AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

01-27 魔法練習



「そうだ、魔法のレベリングをしよう」

 人間、突然の思い付きに身を委ねて動きたくなることもあるだろう。

 AFOを始めてから、その頻度が上がっているのだが……今日も今日とでそういったわけの分からない思考の先で閃いた、馬鹿で愚かでくだらない戯事をやってみる。

「だが、王都でやればバレる。初期地点付近でやるのも、そろそろ心配になってきた」

 そろそろ俺の隠蔽を見抜く、素晴らしくレアなスキルでも発見されたのではないか?

 学校というコミュニケーションの場に参加している俺は、そうした情報に耳を澄ましているので間違いない……たぶん。

 なんでも、『始まりの草原』でかなり異常性の高いプレイヤーがいたという噂があるらしい。魔物相手に蹂躙を行い、ただ嬲るように血を啜る悪魔のような奴が。

「……そんな恐ろしい奴がいる場所に、行くのも嫌だしな~」

 発見例が少ないらしいので、俺と同じように身を隠す大切さに気づいているんだろう。

 そして、俺の予想が正しければ……俺と同等以上の力を持っている!

「ま、あくまで噂通りの奴だったならだけれど。そんな狂人、モブは被害者としてしか会うことはないか」

 よくあるよね、主人公が受ける依頼にはすでに何人もの被害者が……ってパターン。
 だからこそ依頼になるんだし、ある意味その人たちの犠牲によって、物語が動く。

 そして、それを根本から否定しようとするのが俺の偽善の在り方だ。

 被害者なんて、いない方が良い。
 力を持っているのだから、そんなテンプレ破壊してでも止めてみたい。



 はい、そんな適当な決意はさておき、さっさとレベリングを始めようかと。

 幸い、“空間創造ガーデン”は二つ創れる。
 リョクたちが住む場所とは別に、レベリング用の場所を創ってみた。

 始めから空間にテコ入れはせず、魔法を使いながらちょくちょく弄っていく予定だ。

「その場所の名は──『修練場』だ」

 特に意味はない……と言いたかったんだけれども、完成してその名を口に出した途端魔力がごっそり持っていかれる。

 慌ててログを確認してみると、俺の成長とともに大きさが変質するようになったと記されていた。

 魔物に名前を付けると成長する、という設定は分かるんだが……空間にもそういう設定があるんだな。

 ──この瞬間、あとでリョクたちの世界にも名前を付けることが決定した。



 まあ、名前は置いとくとして、そろそろスキルの設定を始める。

「魔物を倒すわけでも、生産活動をするわけでもないし……付け替えれば割引スキルは入れておかなくてもいいのか。それに、繊細な扱いをするために…………こんな感じか」

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メイン(24)
武術
【武芸百般Lv17】
魔法
たくさん
身体
(精密操作Lv88)(魔力支配Lv20)(超回復Lv1)
技能
(言語理解Lv72)(気配探知Lv1)(並列行動Lv47)
(無詠唱Lv1)
特殊
(思われし者Lv40)(経験者の可能性Lv-)
(一途な心Lv-){感情Lv17}
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 ──これが固定するスキルだ。

 武術は空いたから入れただけだが、それ以外はしっかりとした意味が込められている。

 なんだか(言語理解)の空気読めないKY感が半端ないが、しっかりと出番はあるのでスルーしておく方向でお願います。

「──それじゃあ、さっそく始めますか」

  ◆   □   ◆   □   ◆

 自身が恐れられる張本人だとも知らず、メルスは日々成長を遂げていく。

「詠唱無しで並列化……なかなか難しいんだな。安定さが足りない? 精密操作と魔力支配で捻じ伏せれば早いか」

 本来、口頭による詠唱では一つの魔法しか発動することができない。

 その不利な状況をどうにかしようと足掻き続け──かつて人々は、努力を重ねて新たな技術を編み出した。

「気配探知で微細な魔力を読み取って、並列化した魔法をコントロール。魔法の心得で少し緩和できるか?」

 魔法を発動させる際の魔力の流れを、体内ではなく外部で行わせる──魔方陣。
 詠唱の一部、あるいは発動までに行われる動作全てを代行させる──魔道具。

 このような技術を作り上げ、強力なスキルや魔法を使う魔物たちに抗ってきた。

「……少し、頭が痛いな。まあ、でもスキルで補助しなくても耐えられるか。苦痛耐性でも手に入れば、御の字だな」

 メルスの体内で、さまざまな属性の魔力が同時に生成されていく。
 混ざり合い一つの属性に変化することもなく、それぞれが個を主張するように単一のまま練り上げられる。

 複数の属性が同時に存在した場合、反発する属性同士が拒絶反応を起こし術者に苦痛を与える。
 ……だが、それは体内を巡る魔力がぶつかり合うことで起きることであり、頭部だけが痛みに苛まれるわけではない。

「並列行動の限界か。全部同じことならともかく、バラバラだしな。…………あ、本当によくなってきた」

 脳の情報処理能力には、限界が存在する。
 例え能力値という形で、地球とは異なる理が働いていようと。

 (無詠唱)とは資格──魔力の循環を詠唱無しでも行えるという証だ。

 いくらそれを有していようと、スキルは本来魔法一つ分の詠唱を割愛できると認めているだけ──複数の魔法を同時に行使することは含まれていない。

 故に脳の情報処理機関が悲鳴を上げ、頭痛という形で訴えていた。
 体内で興奮物質が生み出され、迸る激痛に麻酔をかけてはいるが、本来ならば数秒で廃人と化しているレベルである。

 しかし、無自覚の内に{感情}に内包された二つのスキル──【希望】と【忍耐】が発動する。

 精神的な負荷を【忍耐】が軽減し始め、それを【希望】が補助していく。
 起きるはずのない干渉により、魔力は乱れることなく体内で練り上げられていった。

「そろそろ発動するか──」

 体内に溜め込まれた膨大な魔力は、術式として編みこまれていく。

 至る所にある魔力の解放点から、今や今やと滲み出ようとしていた。

 メルスがその一言を呟いた次の瞬間、彼の口が目まぐるしい勢いで動きだす。

 異なる内容の早口言葉を、何十もの人々がいっせいに放ったような──理解不能な言葉の羅列が漏れでる。

 それらがすべて一人の口から放たれる。
 その光景からは、ひどく違和感と嫌悪感を感じさせた。

 しかし、この光景を見ていた者はそう思っていられないだろう。
 なぜなら言葉が止むのと同時に、メルスの体から膨大な数の魔法が発動するのだから。

  ◆   □   ◆   □   ◆

「はひー、頭痛も治った~」

 始めの内は甘い物を食べすぎたときぐらい頭が痛かったのだが、一度目を超えてからはだんだんと和らいでいき──最後には息をするような魔法の行使ができていた。

「この部屋に流れる時間は魔法で延ばせたけど……なんだか、某バトル漫画の修業部屋みたいになっている気がする」

 精神と時、そんな名前の部屋だ。
 空間の性質として時間の流れが異なる、そういった設定を付与魔法でかけてみた結果である。

 使う前、使っている間に魔力を捧げる必要ができたが、支払った魔力分だけ空間内に居ることができるぞ。

「しかしまあ、いろいろとやったものだな。新しい魔法も習得したし……やっぱり、隠し属性ってカッコイイ響きだ」

 その名も──無属性!
 スキルリストにいつの間にか表示されていた時には、思わず大興奮で魔法の花火を打ち上げてしまったよ。

 すぐに並列行動で同時に発動を重ね、レベリングさせて進化させたりもしたな。

 他にも(海魔法)という、海に住まう種族だけが扱うことのできる……はずの魔法を習得した。
 ──これで、リョクの居る世界に海を創って海水浴ができる!

「問題はロマン溢れる二つの魔法、両方に面倒臭い条件があったことだなー」

 (精霊魔法)と(竜魔法)、これらは上げるのが面倒臭いったらありゃしない。

 精霊魔法は精霊にお願いして事象を改変する魔法、竜魔法はドラゴン用の魔法だからか魔力消費が半端ないのだ。
 しかも通常威力を出すために、彼らの種族言語を用いる必要がある。

 それ以外の言語の場合は、最低消費MP以上に魔力を使うという嫌がらせ付き。

 精霊魔法も竜魔法も、そういった理由から他に比べてレベリングは控えめとなった。



「今日はもうログアウトだな。明日、あっちの空間に行くことにしよう」

 はてさて、リョクはどれだけあの場所を整えてくれたのかな?

  ◆   □   ◆   □   ◆
 本日の成果
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ステータス
名前:メルス (男)
種族:【天魔】Lv40
職業:【経験者】Lv20・召喚師Lv1・中忍Lv1・放浪者Lv1・錬金師Lv1・調合師Lv1・魔戦士Lv1・義賊Lv1

HP:900
MP:1350
AP:1000

ATK:143<+42>
VIT:148<+44>
AGI:138<+41>
DEX:173<+51>
LUC:143<+42>
BP:0

<ステータス向上補正>

スキルリスト
武術
変化なし
魔法
【統属魔法Lv30】
\下級系統(Lv30:5)×8
火・水・風・土・光・闇・回復・無
\中級系統(Lv50:5)×7
業火・暴風・洪水・土壌・煌・冥・恢復
\派生系統(Lv50:5)×6
炎・雷・氷・岩・時・空間
\複合系統(Lv60:5)×6
爆風・雪・泥・霧・熔・塵
\特殊系統(Lv50:5)×2
付与・呪

─中級・派生系統 NEW
(無魔法Lv30:5)→(純魔法Lv1:5)・(重力魔法Lv1:5)
─上級系統 NEW
(業炎魔法Lv1:5)(嵐気魔法Lv1:5)
(氷河魔法Lv1:5)(大地魔法Lv1:5)
(時空魔法Lv1:5)(生死魔法Lv1:5)
(治癒魔法Lv1:5)
─融合系統 NEW
(爆発魔法Lv1:5)(豪雪魔法Lv1:5)
(拘泥魔法Lv1:5)(幻霧魔法Lv1:5)
(熔解魔法Lv1:5)(粉塵魔法Lv1:5)
─特殊系統
(天魔魔法Lv40)(木魔法Lv40)(精霊魔法Lv30)(竜魔法Lv30)
NEW
(海魔法Lv1:5)(強化魔法Lv1:5)(弱化魔法Lv1:5)

身体
(超回復Lv10) NEW
(魔力支配Lv50)→(力場支配Lv1:5)
(精密操作Lv99)→(精密動作Lv1:5)

技能
(気配探知Lv30)(並列行動Lv67)(無詠唱Lv40)
NEW
(言語理解Lv99)MAX→(全言語理解Lv1:5)

特殊
{感情Lv19}

SP:532
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