(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~
名状しがたい黄衣の王・1 ~ドラゴンメイド喫茶"if"~
ドラゴンメイド喫茶、ボルケイノ。
このお店はどんな異世界にも繋がっていて、どんな異世界からも干渉することの出来る、ちょっと変わった空間にある喫茶店だ――なんてことを言ってもきっと理解してくれないだろうと思うので、簡単に告げよう。
このお店はいろんな世界に扉が繋がっている。そしてその扉はどんなタイミングでも使うことが出来る。だから一見さん大歓迎。むしろ一見が多すぎてちょっと回っていないくらい。
だからと言ってサービスの質が落ちることは無い。そんなことは有り得ない。そんなことをさせないためにも、俺たちは必死に頑張っている……ということになる。
……申し遅れたけど、俺はこのボルケイノのアルバイターだ。名前はケイタ。まあ、それくらい覚えておけばあとはこのお店については関係ないだろう。流れで理解してもらえればいい。そんな深い話は、まあ、きっとないと思うから。
ちなみに今はとても暇な状態だ。
理由? それは聞いちゃいけないものだね。だってこのお店はいつお客さんがやってきてもおかしくないのだけれど、裏を返せばいつまでもやってこないことが考えられる。そんな特殊な環境にある場所なのだから。
カランコロン、とボルケイノの扉の鈴が鳴ったのは、そんなモノローグを語っているタイミングでのことだった。
「いらっしゃいませ」
営業スマイルも、やってきたお客さんの姿を見て少々引き攣ってしまった。
なぜそんな表情になってしまったかというと、答えは簡単。
お客さんの姿が、あまりにも特異だったためだ。ボロボロの黄色い布を身に纏い、青白い仮面を被っている。別にドレスコードなんてこの店には存在しないのでお断りすることは無いのだが、それにしてもちょっと異質だ。まるで人間じゃない、また何か別の生き物のような……。
「……何か、美味しいものを……」
ぽつり、ぽつり、とつぶやいたその言葉はどこか今にも消えてしまいそうなか細いものだった。
「かしこまりました」
客であることには変わりない。そう思って俺は大急ぎで厨房へ向かうのだった。
◇◇◇
「それはきっと黄衣の王ね」
「黄衣の王?」
メリューさんは料理を作りながら、俺にそう言った。
「うん。まだ確定じゃないからはっきりとは言えないけれど……。その身体的特徴からして紛れもなくそうじゃないかな。かなり人間社会に馴染んでいるようだけれど」
「確かに。でもとても疲れているように見えた。今にも倒れそうだった」
「そうかもしれないねえ。彼にはいわくつきの伝説があるとも言われているから。あれ、この場合って彼でいいのかな? それとも彼女? でも性別は明確に決められていなかった記憶があったから別にどうでもよかったかな」
「???」
俺はメリューさんの言っている言葉が理解できなかった。
けれど、きっとメリューさんは小難しい言葉を言っているだけに過ぎないので、取り敢えず無視しておくことにした。
「まあ、取り敢えず水でも出しておいてよ。私はこれを作っておくから。なに、そう時間はかからない。五分も経たないうちに完成するさ。生憎、彼が欲している料理はいろいろと作り置きしていたものが多かったからね」
「……作り置きしておいたものが多い? まあ、いいです。了解しました。じゃあ、水を出して時間を稼ぎます。取り敢えず早めにお願いしますね」
こんなところで倒れてもらっちゃ困る、という思いがあったのかもしれない。
そう思って俺は、カウンターへと戻るのだった。
このお店はどんな異世界にも繋がっていて、どんな異世界からも干渉することの出来る、ちょっと変わった空間にある喫茶店だ――なんてことを言ってもきっと理解してくれないだろうと思うので、簡単に告げよう。
このお店はいろんな世界に扉が繋がっている。そしてその扉はどんなタイミングでも使うことが出来る。だから一見さん大歓迎。むしろ一見が多すぎてちょっと回っていないくらい。
だからと言ってサービスの質が落ちることは無い。そんなことは有り得ない。そんなことをさせないためにも、俺たちは必死に頑張っている……ということになる。
……申し遅れたけど、俺はこのボルケイノのアルバイターだ。名前はケイタ。まあ、それくらい覚えておけばあとはこのお店については関係ないだろう。流れで理解してもらえればいい。そんな深い話は、まあ、きっとないと思うから。
ちなみに今はとても暇な状態だ。
理由? それは聞いちゃいけないものだね。だってこのお店はいつお客さんがやってきてもおかしくないのだけれど、裏を返せばいつまでもやってこないことが考えられる。そんな特殊な環境にある場所なのだから。
カランコロン、とボルケイノの扉の鈴が鳴ったのは、そんなモノローグを語っているタイミングでのことだった。
「いらっしゃいませ」
営業スマイルも、やってきたお客さんの姿を見て少々引き攣ってしまった。
なぜそんな表情になってしまったかというと、答えは簡単。
お客さんの姿が、あまりにも特異だったためだ。ボロボロの黄色い布を身に纏い、青白い仮面を被っている。別にドレスコードなんてこの店には存在しないのでお断りすることは無いのだが、それにしてもちょっと異質だ。まるで人間じゃない、また何か別の生き物のような……。
「……何か、美味しいものを……」
ぽつり、ぽつり、とつぶやいたその言葉はどこか今にも消えてしまいそうなか細いものだった。
「かしこまりました」
客であることには変わりない。そう思って俺は大急ぎで厨房へ向かうのだった。
◇◇◇
「それはきっと黄衣の王ね」
「黄衣の王?」
メリューさんは料理を作りながら、俺にそう言った。
「うん。まだ確定じゃないからはっきりとは言えないけれど……。その身体的特徴からして紛れもなくそうじゃないかな。かなり人間社会に馴染んでいるようだけれど」
「確かに。でもとても疲れているように見えた。今にも倒れそうだった」
「そうかもしれないねえ。彼にはいわくつきの伝説があるとも言われているから。あれ、この場合って彼でいいのかな? それとも彼女? でも性別は明確に決められていなかった記憶があったから別にどうでもよかったかな」
「???」
俺はメリューさんの言っている言葉が理解できなかった。
けれど、きっとメリューさんは小難しい言葉を言っているだけに過ぎないので、取り敢えず無視しておくことにした。
「まあ、取り敢えず水でも出しておいてよ。私はこれを作っておくから。なに、そう時間はかからない。五分も経たないうちに完成するさ。生憎、彼が欲している料理はいろいろと作り置きしていたものが多かったからね」
「……作り置きしておいたものが多い? まあ、いいです。了解しました。じゃあ、水を出して時間を稼ぎます。取り敢えず早めにお願いしますね」
こんなところで倒れてもらっちゃ困る、という思いがあったのかもしれない。
そう思って俺は、カウンターへと戻るのだった。
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