(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~

巫夏希

夏バテ防止の秘訣・中編

 さて、カウンターに到着した俺は改めてメリューさん特性メニューを眺めることにした。
 白を基調にした丼にはご飯の上にキャベツがあり、さらにその上にロースカツが載っている。これだけを見ればただのカツ丼になるが、それでは味気ない。
 カツの上にはとろみがかった餡がかけられていた。何も入っていない餡ではなくて、短冊切りされた野菜が入っている。おそらく彩りのために入っているのだろう。そんなことを思ったが、そんなことよりも鼻腔を擽るいい香りに我慢ができない。

「いただきます」

 両手を合わせて頭を下げる。
 まずは丁寧に一切れずつ切られているカツから頂くことにして、箸でそれを掴んだ。
 そして口の中にカツを放り込んだ。
 サクッ。
 噛んだ瞬間に、衣のサクサクとした音が口の中に広がった。餡をかけているはずにも関わらず、どうしてここまでサクサクを維持しているのか。よく見てみると衣がちょっとゴツゴツしているように見える。これはもしかして……パン粉を使っていない?

「どうした、ケイタ。カツを見たままずっと考え込んで。……もしかして、なぜ衣がサクサクかということについて考えているか?」
「……ご名答ですね。いやはや、それにしてもメリューさんに隠し事は出来ませんね、これじゃ」
「何を言っているんだ。見てからにそうかと思ったぞ。まあ、別に気にしている気持ちは解る。これは揚げたばかりということもあるが、衣にコーンフレークを使っていてね、それでサクサクという感じが出ているのだろうね。……ああ、言っておくとコーンフレークは自家製だ。それに、パフェ系で使っていた量が少し余ってしまったからね、少しこちらに流用したんだよ。普段は衣には使っていない」
「……そうだったんですか?」
「見てみれば解るだろうが、ゴツゴツしているだろう、全体的に。そんな見栄えが悪いものをお客さんに出すことはできない。だから、そうなっているということだ」
「……成程。見栄えの問題だったんですね、それなら納得です」

 俺はそこで話を終了させて、改めてもう一口カツを頬張る。それにしてもサクサクがたまらない。だからといって味が染みていないかといわれるとそうでもなくて、たっぷりかかっている餡の味がしっかりしている。恐らくマキヤソースをベースにしているのだろう。そういえば昔、マキヤソースは私が作ったとかメリューさんが言っていたような気がしたので、恐らくマキヤソースがベースとなっているのは確定だと思う。

「(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「現代ドラマ」の人気作品

コメント

コメントを書く