AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

04-54 撲滅イベント その32



 竜人の祈念者イアが眷族となって、気絶状態に陥ってから約五分後。
 人並みからやや外れた感覚が、彼女が覚醒したことを察した。

「……ん、うぅ……」

「おはよう。よく眠れたか?」

「……お陰様でね。まさか、変なことなんてしてないわよね?」

「あれ以降触れてはいないな、少なくとも。俺もアレらに観られながらはな……」

 チラリと視線を向けた先に居るのは、結界の中に封じ込めた彼女の従魔たち。
 まだまだ召喚時の魔力は残っているみたいで、こちらに敵意をガンガン向けていた。

「……そういえば、忘れてたわね」

「おい、それでいいのかご主人様」

「…………」

 俺からの視線を避け、彼らを送還する。
 少々間が合ったので、主従で繋げられたパスを通じて事情を説明したのだろう。

 ……というか、そうであってほしい。
 次に呼ばれたとき、あのままの敵意だった場合何をされるか分からないからな。

「まあいい。では、始めるとしようか」

「いや、何をするのか聞いてない」

「……そういえば、忘れていたな」

「おい、それでいいのか」

 彼女からの視線を避ける。
 若干口調が戻っているが、まあそんなことはどうでもいいとしよう。

「一から説明しよう……とはいえ、やってもらうことは特にない。じっくりと調べて、原因を暴くだけのこと」

「い、いやらしいことを!?」

「同人誌みたいに……じゃないんだよ。視るだけだ、ただの視るだけで充分だから」

「……やっぱり」

 なんとなく思考が分かるが、もう返す気力もないや。
 よこしまな視線を向けるわけでもない……いやまあ結果的に、視えてくるものはあるけど。

「ステータスを開示するだけだ。お前自身にも見ることができない、例のヤツも含めて」

「そ、そういえばそうよね。ええ、忘れていたわ……それ以外ないわね」

「……。視た情報は全部そっちに送る、一時的に[パーティー]として共有すれば確認できるだろう。ついでだ、[フレンド]登録もしておいてくれ」

「……ええ、そうね」

 さっそく[パーティー]及び[フレンド]登録を済ませ、始めた。
 しっかりと目を凝らすことで、少女のすべてを覗き見る。

「鑑定っと」
《“神気”──“鑑定眼”》

 通常よりも視なければいけな情報が多いので、ありったけの神気を注ぎ込む。
 先ほどまでは詳細を見ることができなかった部分まで、情報を暴いていく。

《レン、グーも解析を頼む》

《了解しました》《心得たよ》

 ただ、鑑定眼で視ることのできる情報は多くて、凡人たる俺では整理ができない。
 そこでそのすべてを眷族に任せて、その負担が無いようにしておく。

 丸々ダウンロードとして、特定の箇所から必要なデータを抽出して考察する感じか。
 いちいち見ている時間も、考えるだけのお頭も無いので仕方ないのだ。

          ◆

 解析能力に長けた二人が同じ作業をやっているのだ、その結果もすぐに届く。
 調べ終えた情報は『万智の魔本』に記載され、読むことでそれを知ることが可能。

 その情報を鑑定で視た情報として偽装し、不安そうな少女にも視れるよう共有する。
 突然出現したことに驚き、不服そうな表情だったが……その内容に再び驚く。

「百面相か?」

「……驚かない方がおかしいわ。何よ、このわけの分からない称号は」

「おまけにこの邪縛? というのも面白そうだな」

他人事ひとごとみたいに……あと、このCHMって数値は何よ。振った覚えがないのに、これだけ凄い数値じゃない」

 彼女のステータスにおいて、人とは異なる点は大きく分けて三つ──

 ・膨大すぎる隠し能力値のCHMCharisma
 ・称号スキルとして得た能力
 ・邪縛という謎のカテゴリー

 隠し能力値は、性能の高い鑑定系スキルで視ることのできる[ステータス]。
 基本的に対応した能力値が高いと、それに比例して数値が大きくなる。

 だが隠し能力値が高くとも、普段表示される数値が小さいという場合もあった。
 ……国民たちの能力値で検証を済ませてあるので、確定した情報だ。

 特にブレが大きいのは、LUK値が影響するCHM値とSUISuitable値。

 前者は他者への影響度を意味するカリスマで、後者はさまざまな事象への適性度。
 どちらも本来、得ようと思って得られるモノではない先天的な概念だからだろう。

「それに加えて……何なの、この<天姿国色>と(美神の怨恨)って?」

「前者は例の症状を発生させる原因、後者は判定時のCHM値の倍化と状態の悪化を起こしているみたいだ。どっちも普通の方法じゃ見れないように細工してあったようだな」

「美の神って……そういえば、チュートリアルのとき、そんなこと言っていたわね」

「理由は知らんが、それが直接の原因だな。怨恨と書くぐらいだ、理由は腹いせだろう」

 腹いせって……と呟くイア。
 まあ、それまでの悩みがAFOを始めてすぐの出来事が理由だったみたいだし。

 普通、チュートリアルキャラがそんなことするかって思うよな。
 ……俺もあんな経験をしていなかったら、そんな反応をしていたかもしれない。

 ちなみに<天姿国色>の判定は、MINMind値という抵抗値によって行われる。
 俺のMIN値は彼女のCHM値に劣っている……が、精神強化が働いていた。

 お陰で判定時に補正が掛かっていたため、通常の判定も・・・・・・無効化に成功していたのだ。

「たしかにそっちにも驚いたわよ。けど、一番気になるのは──これよ」

「……ただの能力値だろ。それがどうしたんだ?」

「高すぎる。いったい何をしたの?」

「……一度しか言わないぞ。これこそが、俺の眷族が得られる恩恵なのだ!」

 せっかくなので、と具現魔法を発動。
 唖然とするイアの反応を見る限り、どうやら上手くいったようだ。

「……何、それ?」

「魔法による演出だな。まあ、他のモノも含めてちゃんと説明するさ」

「……頭痛が痛いって、こういうときに使う表現なのね。もう、何でもいいわ」

 思考放棄をした彼女に、それでもしっかりとした説明を行うことに。

 ──背後に未だ、『ドドンッ!!』という文字を浮かばせたまま。


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イアのステータスおよび今回出たスキルなどとなります


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ステータス
名前:イア(女)
種族:(竜人族Lv36)
職業:(召喚士Lv24)・(料理士Lv3)

HP:142/500
MP:201/800
AP:138/500

ATK:55
VIT:50
AGI:40
DEX:40
LUC:13
〔L CHM:1000〕
 BP:0

スキルリスト
武術
(大剣術Lv14)(片手剣術Lv13)(大盾術Lv11)

魔法
(竜魔法:種族Lv30)CS(付与魔法Lv21)
(生活魔法Lv14)

身体
(竜鱗生成:種族Lv30)CS
(竜翼生成:種族Lv30)CS
(竜爪生成Lv30:種族)CS(飛行:種族Lv19)
(体幹Lv24)(軽業Lv17)

技能
(中級鑑定Lv14)(中級隠蔽Lv2)(解体Lv4)
(下級料理Lv5)(二刀流Lv35)(輪唱Lv22)

特殊
<天姿国色:称号Lv->
(竜人の血脈〔・龍神〕:種族Lv-)
(召喚魔法Lv24)(料理の心得Lv3)

祝福
(眷軍強化)

〔邪縛〕
〔美神の怨恨〕

SP:50
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特殊:<天姿国色Lv->

発動者の顔を見た異性の抵抗力〔MIN値〕が対象者の魅力〔CHN値〕以下の場合、対象は状態異常:魅了になる

〔値の差が大きければ大きいほど、状態異常:魅了になる時間が長くなる〕

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邪縛:(美神の怨恨)

対象者のCHM値が2倍となる
また、対象者により状態異常:魅了になったプレイヤーの状態異常を状態異常:魅了支配に変更される
同時に、発動対象に同性を含み、発動する状態異常:魅了を状態異常:怨恨に変更する

〔この効果は本神か、それ以上の神格所持者によって解除可能――発動者:下級神〕

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