちげぇねぇよノゾム。そうだな、確かに旨い物を食べるのに、理由なんかはいらねぇや。――待ってろ、今すぐ100本仕上げてやるよ!』
おっちゃんはそう言って、500Yを受け取ってから100本の焼き串を作り始めた。
先程以上に香ばしい匂いが鼻に来る。やっぱり、ここは当たりだよな。
鑑定的には魔物の肉という以外は、只の焼き肉の筈なのに……俺にはそれ以上の物に感じられる。料理への情熱? そういった物がこの味を生み出しているのかもな……。
そうこう考えていると、おっちゃんが焼き串を完成させた。
『はいよ、100本お待ち! だけど、今すぐ食べるのか?』
「いや、とりあえず保存をするが? ……一応聞いておくがこの焼き串って、魔法の影響を受けたりするか?
時間を止める魔法で保存する予定だが」
『多分……大丈夫だと思うぞ。しっかしそんな魔法まであるとは、さすが建国王だな。もしそんな魔法を使えるなら、ぜひ使ってみたいものだ』
「なら、使ってみるか? 試作品だが、一応あるぞ」
『本当か!? ……いや、でもそこまでしてもらう理由が』
「そうだな……なら、今度来た時にもっと旨い物を食わせてくれ。
――ほら、その魔法を使える魔道具だ」
俺はそう言って、受け取った焼き串を"時空庫"に仕舞ってから魔道具を取り出す(これは"収納空間"の上位魔法だ)。
ちなみに、こんな感じだ――
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試作魔箱 製作者:???
魔道具:箱
RANK:A  耐久値500/500
???が作り上げた魔道具
箱に入れた物の状態を時間毎固定する
MPを1籠めることで、1日分固定できる
また、時間を進める速度も自在に調整可能
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まぁ、見た目はあれだ。冷蔵庫みたいな感じだ。ずっと前に擬似魔法剣を創った時、他の魔法もできないかと考えた結果。このような家電ならぬ家魔(?)ができた。
MP1で一日分。10もあれば10日分……耐久度がある限り持つので、長期的な保存が可能だろう。
そういった説明をおっちゃんにしてから、俺は再び足を進める。次は何があるかな?
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