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山田 武

02-39 ダンジョン作製 その03



 毎回毎回のことだが、必死に布団の誘惑に抗って中から脱出する。
 出てきたときの達成感、そして絶望感ときたら……一瞬、戻ろうかと思ってしまう。

 そして、回復した分の魔力を注ぎ、それをDPダンジョンポイントに変換しておく。

《消費した分のDPだ。これで続きに入ることができるな?》

はいイエス。それではチュートリアルを続けていきましょう──核に触れたまま[メニュー]と念じてください》

 言われるがままに[メニュー]と念じる。
 すると、目の前にUIが表示され──


     ・   ・   ・

       MENU
    管理・拡張・召喚・設置
    分解・解析・補填・ログ

     ・   ・   ・


 レンに予め言われていたのだが、本来の迷宮ができることよりも数が少ない。
 やはり【迷宮主】が示す何らかの条件を満たさなければ、俺が望むことはできないのだろうか……と思っていたんだがな。


     !   !   !

      UPGRADE
 種族/職業/スキル/称号による条件達成が確認されました
 それぞれに対応するシステムを解放します

     !   !   !


 突然UIの画面が切り替わると、このような文面が表示された。
 つまり、特殊なモノは持っているだけで迷宮のシステムに干渉ができるらしい。

 数、多いからな……たぶんだけど、全部を一度に理解はできないだろう。


《レン、そっちの方で情報の取り捨てをしてくれないか? とりあえず、この画面と結果は出さなくていい》

《畏まりました。アップグレード完了まで、残り五分お待ちください》

《あいよー》

 コアに触れているのだから、せっかくということでメニュー画面を操作して時間潰しをしておく。

 ちなみに、詳細が分かりづらい『分解』と『解析』だが──効果はDPを支払った物やアイテムなどをDPに変換する機能と、迷宮内に在るモノを調べる機能である。
 リサイクルと敵情偵察といったところだ。

《完了しました。アップグレードの結果はログに記してありますので、詳細はそちらでご確認ください》

《重要なことだけ、レンから伝えてくれないか?》

《はい。念話システムの解放、並びに自動付与のスキルでしょう。今のように思考を通じて情報の伝達が可能となりました。召喚した魔物には言語理解スキルが自動で与えられますので、コアに触れていただければどの魔物とも連絡が可能となります》

 ログを確認してみると、それらは<正義ジャスティス>と【思考詠唱】によって解放されたようだ。
 他には最初から召喚できる魔物の種類を増やしたり、特別な環境を用意できたり……多くある分、解放されたシステムも多かった。

《念話か……それって、絶対にコアに触れていないと駄目なのか?》

《スキルとして念話を習得、またはそれと同じ効果をもたらす武技や魔法があれば問題ないかと。念話のスキル結晶は、DPで召喚することが可能です。魔道具でも構いません》

《スキル結晶?》

《使用することで、中に封じられたスキルを習得可能にする神代のアイテムです。すぐに使える者もいれば、そうでない者もいます。また、重ねて使用すれば、時間をかけずとも習得可能です》

 要するに、スキルの熟練度が梱包されたアイテムらしい。

 プレイヤーの場合、使用すればスキルリストに確実に乗るし、運がよければそのまま習得することができる。
 自由民の場合でも、熟練度は入るのでしっかりと鍛えればいずれ習得できるのだ。

《参考になった。まあ、あとで必要になったら考えることにしよう》

《はい。では、次の段階に移行したいと思います──続いては、魔物の召喚です。こちらは[召喚]より行ってください》

 メニューを操作し、[召喚]の部分をタップする。
 すると画面が切り替わり、大量の魔物の名前と召喚に必要なポイントが表示され……

《……レン、情報の整理。系統別に纏めておいてくれ。あと、別のシステムでもこういう感じなら、そっちもついでに》

《了解しました》

 するとまあ、綺麗に種類別で整頓されたリストが出てきた。
 そしてさらにこちらで画面を操作し、いくつか気になったものをピックアップする──

***********************************************************
召喚 [絞り込み:お気に入り]

極小《ミニ》系多種族合成獣《キメラ》種・天使種・悪魔種・勇者制限有り・魔王(制限有り)・神族(制限有り)
***********************************************************

 勇者や魔王、そして神までもがDPを支払うことで召喚することが可能らしい。
 ただし、これら三つは色が他のものと異なり暗くなっており、タップしても詳細が開示されなかったので召喚不可能だ。

 ……これって、どこから召喚するのか気になるよな。

《勇者、魔王、神の召喚に関する情報は開示できるか?》

《確認します…………現在の権限ではアクセス不可能です。権限は【迷宮主】の格を上げるかアップグレードによって獲得できます》

《つまり地道に【迷宮主】を育てるか、勇者や魔王や神を召喚させるのに必要な条件を達成すればいいのか……面倒だな》

《なお、『神様見習い』によってリストに表示される権限を得ております。より上位の称号を得られれば、多くの権限を得られる可能性がございます》

 見習いでリストイン、ならばそれ以上になればやれる可能性があると……同じ神様を召喚するのは無理だろうが、勇者や魔王に関する情報を開示させることは可能だろう。

 ──もちろん、召喚するかは別として。

《極小系、合成獣種についての情報を開示してくれ》

《畏まりました──極小系は召喚可能な魔物が極限まで弱体化した特殊召喚種です。コストが低い代わりに、戦闘力が皆無という問題がございます。進化を行うことで、通常種と同等の力を発揮させることができます》

《つまり、ひもじい奴らのための応急処置みたいなものか?》

《はい──また、合成獣種は複数の生物の性質を併せ持った魔物の総称です。組み合わせる生物の強さ・数によって、使用するDPの量が変化します》

 纏めると──ザコいが安い極小系とカスタマイズができる合成獣種ってことか。
 名前で興味を持ったんだが……面白いのもあるんだな。

《チュートリアルなんだし、まずは極小系にしてみる。レン、そっちのリストを》

《畏まりました》

 タップせずとも、レンであれば俺の代わりにコアを操作できる。
 せっかくなので頼んでみると、勝手に極小系の魔物のリストが目の前に展開された。


 安いものであれば『極小魔子鬼ミニマムデミゴブリン:3』、そうでなくとも『極小天使ミニマムエンジェル:10』が目につく中でもそれなりに上位のポイント消費だ。
 魔力を注げば注いだ分増えることから察してほしいんだが、それでもかなり安い。


 そんな中で、気になるものを見つけた。

《『極小虫ミニマムバグ』……情報をくれ》

《はい──虫種を極小化した魔物であり、魔子鬼や粘液と並ぶ最弱種として認知されています。昆虫種や節足種など複数の種族が確認されており、召喚するまでどの種族になるか選べません。DPを追加で支払うことで、選択可能となります》

《……まあ、一度目だからそのままでやろうか。『極小虫』を召喚してくれ》

《『極小虫:3』──召喚します》

 魔法陣が核の中で構築されると、転写されるように地面に同じ魔法陣が展開される……とても小さなサイズで。
 ほら、ちょっと意識を逸らすと見失う壁の染みってあるだろ? あれと同じくらいだ。

 やがてそれはサイズ同様にちょっぴり光ると、魔法陣を消失させる。
 残ったのは魔法陣よりも小さな虫、現実リアルだとノミぐらいなサイズの芋虫だった。

《では、[解析]を用いてその魔物を調べてみてください》

 言われるがままに、[解析]をタップして情報を調べる──

---------------------------------------------------------
ステータス
名前:なし(♀)
種族:(極小虫Lv1)
職業:なし

HP:30/30
MP:10/10
AP:10/10

STR: 5【+10】
VIT: 5【+10】
AGI:15【+10】
DEX:12【+10】
LUC:12【+10】

【迷宮の加護】

スキル
(変態)(噛み付き)(糸吐き)
迷宮スキル
(連携)(隠密)(体力譲渡)(回復魔法)
(消費軽減)(異常耐性)(精神耐性)(緊急転移)
(環境耐性)(言語理解)

加護
(迷宮の加護)
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 迷宮スキルとは、迷宮に召喚された魔物に付与できるスキルである。
 DPを支払うことでカスタマイズできるのだが──<美徳グローリフィ>のスキルと<正義>は、そんなスキルを無料ノーコストで取り付けられるシステムを解放してくれた。

 まあ、連携と隠密以外が該当する。
 それらは極小系の魔物たちにサービスで付けられるスキルである……だって、さすがに隠れて徒党でも組まないと、この系統の魔物たちは侵入者に対応できないだろうし。

「迷宮の加護ね……これもそのうち強化されるのか?」

《そうなります。今は最低限の加護しか贈れておりませんが、権限を増やしたうえでいくつかの条件を満たせば可能です》

 迷宮に居る間だけだが、加護によって魔物は強化される。
 レベルと関係ないため、こちらが強化されても侵入者が得る糧けいけんちは少ない……面白いな。

 ──必死に倒した魔物から全然経験値を貰えないと知ったら、はたして侵入者はどのような反応をするのだろうか?



  ◆   □   ◆   □   ◆

 解放されたシステム(一部)
 ※解放できるすべてのシステムが解放されたわけではありません
 あくまで、現段階で解放可能なシステムのみ解放されました

【武芸百般】:[召喚]ランクC以下一般武具
【森羅魔法】:[設置]魔法罠
【死霊魔法】:[召喚]低位階アンデット系
【陽光魔法】:[設置]環境設定『太陽』
【思考詠唱】:[念話]システムそのもの
【断罪者】:侵入者の業値干渉能力、弱体化
【天魔】:[召喚]低位階天使・悪魔系
【経験者】:[召喚]位階3以下の全魔物
【聖具使い】:[設置]宝箱『聖具』
【魔具使い】:[設置]宝箱『魔具』
【闘王】:[設置]建物設置『闘技場』
【世界創造士】:[拡張]制限解除
【傲慢】:[召喚]鷲獅子/獅子/鳥/蝙蝠系
【憤怒】:[召喚]一角獣/竜/狼/猿系
【暴食】:[召喚]三頭犬/豚/虎/蝿系
【怠惰】:[召喚]不死鳥/熊/牛/驢馬系
【色欲】:[召喚]夢魔/山羊/蠍/兎系
【強欲】:[召喚]魔子鬼/狐/鼠/烏系
【嫉妬】:[召喚]人魚/蛇/犬/猫系 
【謙譲】:[召喚](体力譲渡)自動習得
【慈愛】:[召喚](回復魔法)自動習得
【節制】:[召喚](消費軽減)自動習得
【希望】:[召喚](精神耐性)自動習得
【純潔】:[召喚](異常耐性)自動習得
【救恤】:[召喚](緊急転移)自動習得
【忍耐】:[召喚](環境耐性)自動習得
 <正義> :[召喚](言語理解)自動習得


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