AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

02-25 過去の王都 その09



「──メルス。そちを王城へ呼ぼうと思って儂はこの場へ赴いたのだ」

「……いや、少し意味が分からない」

 国王様の目的、それが俺をお城へご招待するため? あれか、国からの依頼を達成したご褒美的なパターンなのか?

「えっと、王様。全然意味が分からな──」

「ジークじゃ。迷宮を単独で踏破した新たな英雄にしてSランクの冒険者を祝い、褒賞やら儀式などを行うためだ。先に行っておかねば逃げるじゃろぅ? 改めて問おう、王城に来てはみぬか?」

 まあ、そこら辺は予想通りだったわけで。
 しかし、そうなると衣装がな……祈念者に与えられる初期装備である『祈念者の○○』シリーズを愛用していた俺は、基本的にずっとそのシリーズばかり使っていた。

 だって、耐久度が無限だから。
 何度か【生産神】のテストで衣服系も裁縫してみたが、聖・魔武具や神器のように絶対に壊れないという保証付きの物は一度として作成できていない。

 なので俺の格好は、礼服と呼べるような品ではない。
 冒険者にはその日暮らしの者も居るし、先に伝えて恰好を気にするように注意してもらいたかったのだろう。

「ああ、構わない。いちおう訊いておくが、服装はどうするんだ?」

「そんなもの好きにするがよい。冒険者はそういうもの、貴族はそういう風に考えているからのぅ」

「そうか」

「では、ギルドカードを受け取り次第。王城へ向かうことにしよう。アーチ、準備の方はどうなっておる」

 ギルドカードにはファンタジーによくある謎技術が用いられており、Sランク用の特殊処理はギルド長が何かしなければならないと言っていた。

 下でセーリさんがカード自体の処理を、この部屋でアーチさんが俺の登録情報の変更を済ませているわけだ。

「私の方の作業はもう少しだね。メルス君、君は一度下に行ってくれ。君が行く頃には、カードも完成しているからね」

「はいよ。じゃあ国王、またあとで──」

「ジークじゃ」

「……じゃあな、ジークさん」

 今はそれでいい、と言わんばかりに頷いている様子にため息を吐いて部屋を出る。



 階段を降りて受付に戻り、待っていたセーリさんに案内されて個室へ移動した。

「こちらがSランク用のカードとなります。先ほど説明をされておられましたが、もう一度確認のためにご説明します」

 渡されたそのカードは、いわゆるブラックカードというものに似ている。
 引き下ろし限度額無限、VIPだけに与えられる高級感のある黒いカードだった。

「Sランクは王族御用達の冒険者という意味合いもありまして、カードを提示すれば王城へ入ることも容易くなります」

 ここからセーリさんによる、Sランクについての説明が行われる。
 一度アーチさんに訊いていた情報と照らし合わせつつ、訊けなかったことをついでにこの場で確認しておく。

 そうして集めた情報を纏めれば──

 ・施設へのフリーパス
 ・冒険者ギルド提携店での割引
 ・クレジット機能
 ・冒険者ギルド主催のイベントへの優先参加権(武闘会以外にもあるらしい)
 ・緊急依頼への参加義務(ただ、単独行動は認められるとのこと)
 ・転移門無料
 ・危険地区通行許可

 こんな感じである。
 他にももう少しあったのだが、俺の関心意欲をくすぐったのはこれぐらいだ。
 特に一番最後、これが気になる……そんな場所があること自体知らなかったんだし。

「情報提供ありがとうございます」

「いえ、それが仕事ですので……口調もあのときのもので構いませんよ」

「あっ、バレてたんだったっけ? 最後の一つ訊きたいんだが、この国って王様が城を抜けても大丈夫なのか?」

「ええ。ギルドマスターが警護役をしていますし、来る際は密偵の方が付いています。機密事項ですので、極秘にしてくださいね」

 そんな情報だったら、開示しないでほしいな……しかし密偵か、今も居るのであれば気づけなかったな。
 やっぱり王族の警備ともなれば、だいたい二パターン存在するのか。

「今は居るんですか?」

「いえ、来る際だけですよ。……では、私は国王様をお呼びしましょう。メルスさんはこちらで待機していてください」

「あっ、ありがとうございます」

 一つは目に見える力強さ、いわゆる筋肉で威嚇する警備の仕方だ。
 もう一つは絶対に守る力、どのような手段であろうと対象を守る方法だ。

 これらは現実に照らし合わせた方法なのだが、警備員に逞しい見た目をしたのが多いのは一つ目が理由だ。
 警備員が全員子供だったら、弱そうだと思い襲う計画があれば実行するだろう……たとえ大人より戦闘能力が高かろうと、自身の意思を重要視するのだから、

 真の守護者、と言うべきものが二パターン目の警備役だ。
 見た目も性別も種族も関係ない、安全を確保さえできれば他はどうでもいい……それが二つ目である。


 閑話休題パワー・イズ・オール


「うむ、完成したようじゃのぅ」

「ああ、お蔭様でな」

「そうか。では、ギルドカードを受け取ったことじゃし、そろそろ行こうかのぅ」

 セーリさんによって連れてこられた国王改めジーク様。
 魔道具によって気配を消すと、二人でギルドから退散する。

「ところでジークさん、何か特別な方法で王城まで向かうのか?」

「特別……なんのことじゃ?」

「いや、いくら魔道具があってもさすがに危険じゃないか? いつ王族を狙う輩が現れないでもないし、気にぐらいかけろよ」

「問題なかろう。ほれ、ここに頼れる守護者がおるではないか」

 その視線の先に居るのは……俺なわけで。
 アーチさんももしかしたら、こうして警備役をさせられたのかもしれないな。
 行きはお仕事係がやればいいし、帰りはそれまで守ってたついでに送迎サービスまでやればイイわけなんだから。

「……面倒だな。ジークさん、ジークさんは面白いこと好きだよな?」

「もちろんじゃ。じゃが、どうしてそれを訊く……などといった愚問はせぬ」

「さすが、分かっているな。俺の肩に掴まってくれ、確実に運ぼう」

「うむ、分かった」

 そして俺たちは、王城へ移動する──文字通り、一瞬でだ。


コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品