(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~
ダークエルフの憂鬱・後編
「ふむ。そうか。では、試してみることにしよう」
私はマスターのいうことを試してみることにした。まあ、こういうことは試してみないと解らないからな。百聞は一見に如かず、という言葉もあるくらいだ。
そうしてパンを千切り、それをスープに浸す。パンは吸収性が良く、直ぐにスープの色に染めあがる。まるで服に染料を使い着色しているかのように。
おお、見ただけで美味しそうだ。そう思って私はそのまま口にそのパンを放り込んだ。
結果は、火を見るよりも明らかだった。
口の中に広がるパンとスープの味、それはまさに今まで私が食べてきたものの中で一番の味だった。しみ込んだパンがいいアクセントになっている。まだしみ込んでいない部分のパンの食感も心地よい。
つけては食べ、つけては食べ、を繰り返していたらあっという間にパンが無くなってしまった。まだスープは残っている。くそう、まだパンをつけて食べたいというのに!
「パンのお代わりをご用意しましょうか?」
マスターからの言葉はまさに助け舟だった。
「おお、お代わりができるのか! ……追加料金とか、発生するのだろうか?」
「いえ、無料でお代わりが出来ますよ」
「ならば、お願いしよう」
きっと私の表情はとてつもなく綻んでいるに違いない。部下にも見せたことのない表情になっていると思う。
しかし、美味いものを食べているのだ。ならば、こういう時くらいこんな表情をしたって構わないはずだ。
そう自分に言い聞かせながら、私はパンのお代わりを待つのだった。
◇◇◇
結局お代わりしたパンも平らげたが、まだスープは残っていた。それでもパンをお代わりして食べきれる程胃の容量が無かったので、そのままスープを飲み干した。
「ご馳走様でした」
再度、両手を合わせ一礼。それを見たマスターは笑顔で私の空になったカップにコーヒーを注いでくれた。
「ありがとう。とても美味しかったよ。それにしても……この料理を作ったのは、あの赤髪のメイドか?」
私が訊ねると、マスターはゆっくりと頷いた。
「ええ、そうなりますね。ここの料理はあの人が一人で作っていますから」
一人で作っている――か。だとすれば凄いことだ。これほどの料理を一人で作り上げるとは。私も見習わないといけないな。……見習っていれば、今もこのような生活はしていないのかもしれないが。
立ち上がり、マスターに訊ねる。
「……美味しかったよ。ところで、お金は?」
「銅貨二十五枚になります」
それを聞いた私は目を丸くしてしまった。
銀貨二十五枚と言えば、私がたまに行く居酒屋で使うお金とあまり変わらないくらい。正確に言えば、ちょっと高級なお店くらいだった。お店の雰囲気からして銀貨一枚くらいかかるのではないか、と思ったが……この満足度でこれならば素晴らしいお店だ。
私は麻袋に入っていた銀貨一枚を差し出し、
「それじゃ、これで」
マスターに手渡した。
「かしこまりました」
マスターはそれを受け取ると、店の奥に消えていく。それから少しして銅貨五枚をもってやってくる。こういうお店だから本物の銅貨かどうか怪しかったが(洒落では無いぞ)、見た感じ本物だった。
そして私はドアを開けて、
「御馳走様でした」
その一言を残し――お店を後にするのだった。
◇◇◇
それから。
リーズベルト王国の兵士の間である噂が飛び交うようになった。
それは首都の城下町にあるドラゴンメイドが営む喫茶店が出来たのだということ。自分が望む料理であれば何でも作ることが出来るのだという。
私はその噂をすっかり信じ込んで、城下町を探しまわるのだったが、それはまた別の話。
私はマスターのいうことを試してみることにした。まあ、こういうことは試してみないと解らないからな。百聞は一見に如かず、という言葉もあるくらいだ。
そうしてパンを千切り、それをスープに浸す。パンは吸収性が良く、直ぐにスープの色に染めあがる。まるで服に染料を使い着色しているかのように。
おお、見ただけで美味しそうだ。そう思って私はそのまま口にそのパンを放り込んだ。
結果は、火を見るよりも明らかだった。
口の中に広がるパンとスープの味、それはまさに今まで私が食べてきたものの中で一番の味だった。しみ込んだパンがいいアクセントになっている。まだしみ込んでいない部分のパンの食感も心地よい。
つけては食べ、つけては食べ、を繰り返していたらあっという間にパンが無くなってしまった。まだスープは残っている。くそう、まだパンをつけて食べたいというのに!
「パンのお代わりをご用意しましょうか?」
マスターからの言葉はまさに助け舟だった。
「おお、お代わりができるのか! ……追加料金とか、発生するのだろうか?」
「いえ、無料でお代わりが出来ますよ」
「ならば、お願いしよう」
きっと私の表情はとてつもなく綻んでいるに違いない。部下にも見せたことのない表情になっていると思う。
しかし、美味いものを食べているのだ。ならば、こういう時くらいこんな表情をしたって構わないはずだ。
そう自分に言い聞かせながら、私はパンのお代わりを待つのだった。
◇◇◇
結局お代わりしたパンも平らげたが、まだスープは残っていた。それでもパンをお代わりして食べきれる程胃の容量が無かったので、そのままスープを飲み干した。
「ご馳走様でした」
再度、両手を合わせ一礼。それを見たマスターは笑顔で私の空になったカップにコーヒーを注いでくれた。
「ありがとう。とても美味しかったよ。それにしても……この料理を作ったのは、あの赤髪のメイドか?」
私が訊ねると、マスターはゆっくりと頷いた。
「ええ、そうなりますね。ここの料理はあの人が一人で作っていますから」
一人で作っている――か。だとすれば凄いことだ。これほどの料理を一人で作り上げるとは。私も見習わないといけないな。……見習っていれば、今もこのような生活はしていないのかもしれないが。
立ち上がり、マスターに訊ねる。
「……美味しかったよ。ところで、お金は?」
「銅貨二十五枚になります」
それを聞いた私は目を丸くしてしまった。
銀貨二十五枚と言えば、私がたまに行く居酒屋で使うお金とあまり変わらないくらい。正確に言えば、ちょっと高級なお店くらいだった。お店の雰囲気からして銀貨一枚くらいかかるのではないか、と思ったが……この満足度でこれならば素晴らしいお店だ。
私は麻袋に入っていた銀貨一枚を差し出し、
「それじゃ、これで」
マスターに手渡した。
「かしこまりました」
マスターはそれを受け取ると、店の奥に消えていく。それから少しして銅貨五枚をもってやってくる。こういうお店だから本物の銅貨かどうか怪しかったが(洒落では無いぞ)、見た感じ本物だった。
そして私はドアを開けて、
「御馳走様でした」
その一言を残し――お店を後にするのだった。
◇◇◇
それから。
リーズベルト王国の兵士の間である噂が飛び交うようになった。
それは首都の城下町にあるドラゴンメイドが営む喫茶店が出来たのだということ。自分が望む料理であれば何でも作ることが出来るのだという。
私はその噂をすっかり信じ込んで、城下町を探しまわるのだったが、それはまた別の話。
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