AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
02-21 過去の王都 その05
こんなことを、やってみたいと思ったことはないだろうか?
──コタツに入ったまま、色んなことができればいいのに、と。
使ったことがある者であれば、誰しも一度はそう思ったことがあると俺は考える。
仄かな温もりが体を包み込み、誰一人として抜けだすことのできない永劫の牢獄と化す魔の楽園……それがコタツだ。
「そして、こんなことを思ったことがあるだろう──コタツが動けばいいのに、と」
俺は今、そんな話題のコタツの中でのんびりとしていた──『堕落の寝具』が形態を変えたものである。
結界を球体に展開し、指向性を持たせることで移動を行う。
それなりに魔力の消費を要されるのだが、そこは(魔力自然回復・極)の力が消費した途端に魔力を回復するので問題は生じない。
「防御は最大の攻撃、とも言えるかな? 苛烈な攻撃で相手に攻撃をさせないって言う考えもあるけど、逆に徹底した防御を維持したまま動けばそれは攻撃にも転ずるわけだ」
破壊できない巨大な質量の塊が、押し迫れば回避以外の選択はないだろう。
つまり当たってしまえばただでは済まないことを、理解しているからこその選択だ。
「蹂躙せ……疲れた。あー、ヌクヌクが気持ちいいよー」
台詞を全部言う気力も奪われた。
そういったコンセプトで生みだされた寝具なのだから、仕方ないとも言えよう。
現れた魔物をすべて轢き殺し、鏖殺し尽くしながら次の階層へ進む。
(三階層になったらー、魔物の種類が増えたなー。登録できるから、ありがたいけど)
やる気も無くなったので、口は動かさず頭の中で考えるだけにしておく。
まあ、種類が増えたのだ──
プルプルと動くスライム
ベトベトと蠢くスライム
カタカタと鳴るスケルトン
三階層は、これら三種類の魔物が新規の種族として追加されたわけだ。
(あー、スライムは二種類あるぞ)
みんなに愛されるプリティボディタイプのスライム、みんな(男性)に愛されるヌルヌルボディタイプのスライム。
どちらがお好みなのかは人それぞれだろうが、とりあえず別の種族としてAFOでは存在しているようだ。
スケルトンは単純に骨だけで構成された、魔核を心臓の辺りに持つ魔物だ……人型なのは、仕様だよな?
使役? 面倒だから、やらないやらない。
サンプルを一匹ずつグーに取り込ませ、残りは全部鏖殺の対象だよ。
「……けど、全部ノー進化の奴らばっかりだよなー。まだまだ序盤ってことかー」
魔子鬼が魔中鬼に進化するように、これまでに現れた魔物もちゃんと進化できる。
だが、そういった進化後の姿でいっさい現れていないのだからそうなのだろう。
ちなみにだが、魔物の強さは階級という数値で計ることができる。
この迷宮に出てきた魔物はまだ1のみ、魔中鬼であれば3ぐらいはあるぞ。
「あっ、階段だー」
そんな思考で時間を潰していると、スーが目的地まで運んでくれたようだ。
ゆっくりと英気も養えたので、俺はコタツから抜けだ……抜け……ぬ………………。
◆ □ ◆ □ ◆
四階層もまた、変わらずに洞窟である。
誘惑に負けた俺は、未だにコタツの中で温もりを感じながら移動を行っていた。
頭だけを中から出し、現れる魔物たちに向けて鑑定の視線を向けていく。
(どうやら、迷宮も本気を出したようだな)
魔子鬼には剣士や魔法使い、魔骨には騎士や僧侶、魔粘体には毒持ちや痺持ちなど多種多様な魔物たちが現れた。
先ほど開示した階級であれば、まあ2ぐらいなんだけどさ。
(それでも数が多いし、擬似的な職業システムが組み込まれている分厄介なんだよ)
魔物が堂々と街に入って、転職をすることはできない……そのためか、適性がある職業の力に類似した能力が振るえるような種族が存在するのだ。
ただ、職業を選べる知性さえあれば例の水晶に触れて職業に就くことも可能である。
だからうちの魔子鬼たちは、全員職業に就いた優秀な魔子鬼となっているぞ。
(──なんて適当なことを考えている間に、ある程度魔物の殲滅が終わった)
結局、魔物の強さが変わってもスーの強度は変わらないわけで……少しばかり落ちている魔核の品質が上がっただけの話だ。
(ただ、せっかくだし……ダイジェストで何があったのかを説明してみよう)
俺も一瞬のことだったので、少しばかり状況が把握できていない。
ログを調べながら、俺なりに分かりやすく纏めてみよう──
===============================
まもののむれが あらわれた!
メルスは ダラクのシングを つかった!
→デミゴブリン○に 9999のダメージ!
→スケルトン◯◯に 9999のダメージ!
→○○◯スライムに 9999のダメージ!
まもののむれを たおした!
===============================
鏖殺と称したのが正しかったようだ。
ログを見れば、すべての魔物が一撃で死んだことを示す文章しか無くて少しだけ引いたのは内緒である。
(さて、このまま行ってみようー)
そろそろ口を動かし、体を動かしてコタツから出なければならない……けど、どうにも誘惑に勝てないんだよなー。
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